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俺、魔境に入るよ!

 二回目の魔境は自分の周りに水の防壁を張っておいたから気持ち悪くなることは無かったけど、色々な魔力が見えすぎて砂嵐と相まって凄く先が見づらい。ウォル達も中に入って魔法が使えるかどうか試してみたが


「駄目ね、魔力が安定しないわ。体内で操るだけなら何とかなるけど、放出は無理ね」

「俺もだ」

「うむ」

「矢も作れねーな。矢の数には気を付けないと駄目だな」


 みんな魔法を使うことが出来ないみたい。これから先は今までより魔物達が強くなるのにこれは不味い。今俺達に悪さをしているのは、ここら一帯を包んでいる魔力が原因だ。これを何とかすれば、みんなも魔法を使えるようになるはず。

 みんなより魔法が得意な俺は、この環境下でも少しは魔法が使える。俺を包んでいる水の魔法を解除して風の魔法に集中すれば・・・・

 

 俺は風の魔法で俺達の周囲を囲むように防壁を作り砂が俺達に当たらないようにすると、防壁の中を浄化の魔法で満たす。こうすれば防壁の中に有る魔力は正常に戻り魔法が使えるようになるはず・・・・


「これでどう?」

「・・・・使えるわ!」


 レイランに聞いてみるといつも通り魔法が使えるようになったみたいだ。これで、何とかまともに戦えるようになったと思うけど、俺はこの二つの魔法を維持するので手一杯になってしまった。


 風の防壁で中に入ってくる魔力を完全に防ぐことも出来るけど、それだと中に有る魔力が枯渇しちゃうし空気の循環も止まってしまうから完全に防ぐことはしない。それに少しづつでも浄化をしておけば、この魔境は段々と安定していくはずだし浄化した魔力を嫌って、魔物が近寄ってくるのを抑えられるはず。


「良かった~だけどごめんね。俺みんなの援護できる程の余裕はないかも・・・・」

「いや、十分過ぎるほどだ。シャールク、クーアを担いであげろ」

「分かった、よっこいしょっと」

「ごめんね~」

「謝る事無いって、クーアは十分仕事してくれてるって」


 俺は魔法を維持する事だけに集中し、アルベルドを先頭に魔境を進んで行く俺達。結構な頻度で、荒ぶる魔力を含んだ稲妻が俺達の場所に落ちてくるから風の防壁を強く保ち続けないといけないし、荒ぶる魔力のせいで魔法を維持するのが大変!


「アルベルド何を見てるの?」

「これだ」

「・・・・羅針盤?」

「あぁこれを見て方角を確認しているんだ。俺が来た時は砂嵐は常に吹いてる物じゃなかったから、地形を覚えて進めたんだがこれでは地形を確認することも出来ないからな」

「これじゃあ星も読めないものね」

「確かにな~・・・・前方三体!来るぞ!」


 この見えない砂漠を何を目印にして進んでいるのか質問していたら、シャールクが前方から来る何かに気付いたみたい。俺は一時的に風の防壁を広げみんなが戦いやすいようにする。シャールクは俺を肩車すると弓を抜き、他の三人もいつ来ても良いように構えている。そして、砂嵐の中から現れたのは、


「甲虫か!!」

「くそ、相性悪いな!」


 現れたのは鎧の様に鈍く輝く甲羅を全身に纏った人間ぐらいはある虫だった。突撃してきた二体をアルベルドが盾で受け止めると、その隙を狙いウォルが剣を振りかざすが


ガンッ


 金属を大きく響かせ弾かれたウォルは空中で姿勢を整え着地し再度足を狙って切りつけるがこれも弾かれてしまった。シャールクも雷を纏った矢を放つが、効いている様子はない。


「関節を狙え!」

「アルベルド、離れて!」


 アルベルドとウォルが甲虫を抑えている間に、魔法を完成させたレイランが甲虫を包み込めるぐらいの大きさのある灼熱の炎球を放つ。炎はあっという間に甲虫を包み込み倒したと思ったが、炎を纏ったまま動き出し体当たりをしてきたのをアルベルドが盾で押さえた。


