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俺、サイドの町に水を作り出すよ!

 急ぎ足で井戸に向かった俺達は、周りに人が居ないことを確認すると一息つき


「危なかったな・・・・まさか、精霊に詳しい人が居るとは」

「だな~精霊って物語や昔話にしか出てこないから今じゃ詳しい人はかなり前の世代だろ?」

「実はそうでもないのよね。精霊は魔法生物と呼ばれ、その魔法は国に大きな影響を与える者として魔法分野じゃ研究されてるのよ。昔の文献にも頻繁に出てくるし、歴史に詳しい人ならある程度は知ってるはずよ」

「ふむ・・・・それでは、詳しい者には見破られるかもしれないな。ラーラも疑っていただろう?」


 ラーラは治療院に居る間静かだな~と思ってたけど、静かだった間に自分なりに整理がついたみたいで今はうわ言を言うことなく目も虚ろではない。正気に戻ったその代わりに俺を直視出来ないみたいで、俺を視界に入れないようにしながら


「えぇ、これでも学院を卒業していますし、歴史が好きですからある程度の知識はあります。流石にこの国の状況で精霊が生まれるのは変だと思いまして・・・・精霊が好む環境でもありませんから」

「ふむ・・・・」

「ですが、トゥトゥさんが仰ってたとおり、精霊に関しては不明な部分多いので正体がバレるようなことは無いと思いますよ。それに、まさか竜種だとは誰も考えないと思います。本当に・・・・貴きお方だとは・・・・」

「えぇ竜種様は貴きお方、想像もしないでしょう。いえ、これは竜種様の威光が足りないとかではなく精霊としての振る舞いが洗練されているというか」

「でもシャリンにはバレたよね」

「それは、私の種族故というか・・・・竜種様は完璧でいらっしゃるので落ち度など全くございません!」


 ラーラは俺の事を直視できないけど、周りに誰も人が居ないとなるとシャリンは自重する事無くキラキラとした目で俺を称えてくる。シャールクはその様子を呆れたように見てるけど、ウォルやアルベルドは何も言うつもりは無いみたい。


「まぁ後々クーアの事は竜種であると公表するつもりだからな、少数であればバレても問題無いだろう」

「そうね、町に居る時間が短ければ大人数に露見することは無いでしょうし、そもそもクーアの身元を隠すのは他国を警戒してだものある程度は大丈夫よ」

「必要最低限クーアの事を知っている人が居れば良いな」

「砂漠には外国人はほぼ居ないからな。居たとしてもリザードマンかエルフだな」

「その二つの種族なら竜種に対して邪な考えをする人たちも居ないでしょう」

「勿論です!我々リザードマンは、全てを竜種の方々に捧げると決めていますから」

「あの・・・・私は知っても良かったのでしょうか?」

「町に居る隊長格には伝えるつもりだったからな。もし俺達が逸れてしまった場合、クーアの事を知っている騎士が居た方が良いだろ」

「なるほど、畏まりました!騎士の名に懸けてクーア様と皆様の安全を確保します」

「うむ、良い心掛けだがまずはクーアを直視できるようになってからだな」

「うぐっ・・・・」


ラーラは格好よく宣言したけれど、アルベルドは少し笑いながら言う。確かに守ってくれるのは嬉しいけど、俺の事しっかり見てくれた方が嬉しいな~


「仕方が無いじゃないですか・・・・・まさか、憧れのそして崇拝する竜種の方と会えるとは思いもしなかったのです!!ただでさえお傍に居るだけでも、感激で腰が抜けそうなのを頑張って耐えているのです!直視など無理に決まっています!」


