俺、お医者さんに会うよ!
治療院に行く道中、ラーラはどこか上の空で歩き出しシャリンに至ってはずっと俺の事を見ながら歩いているから町民達に不思議がられている。俺はシャールクに抱かれて、町を歩いているけど面白がってシャールクが俺を上にやったり肩にやったりと動かすたびにシャリンの顔が俺を追っている。
「シャールク、遊ぶな」
「あはは、面白~い」
「クーアも笑わない」
「「は~い」」
シャリンで遊んでたらウォルに怒られちゃった。シャリンは、ウォル達と話すときはしっかりとして顔もキリッと真剣な顔をしているのに、何も無い時はずっと俺の事を見てキラキラしている。この表情を見たらみんな町長に何かあったんじゃないかと気になるよね。
「シャリン殿クーアの事は内密に」
「勿論です。貴きお方が居ると知られては邪な考えを持つ者が集まってくるかもしれませんし、そんな危険決して犯しません」
「なら、態度をどうにかしてくれると助かる」
「それは・・・・すまない」
注意されたシャリンは、いつも通り振舞おうと真剣な顔をしながら道を歩いて行くが時折やっぱり俺の事が気になるのかちらちらと俺を見てくる。ラーラはまだ上の空で時折「そんな・・・・噓でしょ・・・・」と呟いているし、色々と注目される要素が盛りだくさんだけど、さっきよりはマシだと思ったのかウォルは何も言わずシャリンの後を付いていく。
シャールクやレイランは二人の様子を見て、苦笑いをしているけどこんな様子になるのも納得できるみたい。アルベルドとウォルは何も反応しないけど、よく耐えれるよね~
「ここが治療院です」
「中々大きいな」
「ここは砂漠の町ですからね、魔獣や魔物の襲撃も多く怪我人も多いですから、治療院は大きくないと間に合いません。戦士達は奥で入院しているはずです」
俺達が来た治療院は、サイドにある家のどれとも違う色をしていた。サイドの町は土や砂を使った煉瓦で作られている家が基本だが、治療院は純白とも言えるほど綺麗な白色の石を使って建てられていて、太陽の光で輝いている。この建物だけ、異色だけど治療院だって事が分かりやすくて良いのかも?
シャリンは、扉を開けると中は受付になっている様で、休める椅子があり正面には白い服を着ていて頭に角が生えている女の人が居た。その人はなにやら書類を見ていたけれど俺達に気付いた。俺達はその女の人の元まで行くと、
「あら、町長さんこんにちは。今日はお見舞いかい?」
「トゥトゥおはよう、お見舞いも兼ねてるが今日は戦士達を治療しに来たんだ」
「治療?怪我は既に治ってるから後は汚染された魔力が抜けるのを待つだけなんだけど・・・・」
「あぁ、その汚染された魔力を・・・・」
「この水の精霊であるクーアが、治してくれるという事になったんだ」
白い服を着て、くるくるの薄橙色の髪の毛をしているこの女の人はトゥトゥと言うらしい。シャリンはここに来た事情を話そうとして、俺の事を見るが名前を言えないみたい。それをウォルが察して、説明してくれた。俺はシャールクに抱えられながら、手を上げ
「クーアだよ!よろしくねっ」
「精霊だって!?この国にはもう居ないはずなのに・・・・あぁすまない、自己紹介が遅れたね。私はトゥトゥ、見ての通りヤギの獣人でここで医師をやっている。精霊様と会えて光栄だよ。精霊が汚染された魔力をどうにか出来るとは聞いたことが無いが・・・・精霊に関しての文献は少なく研究も進んでいないからな新たなる発見かもしれないな」
トゥトゥは口元に手を当てると、鋭い目をしながら俺のことをじっくり観察していく。精霊が汚染された魔力をどうにか出来る訳じゃなくて、俺だから出来るんだけどそれは言わない方が良いよね。シャリンは、間近で俺を見ているトゥトゥに少しハラハラしてるみたいで、俺から離そうとしようとしたが下手に何かすると怪しまれる可能性があるので、何とか抑えている。
「すまない、トゥトゥは元々魔法生物に関する研究者なんだ。トゥトゥそれぐらいにしておくように」
「はっすまない、昔の癖でね。戦士達を治療してくれるというが、私も見学しても良いかい?」
「良いよ~」
「ありがとう。それで、そちらの方々は・・・・」
冷静を保ちながらシャリンはトゥトゥを注意する。トゥトゥは言われた通り俺の観察を止めてくれたけど、俺が治療をするところを見たいらしい。今まで治療をしてきたのはトゥトゥなんだから仲間外れは良くないよね~
「アルベルドだ」
「シャールクだぜ!」
「ウォルだ」
「レイランよ」
「初めまして、それでは案内しよう」
「怪我しちゃった人は何人いるの~?」
「25人だ、全員外傷は殆ど治っているが汚染された魔力に体が抵抗しているからか、ずっと苦しんでいる。私も色々と痛みを緩和しようとしたんだが、汚染された魔力はどうしようも・・・・」
「仕方ないよ~汚染された魔力は生き物の天敵だから」
トゥトゥは自分の力不足を嘆いてるが、汚染された魔力に対しては生き物はどうしようもない。汚染された魔力は光属性を持っていて大量の魔力を持つ者か浄化の属性を持っている者にしか対処が出来ない。だから、何もできなくて当たり前なのだ。トゥトゥはたとえそれでも何とか助けようと頑張ってたんだし、報われないとね。
「クーア、大人数だが大丈夫か?」
「任せて~何千人だろうと治して見せるから!」
「流石頼もしいなクーアは、だけど何千人も怪我する前に俺達が何とかするさ」
「クーア殿は魔力が豊富なのだな。文献でも精霊は魔力が多く自然の権化とも言われることが有る。だが、確か精霊は自らの元になった自然から遠くは離れられないはずだが・・・・」
「!!」
精霊ってそんな特質が有ったんだ知らなかったよ。リオは自由自在に移動するから何処にでも行けると思ってたけど、あれって俺が生み出したから俺の元に移動できるし、俺が作り出した水があるから町を移動できるんだね。しかも、リオは俺の水を自由に操れるから、遠くの場所まで水を引くことが出来る・・・・あれ?もしかしてリオって滅茶苦茶凄い?
