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俺、町長に挨拶しに行くよ!

「そんな、この国に精霊がまだ居るなんて・・・・」

「昔から居る訳じゃないよ~最近生まれたんだ!」

「最近ですか・・・・?」

「それについては後で話そう、今は町の状況について詳しく知りたい」

「あっすみません」


 ラーラは俺が精霊だという事に驚いたみたいだけど、その後一瞬で冷静になって俺が何で居るのかを疑い始めた。リオ曰く精霊は清浄な魔力が沢山ある場所にしか生まれないみたいだから、今この国の状況で精霊が生まれる事が引っかかるみたいだね。まぁ実際俺は精霊じゃなくて龍なんだけど、それは内緒。疑うラーラの気を逸らさせようとウォルは話題を変えた。


「それで、サイドの町に水源を作り出したいんだが適した場所はあるか?」

「そうですね・・・・かなり古いですが昔使っていた井戸があるはずです。町長曰く遥か昔に枯れてしまってそれ以来手入れをしていないみたいですが、そこが一番良いと思います。詳しい場所は町長に聞かないといけませんが」

「なるほど、ラーラ殿はここに着いてからどれくらい経っている?」

「まだ一ヶ月です」

「それなら、少しは町の全体が掴めているだろう?この町で水と食料以外で問題になっていることはあるか?」

「水と食料以外ですか・・・・」


 水と食料は俺達が持ってきているから、それ以外の問題も一緒に解決してあげるよ!俺は万能の存在では無いけど、出来る事は多い。病気が流行ってしまったなら、治してあげるし建物が壊れてしまったなら時間を戻して壊れる前に戻してあげられる。だから、どんな問題でも言ってね。


「私達も全てを把握している訳では無いので、これが全てという訳では無いのですが今この町は戦士不足ですね。襲い掛かってくる魔獣達に対応しきれてません」

「そういえば、ポルからこの町の戦士が負傷したと聞いたな」


 アルベルドは昨日話したことを思い出しながら言う。ラーラはその言葉に頷き


「そうなんです、私達が到着する前に起こった襲撃で多くの戦士達が負傷してしまって、今は騎士団が防衛を担っているのですがそうすると町での活動が制限されてしまって・・・・」

「復興支援まで手が回って無いのか」

「はい、私達の実力不足です」

「それなら、戦士達を治療すれば問題は解決するか?」


 アルベルドは俺を見て言う。負傷しちゃった戦士達がどれくらい酷いのか分からないけど、生きてるなら何とかなるよ~


「実は私達で治療はしたのですが、汚染された魔力の影響を少し受けてしまい回復に時間が掛かってしまうみたいです。それまで、私達が防衛の役目を担いますが、回復したとしてもそもそも戦士の量が少ないのです。いずれ私達は皇都に戻ってしまいますし、私たち抜きでも町を守れるようにしたいのですが・・・・」

「ふむ・・・・サイドは優秀な戦士が多い町と言うよりかは色々な町への中継地点という町だからな。この国はどうしても魔獣の襲撃が多い故に、戦士たちの重要性が高いが疲労してしまった町では、戦士を育てる余裕もないのだろう。だが戦士は必ず必要な存在だ、魔獣達はこっちの都合なんぞ考えてくれないからな」

「えぇ解決しないといけない問題なので、騎士団による指導を行おうかと思っているのですが」

「良い策だとは思うが、それはすぐ解決出来る問題では無いな。まずはサイド全体を安定させ、ゆっくりと戦士たちの育成に関して町長と話し合うべきだ」

「そうですよね・・・・私達も砂漠に関して詳しい訳じゃありません。砂漠の民には砂漠の民なりの戦い方がありますし」 

「取りあえずは目先の問題を解決する事にしよう。まずは、戦士たちの治療からだ」

「分かりました、戦士たちは治療院にて休養しています。そこまでの道中に町長の家がありますのでまずはそこへご案内します」


 この町は水不足と食料不足以外だと戦士たちの数が不足しているみたい。人間や色んな生き物は最初から強い訳じゃなくて時間を掛けて成長し強くなっていく、だからどうしてもすぐに戦士を増やすことは出来ないんだろうね。俺がみんなの体を強化してあげても良いけど、成長する機会を俺が奪っちゃうのは良くないよね。


 俺達はラーラの案内で宿を出て、通りに出るとそこには色々な種族な人達が忙しそうに歩いていた。背中に大きなコブを持った人や、兎の姿で二足歩行している人、蛇の鱗を持っている人など皇都では見なかった種族の人達ばかりだ。


「おお~知らない人だらけ!」

「それゃ当たり前だろ・・・・あぁそういことか」


 シャールクは何を言ってるんだと俺の事を見たが、俺がキラキラした目で色んな人達を見ているのに気づき納得したみたい。アルベルドは、行き交う多くの種族を見ながら


「サイドは色々な砂漠の町から人が集まってくるからな、種族も様々だ。あの特徴なコブを持っている人達は、砂漠の行商をしているラクダの獣人達だな。水を大量に蓄えることが出来る胃とコブにある脂肪を使って、長い間飲まず食わずでも耐えられるんだ。そして、兎の姿をしているのは兎の獣人だ」

