俺、誓いを受けるよ!
長い道のりを越えて、たどり着いた誓いの湖は外からは柱と壁が立っていて中は見えない。でも、壁とか柱は綺麗で細かい装飾が彫られている。植物や動物、煌びやかな模様見るからに重要な場所だね。
「ようやく着いたな」
「えぇ、何処も変わりませんね」
「うむ、魔物達は武装神官に処理されているからな、ここら周辺は安全だ」
「確かここの武装神官って・・・・」
「む、ウォル皇子ではないか!」
湖の入り口を目指して歩いていると、前からアルベルドより大きな人が手を上げながら歩いてくる。白い服に金色の装飾がしてある服なんて見たことなかったけど、すごく綺麗だな~。
「ディーン殿」
「やはり、ウォル皇子達であったか怪我も無いようで安心したぞ。久しぶりだな、どうした湖に何か用かな?」
「はい、実は誓いが出来たので湖に宣言しようと思い参った次第です」
「そうかそうか、今は誰も使っておらぬ。案内しよう、おっとその前に初めましてだな、チビッ子」
ディーンと呼ばれた大きな男の人はウォル達の無事を確かめる、ホッと笑みをこぼした。ディーンはウォル達よりかなり年上で、老けているけど魔力が体にみなぎっている。白い髭と優しい目をした人間のお年寄りだね。レイランの馬に乗っている俺に気づいて挨拶してくれた。
「やっほ~クーアだよ!」
「初めましてクーア君、私はディーンこの聖地を守る武装神官をやっておる」
「武装神官って何?」
「武装神官は聖地や守護竜様を害そうとする者と戦う神官の事さ」
ディーンは白い布の服を着ているけど背中に背丈より大きなハンマーを担いでる。あれで攻撃したら魔物なんてぺっちゃんこなっちゃいそう。
「ディーン殿は武装神官の中でも一二を争う程の実力の持ち主だ」
「人並外れた剛力と肉体強化で全ての敵を粉砕していくんだぜ」
「はっはっは、もう老いぼれだがな」
「御冗談を」
ウォル達が呆れたように笑う。ウォル達の態度からして、ディーンって凄く強いんだろうね。歩きづらい砂漠なのに一切体の軸がズレないし、筋肉ムキムキ!アルベルドとどっちが強いんだろう?
「ディーンとアルベルドとどっちが強いの?」
「そうですなぁ~」
「ディーン殿だな。俺が何をやっても敵う気がしない」
「はっはっアルベルドも成長していますからな、私は負けてしまうかもしれんな」
「団長と互角以上に戦える方が何を言ってるんですか・・・・」
ディーンの方が強いのか~アルベルドも強いと思うんだけどな~。でも大丈夫!これからアルベルド達は強くなるからね!
湖への入り口はアーチ状になっていて、そこにはディーンと同じ服を着た女の人が立っていた。
「ルルー、ウォル皇子が来たぞ」
「ウォル皇子ご無事で何よりです」
ルルーと呼ばれた人は、黄緑色の長髪で後ろで一つに結んでいる。目は鋭く無表情だけど心から喜んでいることが伝わってくる。
「今司祭様を呼んできますね」
「あぁ頼む」
「ホーン司祭様に変わりないですか?」
「うむ、いつも通りだな」
「ホーン司祭はこの湖の担当になってから長いですよね。どれくらいでしたっけ?」
「50年だよ」
声をした方を見ると、ディーン達と似ているけど袖が長くてローブを羽織っている。帽子もかぶっているし、ディーンより年上みたい。しわしわのおじいちゃんだけど、背筋はしっかりと伸びている。
「ホーン司祭ご無沙汰しております」
「うむむ、ウォル皇子ご無事で何よりだね」
「ホーン司祭も元気そうで何よりです」
「アルベルドとレイランは逞しさが増したね。よく皇子を守ったよ」
「いえ、私達が守られることもありますので」
「ウォル皇子達はお強く成られました」
「そうか、それは良かった。シャールクは大丈夫かい?お姉さんたちが心配していたよ」
「うげっ、姉ちゃん達が?絶対何かあっただろ・・・・」
「ふぉっふぉっふぉ、ただ心配しているだけだよ。それで、少年の紹介をして貰えるかね」
ホーン司祭は屈み俺と目線を合わせてくれたので元気よく
「クーアだよ!初めましてっ」
「やぁクーア君、私はホーンだよ。この湖で司祭をやっておる」
