鎮魂の日
竜は何とか進行を防ぎ、消滅させようと何度もブレスを吐いたが効果は薄く一部しか消すことが出来ない。それならと、大地を動かし壁を作り出すがただの時間稼ぎにしかならない
「全くなんだこの化け物は!ヴィラスどうやって倒したんだ」
「あの時は、竜達による一斉ブレスを何度もぶつけて何とかしたんだ。俺達だけじゃ火力が足らねぇ!」
「クソが!」
ディラスのは何時もなら吐かないような暴言を吐きながら大地を侵食する汚染された魔力の塊を睨みつける。侵食する性質を持っている為、魔法の効果は薄く唯一対抗できる浄化の力を二人とも持っていない。しかも、今この汚染された魔力と戦える竜は二人だけ。他の竜は眠りについてしまっている。
前回は多くの竜種による火力によるごり押しによってなんとかしたが、消すたびに襲い掛かる汚染された魔力の塊に何体も竜がやられた。
「吹き飛べ!!!」
壁を侵食しきったのを確認するとヴィラスが壁もろとも地形が変わる程の大爆発を起こすが・・・・
「クソっ吹き飛ばしてもまた集まっちまう」
「消え去れ!!!こうやって少しずつ完全に消滅させるしかないな」
大爆発によって散らばった塊は、生き物のようにまた集まり合体し元通りになってしまう。その散らばった小さい塊を少しずつ消滅させていくしか二体の竜に方法は残されてなかった。
だが、それは危険な行為だ。汚染された魔力を爆発させ分裂させるという事は空気中にも汚染された魔力が舞ってしまう。かといってそれ以外で分裂させるのは難しい。ヴィラスが持つの高火力の魔法だからこそ分裂させることが出来るのだ。
この攻防は5日間続いた少しずつ進行する汚染された魔力の塊を少しずつ削っていく二体の竜。その体は少なからず汚染された魔力に汚染され、度重なる大魔法の発動によって消耗しきっていた。竜だとしても魔力には限りがある、既に汚染された魔力の塊はいくつかの町を飲み込み無と化していた。これ以上進ませれば、人々が避難している皇都にたどり着いてしまう。
「この忌々しい塊が!!!」
「不味いな、このままだと間に合わない!」
「だったら!」
少しずつ削ったおかげでかなり小さくなってるが、皇都にたどり着くまでに削りきることは出来ない。
「なにを!」
このままでは間に合わないと考えたヴィラスは、汚染された魔力の塊に何も防御せず突っ込んでいった。傍から見ればただの自殺行為だが、ヴィラスには考えがあった。
汚染された魔力は物体や生き物中に入り込み魔力を奪い取る。削れた今なら全ての汚染された魔力を体内に入らせてしまえば、皇都を救うことが出来ると考えたのだ。
汚染した魔力が体内に入れば想像を絶するほどの痛みと共に、魂が汚染されやがて魔獣と化してしまう。竜であれば抵抗は出来るが、魔獣になってしまう結末は変わらない。
「ヴィラス!!!!」
「どうせ俺はもう死ぬしかねぇ!だったらこいつと一緒に!」
5日間続いた戦いによって既にヴィラスの体は汚染された魔力に侵され、また眠りに着いたとしても長くは持たないことをヴィラスは理解していた。
ヴィラスの体は、見る見るうちに侵食され僅かに残っていた赤い鱗も黒い鱗へと変わっていく。意識も薄れ全身に痛みが走るが、正気を失う訳にはいかない。
竜の体と魔力を求め汚染された魔力は、ヴィラスの大地を覆う程の体へ入り込み侵食していく。そして、地上からは汚染した魔力の塊が消えすべてヴィラスの体へと消えて行った。そんな事をすれば即死し瞬時に魔獣と化し理性をなくすが、気力を振り絞り皇都から少し離れ場所まで飛ぶと
「エルディラン今すぐ俺を殺せ!!!!」
「っ!!!」
根性で正気を保たせていたヴィラスがエルディランに向かって叫ぶ。竜が魔獣となればどれだけ被害が大きくなるかを理解してるからだ。魔獣となり愛おしい民を傷つける暴走するのだけはお断りだ。
エルディランはその気持ちにを理解し答えるために、責めて苦しまないように一瞬で終わらせようとしたが体を乗っ取った汚染された魔力が新た魔力を欲しがりエルディランへと襲い掛かる。
「我が友を汚すな!!!」
エルディランは光の光線を作り出し翼を貫き、地へと落そうとしたが汚染された魔力の性質を持った肉体がそれを許さない。
「無礼者が!!!!」
親友の肉体を作り替えたことに、赫怒しながらも冷静に魔獣と化したヴィラスを見据える。
竜の中でも上位の力を持つヴィラスとまともに戦えば勝機は無いが、今のこいつは理性無くただ暴れるだけ。ヴィラスが竜として上位の実力を持っていたのは、その知能と戦術によるものだ。隙を付き魔獣の核を潰してしまえば、それまでだ。
「今すぐに、解放してやるからな」
ただ問題なのは長い間戦ったことで魔力がほぼ無いという事だ。侵食を突破し、核を貫くには威力と魔力が足りない。それにもう飛んでいるだけも辛いのだ。襲い掛かるヴィラスを間一髪で避けながら、何とか突破口を見つけようとするが
「クソっ」
襲い掛かるヴィラスを完全に避けきる事が出来ず、翼を抉られ地に落ちるエルディラン。その隙を逃がさず、急降下し襲い掛かる魔獣ここまでかと思ったその時
「ハァァアァア!!!!」
