俺、訓練を見るよ!
二人で中庭を復活させたことを喜びあっていると、周囲が騒がしくなってきた。中庭を通りがかった人は、足を止め復活した中庭を見て驚いている。俺達が復活させたところも、見ていたようで
「あれをウォル皇子が!?」
「嘘でしょ?あんなに枯れていたのにどうやって・・・・」
「あの子供は誰だ?」
「いったいどんな魔法を使ったんだ?」
最初は数人程度あったが、人が人を呼び次々と集まっていき中庭を囲む通路は人で埋まってしまう程に。そして、その人々が注目している物は、俺達と中庭だ。中庭の中心で立っていた俺達は、ここから離れるタイミングを失ってしまい
「人がいっぱいだね~」
「あぁ、まさかここまでの騒ぎになってしまうとは」
「人が居なくならないと、ここから出られそうに無いね」
「うむ・・・・だがいったいどうやって収拾をつけるか」
ウォルは注目され離れることも出来ない状態に困ったように頭を掻きながら、事態を収拾させる方法を考えているけどいい案は思いつかないみたい。こうしている間にどんどん騒ぎは大きくなっていってしまってるし、早くしないと色々な人に迷惑をかけてしまいそう。
「通路からは出られないし・・・・そうだ空飛んで逃げちゃうってのはどう?ウォルも一緒に飛ばせてあげるよ」
「中々に魅力的な誘いだが、それをやってしまったらより騒ぎが大きくなってしまうだろう。空を飛ぶ魔法を使える人間はこの大陸でも聞いたことが無いからな」
「そっか~」
中庭は天井が空いているし、空を飛んで逃げちゃえばいいかなと思ったんだけどな~人間って空を飛べる人は居ないんだ~
「空を飛べるのは竜人の一部の方だけだな」
「空を飛ぶって楽しいよ!風を全身に受けて気持ち良いし、高いところから見る景色は綺麗だよ。今度みんな一緒に飛ぼうよっ」
「楽しみにしている。さて、そろそろこの状況を何とかしないと不味いな。よし、」
ウォルは通路で騒いでいる人達に向かって
「みんな聞いてくれ!この中庭については、確かに俺が治したがこれは恩人であるクーアのおかげなんだ。詳しくは後で父上から説明が有る、今は持ち場に戻ってくれ」
そう大声で言うウォル。その言葉を聞きみんなまだ残ってたいみたいだが、仕事が有るのを思い出し次々と通路から自分の仕事へと戻っていく人たち。中には詳しく聞こうとウォルの所へ向かってこようとした人も居たが同僚らしき人に引っ張られしぶしぶ仕事へと戻っていた。
「お~みんな居なくなったね」
「父上から話があると言ったからな、残りたいが後で説明して貰えると分かっていればみんな仕事へ戻ってくれるのさ」
「本当のこと教えるの?」
「いや、クーアの正体については伏せると思うぞ。あと、俺達については恐らくだがエルディラン様が残した魔道具を見つけたと言って誤魔化すだろうな」
「別に俺は言っても良いよ~気にしないし」
「国民を信用していない訳じゃないが、クーアの存在を利用しようとする輩が居ないとも限らない。暫くの間は伏せておくのが得策だろう」
そんなに心配しなくても、自分の身は自分で守れるから大丈夫なのに。だけど、心配してくれてありがとう。もし、そんな奴が現れたら俺の水で、ぜ~んぶやっつけてやるんだから。
「そっか、分かった!俺も内緒にしておくね」
「そうしておいてくれ。だが、クーアが話したいと思った相手には話して良いぞ」
「は~い」
とりあえず、騒ぎの元になってしまった中庭から離れた方が良いということなので、シャールク達の様子を見に騎士団の練習場に向かう俺達。歩いていると、紙の束を抱えている人や、石板を見て話し合っている人、ベンチで一休みしているなど多くの人とすれ違ったよ。このお城には、本当に色々な人が働いているんだね。
ウォルの案内で、訓練場まで歩いて行くと近づいて来たのかやる気の入った掛け声が聞こえてくる。そして、掛け声と一緒に聞こえてくるのは、何かを叩く音や金属同士がぶつかり合う音。