「そうなの?でもシャールクと全然違うよ?」

「一部の獣人は人の姿ではなく獣の姿のまま二足歩行が出来るように進化しているんだ」

「人の姿をとるか獣の姿で二足歩行かは親次第なんだ。ちなみにどの獣人にも、獣の姿のまま二足歩行か人の姿かの二種類あるぜ」

「そうなんだ~」

「鱗を持つ人々は基本的には蛇の獣人だな・・・・あ」


 次々と始めて見る種族の事を教えてくれていたアルベルドだが、蛇の獣人を紹介してくれた途端立ち止まり顔に手を当てて固まってしまった。いきなり止まったアルベルドにみんな不思議そうに


「副団長?」

「どうしたの?」

「何か気になることがあったか?」

「いや、気になる事ではなく思い出したというか・・・・ラーラ」

「はい」

「この町の町長は未だにボクスの一族か?」

「はい、5年前に町長が変わったらしいですけど、今の町長は前町長の息子さんですね」

「はぁ・・・・」


 それを聞いてアルベルドは深くため息をつく。事情が分からない俺達は頭を傾げるだけ。どうやら町長であるボクスの一族と言うのが問題らしいけど・・・・


「アルベルド?」

「ボクスの一族は、リザードマンだ」

「あっ・・・・」

「なるほどね」

「そういうことか」

「?」


 ウォルが詳しく聞こうと名を呼ぶと、顔に当てていた手を外し真剣な表情でアルベルドは言った。その言葉に三人は、アルベルドの様子が変な事に納得したようで、どうしようかと頭を捻っている。ラーラはそれが何の問題なのか分からず、不思議そうに頭を傾げている。


「少し話がしたい、ラーラすまないが外してくれるか?」

「えぇ分かりました」


 アルベルドが言うとラーラは俺達から素直に離れてくれた。俺は、防音の魔法を使って俺達を囲むと


「リザードマンは不味いな・・・・」

「えぇクーアの正体に気付いてしまう可能性があるわね」

「あぁ、あの一族は竜種に関しての感知能力が高い。後々発表はする予定だが、今気付かれるのは少し良くないな」

「クーア、竜種の気配って完全に消せる?」

「ん~ん~~~~~微妙。気配を薄くすることは出来ると思うよ」


 竜種の気配って言われるのは恐らく俺達が持っている星由来の魔力の事だと思う。これを隠すためには、魔力全てを変えないといけないし誤魔化すために魔法を使ったらどうしても魔力が漏れてしまう。俺達の体は殆ど魔力で作られてるし魔力の気配を隠すとなると~・・・・どうやるんだろう?

 そういえば、エルディランはどうやって魔力を隠してるんだろう?いくら弱ってても魔力はあるはずだし、もしかして眠りに就いてることにカラクリがあるのかな?

 まぁ今の俺には考えても分からない事だし、考えても仕方が無いか


「そうか・・・・もしバレたなら正直に話すとするか」

「あぁリザードマンであればクーアの願いに反することはしないだろう。申し訳ないがクーアには話さないよう町長にお願いしてもらうかもしれないな」

「は~い」

「ラーラにも同行して貰おう。彼女は町で防衛を担っているし、信頼できる部下だ。それに、もうクーアが精霊かどうかは怪しんでいる様だしな」


 話し合いが終わり俺は防音の魔法を解いて、ラーラを呼び俺達は町長の家へ向かった。


「ここが町長の家です」

「ふむ、それでは行くか」


 俺達は町長の家の扉をノックすると、使用人だと思われる人が扉を開けラーラを見ると


「これは、ラーラ様どうかなされましたか?」

「実は町長に用がありまして、今いらっしゃるかしら?」

「えぇ執務室で仕事をなされています。ご案内しますね」


 俺達は使用人さんの後に続いて町長の執務室に着くと扉をノックし


「町長、ラーラ様とそのお客人がいらっしゃいました」

「入ってくれ」


 使用人さんが扉を開けてくれ、中には蜥蜴のような見た目をした人が机でなにやら書類を書いていた。使用人さんは部屋から出ていくと、仕事をしていた町長は顔を上げ


「すまない、仕事が立て込んでいてね。それでラーラ殿一体どのような用件かな?・・・・・・っ!?」


 町長は顔を上げながら話し、ラーラを見た後俺を見るといきなり立ち上がり机を飛び越して俺達の前に来ると跪き手を地面について頭が地面に付くほど下げてしまった。


「申し訳ありません!神を目の前にして、不敬な態度をとってしまうとは、この命を以てしても償え無い程の罪。どんな罰でも承ります!!!!」

「えっえっ町長!?」

「あ~駄目だったわね」

「あ~まぁこうなるよな」

「はぁ・・・・」

「実際この対応が正しいからな」


 ありゃ~水の魔力で全身を覆ってみたけど隠しきれなかったみたい。頭を絶対にあげようとしない町長に驚くラーラに、これからどうしようかと苦い顔をしているウォル。正体バレちゃったみたいだし、もう隠さなくて良いよね。

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