俺、雨を降らせるよ!
セレルまで戻って来た俺達は取りあえずディオクスの家に行こうと言うことになったが、それに待ったをかけたのはヴィラスだ。
「俺の家が残っているのだろう?それならば今夜は俺とクーアはそこで寝るぞ。他の者達はディオクスの家で寝ると良い」
「え、ですが!」
「自分の事は自分で出来る。世話は不要だ」
「お食事などはどうなさいますか?」
「俺達は元々食事を取らなくとも永遠に生き続ける存在だ。今日ぐらい飯は・・・・」
「え~俺は食べたい~」
「・・・・俺達の家へ運ぶのを頼んでも良いか?」
「畏まりました」
「でも何で今日はヴィラスと俺だけなの~?ウォル達と一緒に寝たい~」
「今日は俺とクーアで竜種だけの秘密の話が有るからだ。加護を与えている様だが、伝えて良い事と悪いことがあることぐらい分かっているだろう?」
「う~・・・・はーい」
本当はウォル達と一緒にご飯を食べてウォル達と一緒に寝たかったけど、ヴィラスは俺に大事な話が有るみたいだし今日は我慢だね。ウォル達は俺達が何を話すのか気になるみたいだけど、ヴィラスが駄目って言っているから素直に従ってくれている。別にそこまで話しちゃ駄目なことって特に無いんだよ~?例えば、ある場所を刺激すると大地がひっくり返るとか、どんな種族でも不老不死になる方法とか全てを司る星に接続する方法ぐらいじゃない?あとは、全ての命を奪う禁術とか~
「分かりました。それでは住いまでご案内を・・・・」
「いや、セレルの町はあまり変わっていないようだから自分で行ける。お前達は今日は魔力を消費し多くの事を成し遂げたのだから早く休むと良い」
「そうだね~体の傷は治ってるみたいだけど、沢山魔力を消費して大量の汚染された魔力の中に居たんだから早く休んだ方が良いよ!」
ディオクスは俺の球体でウォル達は俺の加護を強めて汚染された魔力を無効化したけれど、本来汚染された魔力と言うのは生命に対して甚大な被害を出す魔力なのだ。竜種ですら影響を及ぼす空間にいくら守られてたとは言え人間が長時間居たのだから少なからず影響を受けているはずだ。だから、今日は早めにゆっくり休んだ方が良いと思う!
「ふむ・・・・」
「クーアとヴィラス様が仰るのであれば従います」
「えぇ、全ては御心のままに」
「それでは我々はこれにて失礼いたします」
「私も食事をお届けした後すぐに休ませて頂きます」
「うん、また後でね~あ、そうだそうだ忘れないうちに俺のプレゼントを渡すね~」
みんなが帰っちゃう前にプレゼントを渡しておかないとね。俺はシャールクの背中から降りると空を飛びみんなの頭の少し上ぐらいで立ち止まると空へと手を伸ばす。
「一体何をするつもりなんだ?」
「ふむ・・・・プレゼントは嬉しいがクーアは今日かなり消耗しているのだし無理をして欲しくないのだが」
「クーア、明日でも良いんじゃない?」
「今日は夜遅いし明日住民達が起きてからでも・・・・」
「起きている間にやったら、色々騒ぎになっちゃいそうだし今の内の方が良いと思うんだよね」
「・・・・一体何をするつもりなんだ」
「悪いものでは無いから安心しろ」
騒ぎになると聞いてみんなは何をするつもりなのかと不安そうだけど、住民達に被害を加えるようなことは絶対しないから安心して!ヴィラスは俺がやろうとしていることが分かったみたいで、呆れ顔だけど止めるつもりは無いみたい。ということはやっても良いってことだよね!
俺は空へと意識を向け俺の魔力を遥か遠くの空へと送り出す。そして、高く昇った魔力は空に溜まる風の魔力と水の魔力に混ざり合わせていく。空には他にも光に闇、雷と火それに星といった様々な魔力があるけど今用があるのは水と風だけだから使わない。この世界には至る場所に魔力が宿り、勿論空気中にも魔力が宿っている。そして、宿った魔力はありとあらゆる現象を起こすことが出来るのだ。
簡単に言っちゃうとこの世界の全ての現象は魔力が関わってるってことだね!