「しぶといわね!」

「アルベルド、離れろ!」


 炎で包まれている間にシャールクは、雷の魔力を凝縮した矢を作り出し渾身の力で、虫の額に向けて放ちその矢は甲虫に風穴を開けた。残りのもう一体はウォルが全力の身体強化と剣に魔力を纏わせることによってなんとか両断し倒せたが、たった二体にこんなに時間が掛かるなんて・・・・


「こいつ強かったわね・・・・」

「あぁ、固すぎるな」

「虫系統と弓は相性悪いんだよな~」

「他の奴らが集まってくる前に進むぞ」


 俺は風の防壁の大きさを元に戻し、周囲を警戒しながら進む俺達。砂嵐は完全に俺達の視界を遮ってしまっているので、俺達がしっかりと見える場所は風の防壁の中のみ。突然現れる溝や坂、砂地獄や流砂などを慎重に避けながら進むが、どうしても歩くスピードは落ちてしまう。


 もっと風の防壁を広げてあげた方がみんなやりやすいって事は分かってるんだけど、あと七日はこの状態を維持しないといけないって考えると・・・・魔力はあまり消耗したくないんだよね。いざとなった時は俺の魔力を振り絞ってこの魔境を抜けられるようにしておきたいし・・・・だからこれぐらいで我慢してもらうしかないんだよね。本当にごめんね


「また敵だ。次は空から三体!」


 今度は風の防壁を高く広げ空を見やすくすると、空には所々羽の無い怖い顔をした鳥が俺達を睨んでいた。


「ハゲタカか!」

「飛んでるんじゃねーよ!!」


 シャールクは鳥を視認した瞬間、一本の魔法の矢を空中に向けて放ち、遅れてもう一本風の魔力を込めた矢を放つ。一発目の矢は勢い良く飛んで行ったが、狙いを外したのかハゲタカには当たらず三体のより先に飛んで行ってしまったが、通り過ぎた後一本目の矢が無数の矢に分裂し矢の雨となりハゲタカへと襲い掛かる。


 落ちてくる矢に気付きハゲタカは華麗に避けてしまったが、そこに遅れて放った風の矢がハゲタカに迫る。風の矢はハゲタカたちに迫ると突風を起こし降ってきた矢を巻き込み、矢の嵐となりハゲタカ達に襲い掛かる。いくら飛ぶのが得意だとしても、上下左右から飛んで来る矢と風が吹き荒れる中では避けきれない。


 避けきれず、矢に当たってしまったハゲタカ達は地面に落ちてきたがまだ息がある。それを逃さず、レイランは風の魔法を使いアルベルドとウォルを空へと飛ばし落ちて来たハゲタカを二体切り裂き残りの一体はシャールクの矢で撃ち抜かれてしまった。

 落ちてきたアルベルドとウォルをまたレイランが風の魔法を使い落下の勢いを殺し着地する二人。


「こいつらが襲ってくるなんて珍しいな」

「そうなのか?」

「あぁこいつらは普通弱っている奴か死肉を獲物にするんだ。自分から生き物を襲うなんて殆どないんだがな・・・・」

「凶暴性も増してるみたいね・・・・普段襲い掛からないやつも警戒した方が良いわね」

「あぁ俺が知っている魔物なら何とかなると思うが、油断はするなよ。それとシャールク」

「ん?なんだ?」


 周囲を経過して周りを見渡しているシャールクは突然名前を呼ばれて驚きながらアルベルドに振り替えると


「中々に良い攻撃だった、成長したな」

「・・・・おう」


 まさか褒められるとは思ってなかったシャールクは、口をもごもごしながらなんとか一言返した。そんなシャールクをレイランとウォルは少しにやけながら見ていると


「おい!二人して笑ってるんじゃねぇ!先行くぞ!」

「はいはい」

「おう」


 照れているのを見られるのが恥ずかしいのかシャールクは、先に進みだしそれについていくみんな。


「シャールク」

「なんだよ!」

「俺が先頭だ」

「・・・・うっす」


 原因を作った当の本人は、何も気にすることなく前を進んで行ってしまった。


「あのマイペース野郎・・・・」


 その背中を恨めしそうに見るシャールクを笑いながら、危険な魔境を俺達は進んで行った。

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