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俺、セレルに戻るよ!

「もう夜中だね~」

「あぁ、あっという間に時間が経ってしまっていたのだな」

「今日の出来事がたった一日の出来事だってまだ信じられないぜ」

「だけど、本当の事なのよね・・・・その証拠に」

「ヴィラス様!私がお運びしましょうか?」

「ヴィラス様にお手間を掛けさせる訳にはいきません。この先は全て私が道を作らせて頂きます!」


 ウォルとシャールクとレイランは少し落ち着いて来たけど、アルベルドとディオクスの興奮が冷め無いようで小さな翼で空を飛ぶヴィラスに対して畏まった様子で話し掛ける。


「要らん。この山は俺の庭のようなものだぞ。いくら時が経とうともこの山を進むことなんて目を瞑ってでも歩ける。それと、無暗に山に手を入れるのは俺は好まない」

「申し訳ございません!」


 そうだね~この山脈はヴィラスが作り出して、隅々にまでヴィラスの魔力が行き渡っているんだからもう体の一部と言っても過言じゃ無いよね。俺も各地に巡らせた水は手足のように使えるし、やろうと思えば水が通っている場所の全ての状況を知ることも出来る。頭が痛くなるからやらないけどね!


「それと、この体は小さくか弱く見えるだろうがお前達とは比較にならない程の魔力を有している。だから、俺の事は気にせずお前達の身の安全を考えろ」

「そんな、私はヴィラス様をそんな目で見たことは有りません!!!大変失礼致しました!」

「そうか、この森は安全な場所だが足元が見ずらいこの状況は人間にとっては危険なものだ。特に下山が怪我をすることが多い。お前達は少しの傷が致命傷となる事もあるのだから気を付けるように」

「「はい!」」

「お心遣いありがとうございます」

「はい、気を付けさせて頂きます」


 そうだね~ヴィラスの今の姿は俺の背中に乗っちゃうほど小さくて可愛らしいけど、俺と星の力を籠めた体だしヴィラスの意思が宿ったことによって徐々に力を増していくように作っている。勿論、ヴィラスの全盛期には遠く及ばないけど国を滅ぼすぐらいの力はあると思うよ。それに、ヴィラスはこの山に宿っている魔力を全て操れると言うことを忘れてはいけないね。


「もし怪我したら俺が治してあげるから大丈夫だよ~魂が離れる前だったら体がぐちゃぐちゃになっても綺麗に治してあげるからねっ」

「・・・・そうだな。出来ればそういう事態にならないようにしたいがもしもの場合は頼む」

「えぇ、万が一と言うことがあるものね」

「そんな事態にならないよう俺は姿を変えさせてもらいますね」

「姿・・・・なるほど獣人か」


 シャールクは木の裏に一瞬隠れると、サラサラの毛皮に虜になってしまう黒豹の姿で戻って来た。


「それにしても、黒豹か・・・・懐かしいな」

「ヴィラスは黒豹の獣人を知ってるの~?」

「あぁ、王都に行った時に見掛けたことがある。そいつが中々に商才があるものでな」

「あ~恐らくですが俺の先祖だと思います」

「そうなのか。名は何という」

「シャールク・ベルべランです」

「ベルべラン・・・・なるほどな」


 そっか~シャールクの先祖もこの国に住んでいたんだから覚えがあっても可笑しく無いよね。というか~・・・・


「もしかして、ヴィラスってみんなの名前知らないの?」

「そういえば聞き忘れていたな。色々な事が有ってうっかりしていたすまない」

「いえ!」

「それで、ウォルと言うエルディランの末裔の名前は聞いたが他の名は聞いていなかったな。俺に教えてくれるか?」

「勿論です。私はレイラン、エルヴィラス魔法師団に所属しております」

「なるほど、あの団はまだ残っていたのか。結成の時は俺達の名前を使うなど恥ずかしいから止めろと言ったのだが聞かなくてな」

「そうだったのですね、初めて聞きました」

「最終的には、オーディスとミルガンナに説得されたんだ」


 その時代に生きていた人?竜?だからこういう話を聞けるんだよね~そう言った些細なことは歴史書とかには書かれないし、そもそも昔の事を記録した物が多く消失しちゃっているから昔のことを知る手段が限られているってウォルが言ってた。俺も時間が出来たら昔の事をいっぱい聞いてみたいな~


