俺、また砂漠を歩くよ!
俺達は祝いの宴に参加してほしいとボロスの町民達に懇願されたけど、俺達を待っている町が多くあるからとその誘い断りまた砂漠を歩き、次の目的地であるサイドへと向かっていた。今日は少し風が吹いて、時折砂が舞い襲い掛かってくるので今日はみんなしっかりと口元をストールで覆っている。
「何度見てもその格好暑そうだよね~」
「まぁクーアの力が無かったら、暑くてバテたと思うぜ」
「だけど、この格好をしないと色々と良くないのよね~」
「砂漠ではこれが基本だからな」
今砂漠を歩いているみんなの格好は体全身を頭から足まで繋がった服で覆い、一切肌の露出が無いのだ。頭もターバンをグルグルと巻き目元は皇都で買ったゴーグルを付けている。そんなに着込んで暑くないのかなと思って聞いてみたけど、直接日光を浴びる事が無いからマシなんだそう。
「うむ、直接陽射しを長時間浴びると火傷になるし服の繋ぎ目が多いと砂が中に入ってしまうからこれが基本だな。短時間外に出る程度であれば、ここまでの格好は要らないが数日間歩くとなると、この服装になる」
「クーアのおかげで、暑さは何となってるけど日差しと砂はどうしようもないからな~」
「クーアさまさまね」
「クーアは、大丈夫なんだよな?」
「うん、俺は火傷したりとかはしないから大丈夫だよ~」
今の俺は白い半袖のシャツと白い半ズボンに蔓で出来たサンダルを履いている。そして首元にはサスヴァンで貰ったストールを巻いて砂を歩くのは大変だから常に浮いている。誰も居ないし会う事も無いから、龍の姿に戻っても良いんだけどなんとなく人間の姿のままでいる。
「便利ね~」
「でも火の属性とは相性が良くないから、暑さはどうしても感じちゃうんだよね~この砂漠も大地の属性より火と風の属性の方が強いから、水を通すのもちょっとだけ大変だし」
皇都からボロスの間は、火と風の魔力を感じてはいたけどそこまで強くなかったから水を通すことも大地を復活させることも簡単だったけど、水の属性と相性が悪い火の属性が強くなるとちょっと大変になるかもね。誓いの地に近付いていくほど、段々火の属性も強くなっていってるし、もっと頑張らないと。
「そうね、水路を引くのも少し大変になってきたわ。今は歩きながらでも十分出来るけど、これ以上強くなると・・・・」
「その時は二人で水路を引けばいいんじゃね?」
「そうね、そうしましょう」
「恐らくだが、サイドまでは大丈夫だと思うぞ」
「それはどうしてだ?」
「サイドはまでは、俺達が歩いて来た砂漠と殆ど変わらないからだ」
「サイドからは砂漠じゃないの?」
「いや、サイドから先は、砂漠は砂漠なんだが環境がまるっきり変わるんだ。風が強くなり、時折岩をも飛ばす風が吹き夜になると凍えるほど気温が低くなる。出てくる魔獣や魔物達も強くなるし、日中の気温も上がる。サイドから先はもはや魔境と言えるほどなんだ。あそこまで環境が激しいのは何かしらの原因があるはずだから、その原因というのが大地の属性が何かしらの属性に偏ってしまったんだと思う」
「なるほどな・・・・俺もサイドまでしか行ったと事が無いから噂でしか聞いたことなかったが本当にそんな環境になってるのか」
「あぁ砂漠に住む者達でも避けるほどだ」
「セレル周辺もそんな感じなのか?白風の一族って有名だけど、皇都に出てくる人は少ないしセレルの話も殆ど聞かないから分からないんだよな」
シャールクがアルベルドを見て言う。確かにシャールクの言った通り俺達が皇都に居た時間は短いけど白風の一族の特徴を持った人は団長さん以外見たことが無かった。白い髪に金色に近い黄色の目を持ち肌は白い、そんな人が居ればすぐ気づいたはずだ。
「セレル周辺は・・・・砂漠と溶岩地帯になっている」
