俺、ヴィラスと話すよ!
夜だと言うのに宴が始まってしまい、予想していたのとは全く違う大事になってしまったけどみんなが喜んでくれているみたいだし結果的には良い方向に進んだかな?それに白風の一族のみんなはほんの僅かだけど、汚染された魔力を身体に蓄積してしまっているから浄化に丁度良いよね。町民達が盛り上がっている内に目立たないよう、みんなを置いて隠れながらヴィラスと一緒に町を進み立派だけど素朴な一軒家に着いた。人の気配は無いけれど、長年手入れされている様だね。
「ふっ、ここは変わらないみたいだな」
「ここがヴィラスのお家?」
「そうだ。人の目が無い間に中に入ろう」
ヴィラスのお家はディオクス達が住んでいるお家と違って、大きくも無くそこら辺にある普通のお家で何か特別な魔法や彫像などは無い。ヴィラスって凄く崇められているのに住んでいるお家は普通なんだね~
中に入ってみると、長い間人が使った様子は無いが定期的に掃除がされている様で埃は溜まっておらず綺麗なままだね。置いてある家具や雑貨はどれも派手でも高価な物でも無いけど、何処か優しさと温かみがあって凄く落ち着く空間になっている。その家具の一つ一つを懐かしそうにそして慈しむように眺め、少しずつ奥へと進んで行くとリビングだろう場所に着いた。そこには小さな丸いテーブルを、三つの椅子が囲むように置かれていて、その一番奥にヴィラスは慣れたように座った。
「クーアも座ると良い。あ、その前に明かりだな」
ヴィラスは火の魔法を使い天井から吊り下がっている照明に明かりを灯す。そして明るくなった部屋で俺は指を差された椅子に座りヴィラスと向かい合うような形になった。
「凄く素敵なお家だね。なんだかとっても温かい感じがする!」
「そうか、褒めてくれてありがとう。最初はデカい家を作ってやるつもりだったんだが、ミルガンナが派手で華美なものより家族で温かく過ごせる安全な家が良いと言ったので色々と工夫したんだ」
この家を望んだのはミルガンナなんだね。この家の中を見るだけで会っていないのに人柄が伝わってくる。
「そうなんだ~確かに優しい感じがする!ミルガンナって凄く素敵な人なんだね」
「あぁ、俺の愛しい番だ」
ミルガンナの事を話すヴィラスはいつもとても甘く慈愛に満ちた優しい表情をしている。その顔を見るだけでどれだけ大切にしているのかがよく分かるね。
「早く会えると良いね。ミルガンナの話をもっと聞かせてよ!」
ヴィラスが唯一と言いそんな表情をする人がどんな人なのか気になるな~ディオクスの祖先だからやっぱり顔は似てるのかな?それに白風の一族なんだから戦いにも強かったと思うんだよね!
「あぁ色々と教えてやりたいがその話はまた今度にしよう。今日はクーアに大事で真面目な事を話さなきゃならないからな」
「は~い。今度絶対だよ!」
真面目な話よりミルガンナの話が聞きたかったんだけど、ウォル達からわざわざ引き離して俺だけと話したいってことはよっぽど大事なことなんだろうね。ちょっと残念だけど俺はヴィラスの話を聞くために姿勢を正すと、ヴィラスは大きく頷き話し始めた。
「まずはクーア、お前は自分が竜種である自覚はあるか?」
「勿論、俺は何処からどう見ても竜種でしょ?」
「そうだな。見た目はそうだが、中身の問題だ。竜種が一体どういう存在なのかをしっかりと自覚しているのか?」
「ん~どういうこと?」
「竜種がどういう存在なのかを知っているかと言う話だ」
「あ~それならウォル達に教えて貰ったよ!竜種はこの星を守り管理するために生まれた生き物で超常的な力を持ち世界の頂点に立つ者だって聞いた」
簡単に言えば竜種は凄い生き物だってことでしょ?それがどうしたのかな?
「はぁ、やはりそうか・・・・大雑把にしか理解していないな。導き手が居なくとも、生まれた時から星からの使命を受け取り自覚するはずなんだがな」
「む~だって生まれた時から星から知識を貰って無いし導き手なんて居なかったもん!」
大きく溜息を付くヴィラスだけど、居なかったものは仕方が無いし知識を教えてくれなかった星が悪いじゃん!