「司祭なんだ~そういえば、何を神として崇めてるの?」
「それは勿論エルヴィラス皇国の守護竜であるエルディラン様とヴィラス様だよ」
「へ~そうなんだ!でも、エルディランとヴィラスは神じゃないよ?」
「クーアっ」
神官って神を崇める人だよね?エルディランもヴィラスも竜だし神じゃない。それに、人間が神だと思ってる存在も実は居ない。だって全ては星から生まれ星に作られたんだから。つまり、全ては星に作られたから神は居ないんだよね。だけど、みんな星を神だと勘違いしてるんだよね。
「そうだね、お二方は竜であって神ではないね。だけど、私達にとって信じる物はエルディラン様とヴィラス様なんだよ。人間は、自分勝手だから自分の信じたい者を信じるのさ。そこに種族は全く関係無いのさ」
「そうなんだ~」
ホーン司祭は優しく笑いながら俺の頭を撫で教えてくれた。
「そうさ、自分が信じたい者を崇め奉るのさ。私達が生きているのは全てエルディラン様とヴィラス様のおかげだからね」
「信じるものは何でもいいの?」
「あぁ、迷惑を掛けない限り自分の好きなものを信じなさい。そして、他の人の信じるもの否定してはいけないよ。自分が好きなものを否定されたら悲しいよね?」
「うん!確かにそうだね・・・・ごめんなさい」
「ふぉっふぉっ大丈夫だよ」
確かに好きなものを否定されたら悲しいし、嫌な気持ちになっちゃうよね。俺が聞いたことはディーンやホーンの好きなものを否定する言葉だった。謝らないとね。
「それで皇子、何用かな?」
「実は、誓いを立てに来たんです」
「そうかい、それじゃあ案内しようかね。ディーン、ルルーは見回り頼んだよ」
「いえ、皆さんに立ち会って欲しいんです」
「えぇ私達の決意を聞いておいて欲しいんです」
「うむ、我々が誓いを破らないように、見届け欲しい」
「証人は多い方が良いからな」
そう言ってウォル達と一緒にホーン司祭とディーン、ルルーを連れて奥へと進んでいく。誓いの湖の植物は枯れ、ひび割れた大地と化してしまっているけど、かつて湖が在ったことは地面が凹んでいるからわかる。一見聖地には見えないけど、出来る限り手入れをしているね。ホーン司祭は湖が在っただろう場所の縁に立つと俺達を振り返り
「それでは、誓いの儀式を始める。宣誓者前へ」
「クーア、ホーン司祭の前に行ってくれ」
俺はウォルに言われた通りホーン司祭の前まで行きウォル達を振り返ると4人とも俺に跪いていた。
「宣誓を」
「私ウォル・エルディランの剣はクーアと祖国の為に、我が命はクーアと祖国の為に、決してクーアを害させず、頼らず縛らない事をここに誓う」
「私アルベルドは、いかなる脅威からも祖国とクーア様を守り抜き、クーア様を害するものを殲滅する剣となることを誓います」
「私レイランは、全ての知識を使いクーア様を守り祖国に尽し、クーア様が望むこと全てを教えることを誓います」
「私シャールク・ベルベルランは全ての財産全ての知識をクーア様に捧げ祖国に尽しクーア様が望むものを全て叶えることを誓います」
「誓いの証拠として、血を」
ホーン司祭が懐から担当を取り出す。
・・・・なにそれ。すっごくムカムカするし、すっごく寂しい。俺はそんな事望んでないし、そんな事されても嬉しくない。みんな俺が寝ちゃったときから少し変だったけど、こんな誓い絶対に認めない!!!
「嫌だ!」
「クーア?」
「「「クーア様?」」」
「そんな誓い絶対に受け入れないし認めない!!!!」
叫んだ俺にみんな驚いてるけど、今はそんなこと気にしてなんていられない。俺はムカムカして悲しくてそれで寂しくて今まで感じたことが無い感情に襲われ、もうぐちゃぐちゃだ。
「クーアどうして泣いてるんだ」
「みんなのせいだよ!」
「何故俺達は良かれと思って・・・・ここで誓わなければまたクーアに頼ってしまう。またクーアを傷つけてしまう」
「違うの!」
みんな何もわかってない!!!!
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