「おお~たくさんの声が聞こえる!」
「まだ訓練をしてるみたいだな」
声がする方向へ歩いて行くとそこには、大きな広場と大勢の人が戦っている光景が広がっていた。ある人は槍である人は剣で戦っていて、訓練だと聞かされていなければ本当に戦い合ってるのだと勘違いしてしまう程の気迫だ
「凄い気迫だね」
「あぁ優秀な騎士たちなんだ。どうやら、ここにはシャールク達は居ないようだな」
大勢人が居るけどあんなに目立つ二人だから、見分けるのは簡単だね。どうやらここには二人は居ないみたい、どうしようかと話していると、広場から俺達に気付いた一人がこっちに向かってくる。
「ウォル皇子、どうなさいましたか?」
「パリル、実はシャールクとアルベルドを探していてな」
「あのお二人でしたら、団長が特殊訓練場に連れて行きましたよ」
「そうか、ありがとう」
ウォルは礼を言うとパリルと別れて特殊訓練場と呼ばれる場所へ歩いて行く。
「さっきの人知ってる人?」
「あぁ、指導官のパリルだ。俺は小さい事から騎士団の所で訓練していたからな、知っている者が多いんだ」
「そうなのか~」
「パリルは華奢な体格をしているが、剣の達人なんだぞ。剣だけの戦いでは俺も勝ったことが無い」
「お~凄い!」
さっきのパリルって人、背も大きくなく体も細かったけどそんなに凄い人なんだ。
話しながら少し歩いていると、ウォルが足を止め大きな建物に辿り着いた。
「ここが特殊訓練場?」
「そうだ、ここは建物に魔道具で魔法が掛けられていてとても丈夫で傷つくことが無いんだ。つまり、荒っぽい訓練をするにはもってこいな場所ってことだ」
ウォルは扉に手を掛けて開けると中からは凄まじい轟音。
「わぁっ!」
「防音も凄いんだ、大丈夫かクーア?」
「うん、吃驚しただけ」
轟音が鳴り響いている特殊訓練場に入ると、四角いステージの上で三人が戦っていた。
「くっそ!何であれ当たって平気なんだよ!!!!」
「シャールク合わせろっ」
シャールクが悪態をつきながら、アルベルドの後方から団長さんに弓を連射し、アルベルドは大量の石礫を団長さんに撃ちそれを追うように突撃する。
団長さんは全く動く事無く、剣だけで飛んできた矢と石礫を捌きアルベルドの剣を受け止めた。受け止められた瞬間、アルベルドは団長を蹴り大きく飛び上がった瞬間、シャールクの爆発する矢が団長に直撃する。
その隙を逃さず、空中から全体重と風と火の魔法を使って勢いを増し剣を振り下ろす。だが、
ガンッ
「少しは成長したようだが・・・・まだ甘い」
アルベルドの剣を受け止めて、全くの無傷で団長さんは立っていた。アルベルドは素早く逃げようしたが、逃げきれず腕を掴まれ勢い良く腹を蹴られ吹き飛び。シャールクは、驚きながらもいくつもの魔法の矢を撃ったが、一瞬の内に間合いを詰めらると横腹を蹴られて吹き飛んだ。
「相変わらずの強さだな」
「お~凄い。二人とも全力だったのに」
「これは、ウォル皇子とクーア様どうなさいましたか?」
「訓練を見てみたいとクーアが言ったので見学だ」
「そうでしたか、シャールク!アルベルド!いつまでそこに居る。手加減はしてやっただろ!」
「この鬼!魔物!」
「全く勝てる気がしない」
シャールクとアルベルドはよろよろと立ち上がると、俺達の所へ来て
「クーア~この人強すぎ!!!」
「魔力は増えたが、まだ使いこなせていないな」
「凄いね~団長さん。勝ちたいなら俺が力貸してあげようか?」
「いや、それじゃ訓練の意味がないだろ」
「うむ、自分で強くならないとな」
「よく言った、じゃあ再開するぞ」
「ちょっもう少し休憩を」
「問答無用」
ウォルとアルベルトは引きずられて、訓練へと戻っていった。
「頑張ってね~」
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