俺、中庭を復活させるよ!
オーランとエリスの案内で庭の隅々まで回った俺達は二人に別れを告げて、中庭に向かっていた。
「まさか、エルディラン様の庭にあんなものが隠されているとは・・・・全く知らなかった」
「聞いたことも無かったの?」
「あぁ、父上や母上から庭についていろいろな話を聞かせてもらっていたがあの事については聞いたことも無かった。確かにあれは国にとって重要な物だからな、秘密にしていたんだろう」
「でも、機密にしているって訳じゃないみたいだし・・・・何で知らない人が多かったんだろう」
「そもそも、エルディラン様の庭に入れる人間が限られているからな。必然的にエルディラン様の庭の中を知る者は限られる。故にあれを知る者も話題にする者も少ないんだろうな」
「そういうことか~」
俺達はあっさり中には入れて隅々まで見て回る事が出来たけど本来なら入る許可を貰う事すら難しいんだっけ。それにウォルの反応からして、エルディランの庭にある摩訶不思議な植物を初めて見たようだったし、あの不思議な植物は出回ってないみたい。だったら、植物の事を疑問に思う事はあまり無いだろうね。みんなの知らないところで国を支えてたと思うと凄いなっと思う。
「エルディランって凄いよね。植物を変えようなんてよく思い付いたよ」
「エルディラン様の発想は凄い。そのおかげで、今俺達が生活出来ているんだからな」
「俺だったら水で生命力をあげれば良いと思っちゃうから、植物を変えるなんて思いつかなかったよ。それか、この大地を水で満たしちゃう」
「クーアはそれが出来るからな」
「でもそんな事しちゃうと、みんなが住める場所無くなっちゃうよね。あれ?あれってレイランだよね」
話しながら歩いて行くと、前から歩いてくるレイランが見えた。今日の朝レイランも誘ったんだけど、魔法師団長さんの所に行かなきゃいけないという事で断られたのだ。もしかして、もう終わったのかな?
「ん?確かにレイランだな」
「やっほ~、レイラン!」
俺は向かってくるレイランに手を振ると、レイランも気付いたようで歩くスピードを速めこっちに来てくれた。今日のレイランもシャールクやウォルのようにいつもと違う恰好をしている。水色のローブを着ていて、首元には紋章が刻まれている金の大きなネックレスを着けていた。水色のローブは金で幾何学模様が刺繍されていて、少しだけ魔力を感じる。
「ウォル皇子、クーアおはようございます。もうエルディラン様の庭を見て終わったんですか?」
「うん!すっごく面白かったよ」
「貴重な体験だった」
「良いですね~私も行きたかったんですけど、色々報告が溜まっていて・・・・」
「もう終わったの~?」
「いえ、まだ報告書を各所に届けているところなんです。後は経費や魔道具の消費量の報告でリベランさんの所と、保全庁にも行かないと」
「大変だな、頑張ってくれ」
「えぇ報告書は纏め終わったので提出するだけなのでそこまで大変じゃないですよ。皇子は報告書書き終わったんですか?」
「今日の夜やるつもりだ」
「そうですか、頑張ってくださいね。クーア、ウォル皇子それでは」
「またね~」
レイランは一礼すると、俺達が歩いて来た通路を歩いて行った。レイランの話で知らないものが出て来たので、ウォルに聞いてみる。
「保全庁って何?」
「さっきまで俺達が居た植物を保全している場所があるだろ?あの場所を管理しているのが保全庁だ」
「王様かオーランとエリスが管理してるんじゃないの?」
あそこって奥にエルディランの庭が有るから大事な場所でしょ?だから、そういった大事な場所は王様が直接管理しているか、強い竜人が管理してるのかなと思ったけど違うんだ。
「父上の仕事は王城の管理、法の立案、皇都の管理と外交にと、本当に色々あるんだ。父上は優秀だから、いくつものを仕事を日々処理しているが、いくら父上でも限界はあるし専門知識が必要となるものがある。だから、一部の物は管理する庁を設立して分担をしているんだ。その一つが保全庁だな。オーラン様とエリス様はエルディラン様の庭の管理という重要な役目があるから、そこまで手が回らないのだ」
「ほえ~じゃあ他にどんな庁があるの?」
「魔法庁、防衛庁、祭礼庁、救済庁、保全庁の5つが今ある庁だな」
「お~いっぱいだ」
「まぁクーアが関わる事は少ないだろうから気にしなくても良いと思うぞ。あ・・・・祭礼庁は関わってくるかもしれないが」
「祭礼庁って何するの?」
「祭礼庁は、祭りや神殿に関することを管理する庁だな。恐らくだが、クーアがこの国に水をもたらしたことを記念して何かしらの祭りが企画されるだろうから、クーアにどんな事をされたいか聞きに来るだろう。ちなみに、昨日会ったエルメシアが祭礼庁の長だ」
「そうだったんだ~お祭りか~楽しいのは好きだよ!」
「あぁきっと楽しいものにしてくれるだろう」
お祭りか~何が良いかな。美味しい物をたくさん食べたいし、水も有ったら良いよね。あとは綺麗なお花とか~エルディランの庭にあった歌う果実もあったら面白いよね!