ある男が魔獣ヴィラスの翼を切り裂いた。その男は歳を取り体も衰えたがその身に宿す魂の輝きは年々増していた。竜の加護が無い状態で、竜を傷つけた魂の力。その名はオーディス守護竜エルディランの番である。
「オーディス!」
「すみません、遅れました!」
剣と鎧を携えエルディランを守る様に立つオーディス。オーディスもただ守られ、厄災が過ぎるのを待っていた訳では無い。国民全ての魔力を集めエルディランたちを援護しようと考えていたが、ヴィラスが魔獣と化したことによって状況が変わり全ての魔力をオーディスに集めエルディランを助けるために現れたのだ。
オーディスがロートスのような技術を持っている訳では無いが、すべての国民は加護という繋がりを持っている。この繋がりを使えば、一人に全ての魔力集めることが可能だ。
翼を切り裂かれた魔獣ヴィラスは、勢い良く地面に墜ちたが痛みを感じない魔獣はまたエルディランに襲い掛かる。それをオーディスは人ではありえない速さで懐へ入り、ヴィラスを蹴り飛ばす。大地を覆う程の巨体が吹き飛び、吹き飛んだ隙に距離を詰め胴体を切り裂いた。
「ガァアアアア」
理性無き魔獣が叫ぶ。
「ヴィラス様、申し訳ありません。私達が弱いが故に貴方様をそんな姿にさせてしまった」
オーディスを嚙み砕こうと突撃してくるのを、右に大きく飛びながら避けすれ違いざまに右翼を切り落とす。
「貴方様は常に私達の事を考え接してくれた。貴方その様はまるで兄のようで不敬ながらも親愛を抱いていました」
背後に回ったオーディスを潰そうと尻尾を振り下ろすが、宝剣のような輝きを放っていた尻尾を断ち切る。
「あなたが居てくれて民は幸せでした。貴方をそんな姿にしたのは私達の罪です。永遠に忘れることは無いでしょう。そして、貴方を忘れることは決してしません」
振り向きブレスを吐こうとしたヴィラスの顔を蹴り上げ胴体を浮かせると
「何時までも貴方様に感謝と親愛を・・・・今すぐその苦しみから解放します!!」
オーディスはヴィラスの胸に向かって大きく跳躍し、剣を深々と突き刺し魔力を放った。その攻撃により核を貫かれ、倒れるヴィラスとオーディス。エルディランは力を振り絞り、オーディス元へ駆けつけると
「エルディラン様、ヴィラス様、お二人をお守り出来ず申し訳ありません・・・・」
オーディスは既に瀕死の状態だった。人では有り余る力を使い魂を燃やしたのだ。その反動は大きく、オーディスの命を削りあれだけ輝いていた魂は今にでも消えて可笑しくはない。
「オーディス逝くな、お前まで居なくなったら我はどうすれば良いのだ」
「貴方と過ごした日々はとても大切な思い出です。あんなに小さな町がこんなに幸せと笑顔で溢れる国になったのです。もう思い残すことは・・・・」
「駄目だ、何時までも傍に居ると言っただろう!」
「私は常に貴方様の傍に居ますよ」
消えていく光をエルディランは見送るしかなかった。この日エルヴィラス皇国はかけがえの無い二人を失った。葬儀は速やかに開かれ国中は悲しみに包まれ、大国に対して怒りを覚えた者もいた。だが、エルディランは復讐を許さなかった。
「エルディラン様!このまま、放っておくのですか!」
「我々は大事なお二方を奪われたのです!今こそ復讐を!」
「ならぬ」
「何故!」
「オーディスとヴィラスが望まぬからだ。あ奴らは決して復讐を望まず平和を愛した。それを我が裏切る訳にならぬ」
「・・・・・」
エルディランの言う通り二人は争いを好まなかった。常に優しく、声を荒げる事さえなかったのだ。亡き二人の意思を無視するわけにはいかない。
「急だが我も眠りに就かなければならない、ディオお前は王座を継ぎお前が国を導くのだ」
「・・・・ハッ」
「エルディラン様どういうことですか!?」
エルディランとオーディスの長男であるディオに王座を譲ったエルディラン。ディオは母親であるエルディランの変わってしまった姿に、この事態を予想していた。金色に輝く長髪は所々黒く染まり、白き肌は黒い痣が浮かんでいた。あの時のヴィラスと同じ状態だ。
「我も汚染された魔力に侵され過ぎた。このままでは、浸食が進んでしまう、眠りに就けば侵食は遅くなりこの大地に対する加護も長く続くだろう」
「他に方法は・・・・」
「無い」
「分かりました・・・・エルディラン様が目覚めるその時までこの大地を守って見せましょう」
「うむ、頼んだぞ」
エルディランが眠りに就くのであれば、。今度こそ眠りを妨げず守り抜いて見せる。全ての国民が決意を固め、今に続いているんだ。
「そうなんだ・・・・ヴィラスとオーディス残念だね」
「あぁヴィラス様とオーディス様の犠牲で俺達が生きているんだ・・・・俺達が弱かった故にな」
「今度こそ守って見せます」
「あぁこの大地を復活させエルディラン様が目覚める時まで」
「もう、頼りっきりは駄目だ」
ウォル達から聞かせてもらったこの国の歴史は壮絶で悲しいものだった。平和を愛していたのに、戦いに飲まれ死んでしまった二人。眠りに就いたエルディラン、だからみんなはこの国を守ろうと必死なんだね。
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