「そうだな。何かしらの手違いか異常もしくは・・・・まぁ良い。俺がクーアの導き手となり竜種についてを教えよう。今から言う事はしっかりと覚えておくように」
「は~い」
「竜種とは大雑把に言えばクーアが言った通りだが、星を巡る属性のバランスを保ち星に宿る命のバランスを保つ役目を持っている。火に傾いてしまえば水の竜種が世界に干渉するって感じだな。竜種の強力な環境改変能力はその為にある力なんだ」
「へ~そうだったんだ~」
「竜種はあまり世界に干渉することが無いと思われがちだが、自らの住処から大地や大気に魔力を流し常に均衡を保っているのだ。そして大義を担っている竜種はその力がこの星に生きる生き物達にどのような影響を与えるのかをしっかり考えなければならない」
「俺はちゃんと考えてるよ!」
俺の水が無ければこの国の人達は死んでしまうだろうから命を助けたし、水を飲んでも大きな影響が出ないようにもしている。
「生き物の事は考えているようだが、助けた後の事も考えなければならないと駄目だ。水龍によってこの国が救われたと他の国に知られれば、竜種を求めて争いが起きるだろう。俺達の時のようにな」
そう言うヴィラスは苦痛の表情を浮かべ自分を責めているようだった。250年前の災害が起きたのはヴィラスとエルディランがこの国に居る事を知りその力を他国が求めたから起きたんだったよね・・・・
「一部の生き物を助ける事を禁じられている訳では無いが関わった後どうするかが重要だ。我々竜種は行動をするならば常にその事をしっかりと考えるようにしなければならないぞ」
「はーい」
そうだよね。国が豊かになった後にこの国を狙ってくる人達が来ないとは考えられない。その時俺はどうやってみんなを守ったら良いんだろう・・・・
「次は竜種の中の竜と龍の違いについてだ。クーアは知っているか?」
「姿~」
「そうなんだが・・・・竜は星の管理者として星の害になる物を強制的に排除する役目を持っているんだ。その為強力な物理攻撃と強靭な体、そして生命に対する絶対的な有利性を持っているんだ」
「そうだったんだ~・・・・有利性って何?」
「ブレスの事だ。あの攻撃は生き物を必ず消滅させる力を持っているんだ」
ブレスは竜の絶対的な攻撃だと聞いていたけど、そんな特性を持っているなんて知らなかった。
「それじゃあ龍は?俺はブレスを吐けないしヴィラスみたいな立派な体を持たないよ」
「龍は星の管理者として環境を調整する役目を持っている。そのために強力な魔法を操り周囲の魔力を利用すること長けている。そして何よりの特徴が星への干渉能力だ」
「あ~なるほど~確かに俺得意!」
「同じ竜種と言えど役割を分担して使命に当たっているんだ」
星に干渉して大地の記憶を読んだり、星の魔力を利用したりすることは得意だね!周囲の魔力を取り込んで自分のものにするのは雨が降った時に魔力を吸収したあれのことだよね。
「竜種が特別と言えど普通は星の深い部分、つまりは魂に関する領域や、生命創造の領域には干渉出来ないからな?」
「俺も何時も使える訳じゃ無いよ~あの時は星が許してくれたから使えただけ」
俺だって星に何でもかんでも干渉できる訳じゃ無いんだよ。この大地の遥か昔の記憶は読めないし、自分自身や世界に関する知識だって貰えない。魂の領域はヴィラスって言う存在があってこそ出来たことだしね。
「ふむ・・・星に干渉する魔法については一旦置いておくか。大丈夫だとは思うが、今持ち合わせている世界や星の知識を人間達に教えて無いだろうな?」
「勿論!理とかは教えたことがあるけど、星への干渉に仕方とか大地の弱点、生命の改竄とかは・・・・」
あ、どうしよう。強い魔力で人間に後天的に属性を付けられること教えちゃった。
「おい、何故黙る」
「いや~実は強い魔力で命に後天的に属性を与えられることを教えちゃったんだけど・・・・」
「なんだそんなことか。その程度の事ならば遥か昔から言い伝えとして人間達に存在していたから構わないぞ。人間を違う生き物に変える方法を教えていたらお叱りものだったけどな」
「それはして無いから大丈夫だよ~生き物の身体を変えたら魂まで変質しちゃうもんね」
「あぁ、魂の変質はある特例を除いて全て禁忌の魔法だからな。もし知っている奴が居たら記憶を消すか全て排除するしかなくなる」
ふ~危なかった。魂のお話しは何回かしたことがあるけど、変質の方法とは教えて無いからセーフ!変質させたら魂は星の元へ帰れなくなっちゃうし、そんなことになったら星の魔力が減って大変なことになっちゃうよね!
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