いつかやってくれるというお祭りを楽しみにしながら、ウォルの案内で中庭に辿り着くとそこには、楽しい気分を落ち込ませる悲しい景色が広がっていた。
「酷い・・・・」
「とても美しい中庭だったんだが残念だな」
辿り着いた中庭は、中央に木の丸い床が敷かれてありどこからでも行けるように通路が4つ道が繋がっている。そして、その四隅には植物が植えてあるんだけど、その全てが枯れていた。
「この枯れているのってウォルが昨日言っていた月光花?」
「そうだ、スズランに似ている植物でその小さな蕾が月の光を浴びて光るんだ」
「ほえ~どんな色に光るの?」
「その時の月の色に光るんだ。今日は青の日だから、本来なら柔らかな青い色に光るんだが・・・・まずは、植えなおさないとな」
月の光によって光る色を変えるなんて不思議な植物なんだね。
「そっか・・・・」
「この中庭は母上が気に入っていてな。よく、夜遅くになると俺達を連れてここから星空を眺めたんだ」
「へ~良いねそれ!」
こんな素敵な場所で、みんなと一緒に星空を眺めるなんて絶対楽しいと思う。やりたいな~でも、こんな状態じゃやっても楽しくないだろうし、ウォルは一から植えなおして水をあげようと思ってるみたいだけど、ここは俺の出番でしょ!
「ウォル俺が手伝ってあげるから、水作って!」
「は?いや、いきなりどうしたんだ?」
「ここの月光花はまだ死んで無いから俺と一緒になら復活できるよ」
「そうなのか、じゃあ力を貸してくれ」
「いいよ~でもウォルがやるんだよ俺は手伝うだけ~」
「分かった」
ウォルは中庭の中央に立ち、目を瞑り集中しながら水を作り出していく。まだ、水を作るのは慣れてないみたいで水の形が崩れてしまったりしてるけど、水は出来てるから大丈夫!
俺がやることは生命の力をウォルの水に混ぜてあげるだけ。あとは、ウォルが水を操って植物達に与えていくだけ。頑張って水を動かそうとしているけど、苦戦するウォル。
「無理やり水を動かそうと思わないで。水は流れる物、水の流れに身を任せながら、動かすんだよ」
水が掴めない様に、水を無理やり動かそうと考えても逃げちゃう。だから水が流れることを意識してその流れを少し変えてあげるように動かすとやりやすいと思う。
「流れに身を任せる・・・」
ウォルは深呼吸をして、強張っていた体をほぐすと自然体で改めて魔法を発動させる。それによってさっきまで形が崩れてしまっていた水は、一本の流れる川のように整い流れていく。
「そうそう、良い感じ!それを月光花に届けるんだよ~」
ウォルは目を開き、手で指し示しながら水を枯れている月光花に届けていく。ウォルが操る水に触れた月光花はあっという間に枯れた茶色から緑を取り戻していく。月光花の本来の花の色は白だったんだね。中庭の隅々まで水を流し終わると、さっきまで枯れた大地だった中庭は美しい緑色を取り戻していた。
「やったね!」
「これを俺が・・・・ありがとう、クーア」
「俺は少し手伝っただけだよ~」
よし、これでみんなで星を見れるね!
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