魔法の書と妖精
深夜1時に奇妙な音を聞き目覚めたのは普通の女の子、シウナ・ロマンだ。
「ん…なんの音よ…。もう、7歳の目覚めがこんな変な音なんてついていないわ。」
彼女はこの日7歳の誕生日である。
シウナは7歳の少女らしく少しだけ大人びた事が好きだ。
こういう時、大人はきっとなんの音か見に行くのよね。そう考えたシウナは自室から奇妙な音の元へと向かった。まだ7歳なので暗闇は怖いしお化けなんてもっと嫌い。
「…暗いし…怖いわ…。ママを起こせばよかった。」
奇妙な音のする方へ近づくと色褪せた分厚い羊皮紙で出来た本が落ちていた。シウナは本をつつく。
「…カビ臭いわ。明日ママに漂白剤につけてもらわなくちゃ。」
漂白剤は最近覚えた言葉の一つだ。服を汚して帰るとママは必ず漂白剤を持ってくる。きっとこの本も漂白剤につけたら綺麗な真っ白になるはずよ。
「中身は何かしら。」
シウナは本を開いた。すると明かりを灯していた照明がゆらゆらとついたり消えたりしだした。本の周りを雪のような青光りしたものがふわふわと舞った。そして次第に光は一点に集まり小さな羽の生えた人間のような形になった。
「あらぁ、なんで可愛らしい女の子なのかしらぁ。私はフィロよぉ。この世界で言う妖精と呼ばれる存在よぉ。」
妖精の見た目はいつもマフィンやクッキーを焼いてくれるおばあちゃんみたいだった。
シウナはアニメで見たことあるような状況にどうしたら良いかわからなくなってしまい棒立ちで固まっている。
「貴女はシウナねぇ。さ、私の手を握ってごらんなさいなぁ。なーんにも怖くないわぁ。」
シウナの頭にはこの間学校で習った決まり事を思い出した。知らない人がいたら大声を出して助けを求め、全力で逃げる。
「ママー!助けてー!!!」
シウナはママが眠っている寝室へと走りだした。が、抵抗は虚しく妖精はシウナの手を無理やり触った。