リオの凄さを実感した俺は、これは良い言い訳になると思い
「俺は水の精霊なんだよ~この町に来る間に地面の下に水を引いたから、何処にでも行けるの!」
「なるほど、そういう事か・・・・」
「「「「・・・・」」」」
みんなはどうやって誤魔化そうと悩んでいたみたいだけど、俺がごまかしたのでホッとしたみたい。精霊に詳しい人って少ないかもしれないけど、もしまた会って疑われた時誤魔化せるように、リオを呼んで色々聞いておいた方が良いかも?
「ここが、患者たちが休んでいる部屋だ。一部屋に十人あと三部屋ある」
「ここ大きいんだね~トゥトゥ一人で管理してるの?」
「いや、他に七人いるから全員で八人でここを管理しているんだよ。他の七人は外に診察しに行ってる。怪我人が多い時はお手伝いさんが来てくれるから、大変じゃないんだよ」
「そうなんだ~」
「それじゃ入るよ。トゥトゥだ、入るよ」
トゥトゥはノックしてから扉を開けると、その中には左右五人ずつベットの上で横になっている人達が居て俺達を見ると
「おう、トゥトゥ先生どうしたんだ?まだ、健診の時間じゃないと思うったんだが・・・・」
「今日は皆さんにお客様が来てるんだよ、そして立派なお医者さんも」
「町長じゃないか、お見舞いどうも!」
「あんた以上の医者が居るのか?」
「おぉ幼子じゃないか!こんにちは」
「本当だ!可愛いなっなんて言うんだ?」
「綺麗な青い髪だな、何の種族だろう」
「坊ちゃん飴要るか?」
「お前たちうるせぇぞ、子供が怖がるだろ!」
「お前が一番うるせぇよ!」
俺を見た瞬間寝ていた戦士さんたちは騒ぎ出し、みんな笑顔になって俺を見ている。気の良さそうな人達だらけだし、飴は貰ってこよ~っと。俺はシャールクに降ろしてもらい戦士の人から飴を貰う。
「お~たくさん食って大きくなれよ~」
「うん!」
「ほら、みんな静かにしな。この子はクーア、みんなを治してくれるそうだ」
「クーアか良い名前だな!」
「クーア、この町じゃ見ねぇ顔だけど他の町から来たのか?凄いなぁ!」
「おうおう、確かに治してもらったよ、この子のおかげで元気百倍だ!」
「ありがとな、俺達を治してくれて」
「おう、すっかり治っちまったよ!」
??まだ何もしてないのに何でお礼を言われてるんだろう?もしかしてこの人達には、竜種と会うだけで回復する特殊な力があるとか?俺は分からず首を傾げていると、シャールクが
「クーア、この人達は元気が貰えたって言ってるんだぜ」
「俺何もしてないよ?」
「例えば、クーアが好きな人に会ったら元気が出るだろ?」
「うん」
「それと同じことだ」
俺はウォルやシャールク、レイランにアルベルドと一緒に居ると元気になる、それと同じことが戦士さんたちにも起こったんだね。
「おう、クーアは俺達をしっかり治してくれたんだよ」
「偉いぞ~すぐにでも俺達は戦えるようになったぜ!」
「なに馬鹿なこと言ってるんだか・・・・日中いつも体が痺れ、痛みを感じるから歩くのもままならないって言うのに」
「トゥトゥ先生!子供の前だぞ」
「そうだそうだ!」
「はぁ~・・・・」
トゥトゥは頭が痛いと、手を額に付けると俺を見て
「こんな馬鹿どもだけど、お願いしても良いかい?」
「勿論っ任せておいて!」
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