 ありゃ~なんか俺滅茶苦茶感動されてるんだけど。俺としては、竜種それが何?って感じだからラーラの感情は分からないけど、少しずつ慣れてくれると嬉しいな~


「そういえば、ラーラは武装神官になろうとしていたと聞いた覚えが・・・・」

「えぇ、竜種の方々を少しでも感じられるようにと目指していましたけど団長に誘われて止めたのです」

「アルベルドみたいに団長に憧れて騎士団に入ったのですか?」

「いえ、団長に騎士団に入れば城内にある竜種の方々の痕跡を見て周れるぞと言われましたので」

「あ~・・・・王城は実際竜種の方々が過ごされていた場所だからな・・・・」


 ラーラはキラキラした顔でシャールクの質問に答えた。その答えにシャールクは納得した顔をして頷き、ウォルは


「そういった目的で騎士団を入る方も多いと聞くな」

「勿論騎士としての誇りをもって民を守りますが、竜種の方々のお傍に少しでも居たいのです」

「その、気持ち分かります!私の一族もここはヴィラス様とエルディラン様の力を感じられるとこの大地に定住しましたから」


 ラーラの言葉にシャリンは同意しラーラも分かりますと二人で語り始めてしまった。


「ここは、ヴィラス様の力とエルディラン様の力二つの力が混ざり合った事によって水と砂が共存した町ですものね」

「えぇ今では見る影もありませんが、歴史が語っています。ヴィラス様による穏やかな風に、エルディラン様によるオアシス、素晴らしい姿だったと聞いています」

「はぁ~砂漠に安らぎをもたらすとは、なんと素晴らしきお力」


 へ~ここにはオアシスもあったんだ。井戸だけを元に戻して次の町に行くつもりだったけど俺も見てみたいからオアシスも元に戻したいな。

 そう思ってウォル達を見ると、分かってくれたのか頷くと


「シャリン殿、オアシスと言うのは何処にあったのですか?」

「オアシスは町の北側に跡地が残っていますが、それかどうかしたのでしょうか?」

「いや、特には」


 ウォルはオアシスを戻すことを内緒にするみたい。驚かせた方が面白いもんね!


「井戸と言うはこの先に?」

「あぁ歩いて数分で着くと思いますが」

「二人も落ち着いたようですし、そろそろ井戸の復活に取り掛かりたいのだが」

「あっすみません。すぐご案内します」


 ラーラとシャリンは、自分達が盛り上がってしまった事に気付き真面目な顔に切り替わると俺達を井戸まで案内してくれた。井戸は住宅地の中心に設置してあり、井戸自体は整備しておらず蓋も被せてあった。


「此処です」

「うむ、井戸だな」

「場所的にも悪くない場所ね」

「井戸はこの一つだけなのか?」

「はい、町の中だとここと昔あったオアシスから水を町中に届けていました。あとは町の外に小さなオアシスがありますので、今はそこから水を補給しています」

「なるほど、よし早速取り掛かろう」

「は~い」


 ウォルがそう言うとアルベルドは上に乗っても落ちないように頑丈に固定してある蓋を剣を使い取り外し、シャールクは俺達の事を見て集まってきてしまった人達を井戸の周りの整理をしている。ここには、大きな道が通ってるし住宅の近くだから人が集まってきちゃうんだよね。

 レイランはラーラとシャリンに俺達が魔法を使っている時に人が俺達に近付かないようにして欲しいと伝えた。丁度巡回で遭遇した騎士達にも手伝ってもらい集まってきた人を整理すると、俺は井戸まで飛んでいきその後をウォルが続いた。そうすると見ていた住民達がざわついたけど気にせず


「クーア大丈夫か?」

「うん!井戸が少し壊れてるから、直した方が良いけど水を作り出すのは問題ないよ」

「そうか、植物はどうだ?」

「それは潜ってみないと分からな~い」


 ウォルと話していると、準備が終わったレイランとシャールクが俺達の元に来て、アルベルドはあの重そうな蓋を邪魔にならない場所に置いて来てもらった。合流した俺達は井戸を囲むように立つと俺は井戸の上に浮く。


「よ~し、やろっか!」

「うむ」

「頼む」

「よし!」

「えぇ」


 俺は水を作り出しその中に入ると、四人は俺に手を向け魔力を送ってくれる。よし、じゃあ早速大地の記憶を読み取ろう!目を瞑り大地に意識を集中して、記憶を読み取っていくと、確かにここはエルディランとヴィラスの力が調和した地だったみたいだね。

 昔は穏やかな風が常に吹き砂漠の暑さを和らげ、豊かなオアシスが町へ水を届けていた。緑も溢れ魔獣達の襲撃も二人の守護竜による魔力の影響によって少なかったみたい。そして植物が育ちやすく、火の属性による耐性によって暑さに強く病気にも強い作物が実っていた。ここで起きていた豊かさはヴィラスとエルディランによってこの国全体に影響していた物が調和し合った結果みたい。

 今の俺にはまだ国全体に影響を及ぼすほどの風や大地の力は無い、だから、この時代の物を完全に再現することは出来ないけど、少しぐらいは近づけることが出来る。


よ~しっ頑張っちゃうぞ!!

読んで頂きありがとうございます!

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