「はぁ!?」
シャールクは驚きながらアルベルドを見る。ウォルとレイランも知らなかったみたいで、驚いている。
「そんなこと知らなかったわ」
「そんな場所になっていたのか・・・・ヴィレン山脈の影響か?」
「うむ、ヴィレン山脈は今でも活動している火山だ。その溶岩が、地面の下を通り時折噴き出すこともある。それ故に我が町セレルは多くの溶岩に囲まれた町となっているんだ。更に地面の下の溶岩によって年中暑く町中も暑いぞ。大人達からは年々火山の活動は活発になっていると聞いてるな」
「うへ~」
そんな場所絶対火の魔力が強いじゃん。うぅ~相性悪すぎ~セレルの町に着いたらずっと水球を作って、その中に居ようかな。でも、そこまで火の属性が強いって事は火の属性の竜が好む場所だって事だ。アルベルドが生まれた町には行きたいし、ヴィレン山脈にも用がある。竜種の体は属性の塊みたいなものだから、ヴィラスの遺骸から漏れ出した魔力が大地に行き渡り溶岩を活発にしてるのかもしれない。
「こう言ったら失礼だが、どうして白風の一族はその町から出る者が少ないんだ?そこまで過酷な場所なら若い者達は町から出ようと思うと思うんだが」
「理由は簡単だセレルには近場に町が無いんだ。ネリアに行くには十四日も過酷な砂漠を抜けなければならないから、若い者達にはそんな準備も実力も無いからセレルから出ることは出来ないんだ」
「なるほど」
「でも、アルベルドって十三歳で皇都に来たって聞いたけど。どうやったんだ?」
「町周辺に出没する魔獣を自分で狩り、金にして準備をしていたんだ。砂漠の歩き方や方角も、大人達から教えてもらい一人でネリアを出たんだ」
「マジかよ」
「十歳の頃から、大人と混じって狩りをしていたが三年も時間が掛かってしまったよ」
「いやいや、普通子供にそんな事出来ないからな?流石は最年少で副団長になっただけあるな・・・・」
「何かをするには力が必要だからな」
アルベルドはそんな小さな頃から一人で旅してたんだね。道理で、砂漠の事に詳しいしネリアまでの道を迷わずに歩くことが出来るんだね。
「それに、白風の一族はヴィラス様の血を引いているから暑さに関しては耐性を持っているんだ。だから、町で過ごす分には問題無いし、そもそもヴィラス様を身近に感じれる場所から移動するという発想が出てこないんだ」
「そうなのか」
「外に出てこない一族と言えば、ネリアに住んでいる岩の民も殆ど見かけないよな」
「あぁあの部族は殆ど町の中で過ごしているからな」
「岩の民?」
どうやらネリアという町に住んでいる人達は岩の民って言うらしい。
「ネリアという町は大きな岩の中に作られている町なんだ、だから岩の民と呼ぶ」
「ほへ~」
「あそこは、砂漠の中では一番土が良く作物も育ち地下には鉱物も潤沢だ。故に外に出る必要が無かったんだ」
無かったんだ?その言い方だと、過去形だけど・・・・あれ、でもネリアが困ってるから俺達が行くんだよね。じゃあ、今は違うのかな。
「ここ最近は鉱物の量も減って、大地も痩せてしまったって聞くな。だから、普段ほぼ出てこない岩の民がサイドに来ているらしい」
「何処も問題ばかりね・・・・」
「ネリアも、セレンほどでは無いが過酷な砂漠にあり他の町からも離れている地だからな。今はまだどうにかなっているが、急がないといけないな」
そうだねっネリアの人達を助けるためにも、今はサイドに急がないと。見渡す限り砂しか見えない道をみんな少し急ぎながら、歩いて行く。
読んで頂きありがとうございます!
コメント・感想・評価・ブックマークお願いします。
基本毎日投稿しており、時間は決まってません。
twitterで更新状況を発信しているので、宜しければフォローお願いします。