「ん?何だか気温が・・・・」
「夜だからじゃ無いか?」
「いや、セレルの夜は暖かいぐらいが普通だ。それ以下にはならないはずだ」
「この町は砂漠の中にあるが、活火山と土地によって夜でも暖かな気温に保たれるようになっている」
「・・・・この暑さを暖かなって・・・・私達にとってはかなり暑いのだけどね」
「白風の民はみな俺の影響を受けているからな。俺が動けるようになった今影響はもっと強まるだろうな」
白風の一族はみんなヴィラスの魔力の影響と血によって火耐性が高く暑さに強いんだよね~ヴィラスが完全に復活したら、ここら辺の地帯を包む魔力が格段に濃くなるだろうから白風の一族はまた一段と影響を受けるだろうね。
そんな話を聞きながらも、俺は空にある風と水の魔力と俺の魔力を混ぜ合わせ搔き集めていく。水の魔力が濃くなったことによって、明らかに周囲の温度は下がって来ているのにみんなは気付き始めたけど気にしな~い。この国に来てずっと感じていたことだけど、この国の空には他の国と比べて水の魔力が本当に少ない。だから、大地を豊かにし植物達を育てる雨が降らないのだ。
俺が水路を引いたから雨が降らなくても大体の場所で植物が育つようになったけれど、このセレルにはヴィラスを尊重して水路を引いていない。このままでもヴィレン山脈の植物や動物、そして大地はヴィラスの力によって育つだろうけど、俺の水路には生命を育むだけじゃ無く汚染された魔力を浄化する役目もあるのだ。いくらヴィラス本人が良いと言っても山に水路を引くのはなんか違う気がするから、違う方法で大地を浄化させて貰おっと。
「ん・・・・?雲が」
「え、本当だわ。この時季にこんな薄い雲が出来るなんて」
「もしや・・・・クーアがやってるのか?」
「うん!ここら辺にある水の魔力と俺の魔力を使えばこれぐらい楽勝だよ!」
星全体にこの雲を出すのは流石に無理だけど、セレルとヴィレン山脈そして周囲の燃え盛る大地程度の範囲なら周囲の魔力を使えばこれくらい簡単に作れる。この雨雲に俺の浄化の力を混ぜて、地上に雨を降らせれば少しだけ残ってしまった汚染された魔力を全て浄化できるはず!
「さぁ~降れ~~~」
俺が大きく掛け声を出すと、ぽつとぽつ天から雫が落ちてきてみんなの身体を濡らしその雫が呼び水となったかのように雫が大量に落ちてきて雨となった。大粒の雨粒は葉っぱに当たりパラパラと軽快な音色を奏で、屋根にや地面に落ちる雨粒は重低音の太鼓のようだ。
パラパラ パチパチ ピチャピチャ タンタン
「あはは、楽しい~」
俺は久々の雨と楽し気な音色に心が躍り空を飛びまわってしまう。
「雨なんていつぶりだろうか」
「俺達が旅に出てからは一回程度しか見たことが無いな」
「うふふ、涼しくて気持ち良いわ」
大量に降る雨に全身を濡らしながらもその顔は笑顔で、空を見上げ手を伸ばし水に喜んでくれている。ブレストとディオクスに向けてのプレゼントなんだけどどうかな~
「・・・・・」
「セレルに・・・・雨が・・・・」
ウォル達のように喜んでくれているかと思ったけど、唖然としたようすで雨が降る空を見つめている。
え~もしかして気に入らなかった?
どうしよう雨を止めた方が良いかと迷っていると家の中に居てもう寝ていると思ってた人達が雨音に気付き、次々と外に出てき空をディオクス達の様に唖然と空を見つめている。え、もしかしてだけどセレルの人達って雨が嫌いだったりする!?
どうしよう、もしそうならプレゼントは失敗だよね・・・・
「雨だ・・・・」
「雨ね・・・・」
「雨だああああああああああああああああああ」
「うおおおおおおおおおおおおおおお」
「うへぇ!?」
どうしようかとオロオロしていると町の人達は突然大声を上げ満面の笑みで家から飛び出し全身で雨を受け止め駆け回り踊り出し騒ぎ始めてしまった。
これって・・・・喜んでくれてるんだよね?
「みんな外に出てきたわね」
「恵みの雨だからな、そりゃ叫びもするさ」
「あぁ王都でも同じような反応するだろう」
「セレルは俺が居るせいで雨が滅多に降らない地域なんだ。降ったとしてもほんの小雨程度さ」
「クーア、ありがとう!とても素敵なプレゼントだ!」
「皆の者!夜遅いが今夜は祝祭だ!!!!」
「「「「「「おおおおおおおおお!!!」」」」」」
アルベルドは滅多に見れない満面の笑みを浮かべながら俺にハグをし、ディオクスは喜び叫ぶ民達に祭りだと叫びそれに答える白風の一族達。
あれ~些細なプレゼントを贈ろうと思っただけなんだけど、なんか町全体で盛り上がっちゃった。
読んで頂きありがとうございます!
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