「それで、俺の民達の名前は何と言うんだ?」

「私はアルベルドと申します。現在はセレルを離れ王都で騎士団の副団長を務めております」

「お前は俺の血縁だな。セレルから王都にか・・・・」

「はい、白風の一族でありながら聖地セレルの守護の任を放棄しまっていることを深くお詫び申し上げます。どのような処罰も受け入れます」

「そんな些細なこと気にしないぞ。そもそも俺は民にセレルから出るなともセレルを守れとも言った事は無い。自分の好きな道、自分が幸せになる道を辿れば俺は良いと思っている。それに、俺が居た時代は白風の一族は王都にも結構居たんだぞ」

「そうだったのですか・・・・」

「俺の民は戦う力に優れている奴らが多いからな。騎士団に入ったり指南役としても王都に呼ばれたりしていたな」


 今の王都には白風の一族は数少ないけど昔は結構な数の白風の一族が居たんだね。大地が荒れる前だったら、セレルから王都に行くまでの道はここまで過酷じゃ無かっただろうし、ヴィラスの加護を多く受けているセレルとエルディランの加護を受けている王都その二つの都市が交流があっても不思議じゃ無いね。


「お前も俺の血族だろう?名はなんだ?」

「私の名はディオクスと申します。現在のセレルの長であり、戦士長に就かせて頂いております。そして、アルベルドの父でもあります」

「お前達は親子だったのか。いや、顔を見比べるとよく似ているな。俺が居ない間セレルを守ってくれたことに感謝する」

「勿体なきお言葉ですが、私は役目を果たしたまでですので感謝など不要です。そもそも我々白風の一族はヴィラス様に助けられ安息の地を得た一族です。なので、この地を守るのは当然の事です」

「そうか、俺はお前達をこの地に縛り付けるつもりは無いんだが・・・・好きでそうしているなら自由にすると良い」

「はい!」


 アルベルドとディオクス達白風の一族は義務と言うよりヴィラスへの感謝の気持ちでここを守っていたんだろうし、褒められて嬉しそうだ。それじゃあ、俺もみんなの頑張りにご褒美をあげないとね。


「それじゃあ、俺がアルベルドとディオクスにご褒美をあげましょう!」

「ふむ、クーアにはいろんなものを貰っているんだが」

「褒美など・・・・」

「まぁ簡単なものだから気にしないで。だけど、ご褒美をあげる前に町に帰ろうか」

「ふむ、気になるな」

「クーア何をするつもりなんだ?みんなを喜ばせてくれるのはとても嬉しいが、大きな力を使った後だし少し休んでからの方が良いのではないか?」

「もう回復したから大丈夫!」

「はぁ、クーアはこう言ったら止めないからな・・・・少しでも休むために俺の背中に乗っておけよ」


 シャールクがそういうので俺は断る理由も無いから艶々スベスベの毛皮の上に乗り、みんなと一緒に山を下り始めた。俺達が通って来た道は整備しておらず、草や枝を分けながら進んでいたがヴィラスが手を翳すと、大地が流動し道が生まれるので俺達は苦も無く山を下りれそうだね。


「明かりも有った方が良いか」


 ヴィラスが真っ暗な森を見て俺達の前に空を浮かぶ火の玉を作り出して辺りを照らしてくれた。


「ありがとうございます」

「これぐらいは息を吸うようなものだから気にするな」


 ヴィラスによって道を作られ周囲は照らされ、こんな事になって森は大丈夫なのかと疑問だったけど、俺達が通った後にまるで道なんて無かったかのように元の森へと戻っていた。森の様子は俺達が通って来た時と変わらず清浄なままで、時折汚染された魔力をかすかに感じるけど問題なる程じゃない。昼間の生気に満ちた森とは違い、夜の森は神聖な雰囲気がありなんだか心が落ち着く。


「ヴィラス様のおかげで早く山を下りれそうです」


 あっという間に儀式を行う整地までも戻って来てあとは整備された道を突き進み町に戻ることが出来たのだった。

読んで頂きありがとうございます!

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