俺、ヴィラスを復活させるよ!
「それで、何をすれば良いのだろうか?」
「みんなは俺に魔力を渡して欲しいんだ。リオ、ガイア」
「はいよ」
「何でしょうか主」
「まだ魔力が残ってるなら星の魔法を使う手伝いをして」
「了解だぜ」
「畏まりました」
ヴィラスは自分の中に籠り魂を守った所為で、魂がこっちの世界に帰って来れなくなっている。万全な状態なら簡単に帰って来れたんだろうけど長年の汚染された魔力との戦いで魔力と魂と消費をし過ぎて、俺の魔法でただ帰って来ても魂を保てるほどの力が無いから俺が魂を守ってあげないと駄目なんだ。だけど、それをするに魂に干渉する星の魔法が不可欠で魔力の消費が多き過ぎるからみんなに手伝って貰わないとね。
「まずは肉体を再生させるのか?」
「・・・・まずは魂からだね」
「?そうか」
「魂に関わる事はクーアにしか出来ないわね」
「やっとヴィラス様とお会いできるんだな」
「うむ」
「それじゃあ、始めるよ!」
俺は龍の姿のまま浮かび上がりヴィラスの亡骸の前へ行くと目を瞑り、亡骸の奥に眠る魔力へと魔法を飛ばしヴィラスの魂を探る。かなり奥に眠って魔力と溶け合っているから普通なら見つけるのは難しいけど、俺は一度ヴィラスと会っているから見つけられる・・・・・そこだ!!
ヴィラスの魂を探し当てた瞬間、現実世界に居た俺はヴィラスの魂の世界へと意識が持って行かれ周囲は荒れ狂う嵐と絶え間なく躍動するマグマに景色が変わった。
「見てるだけで暑苦しい・・・・」
「ひでぇ言いようだな」
「あ、ヴィラス。今度は竜の姿なんだね」
暑さは感じないけど見てるだけで燃え尽きてしまいそうな景色にげんなりしていると大地を覆い隠す程大きな影が俺を隠し空を見上げると、痛々しい姿のヴィラスが居た。
「もう隠しても意味が無いからな」
「酷い姿だね~」
「あぁ俺自慢の鱗がこんな色になっちまった・・・・ミルが気に入ってたんだがな・・・・」
「ミルってミルガンナのこと?」
「お、知ってんのか?俺の愛しい番だぜ」
「番?」
「ん?竜種なのに知らないのか?この世で一人だけの魂で繋がった相手の事だ」
「あ~エルディランとオーディスみたいな感じか」
「その通り、あいつらには迷惑かけちまったんだよな」
「じゃあ、謝りに行かないとね!」
エルディランと戦った時を思い出したのか、暗く影を落とすヴィラス。オーディスは死んじゃったけど、エルディランとその息子はまだ生きている。だから、世界に戻って一緒に謝りに行こう。
「ふっ、そうだな。だが、俺にはもう」
「大丈夫、俺が何とかしてあげるから!」
「そう強がってるみたいだが、俺を治すほど魔力は無いだろ?」
「・・・・」
「図星か。まぁでもこの世界から抜け出してミルが、俺の民が居た大地に戻れるだけ嬉しいよ。ありがとうクーア」
「それじゃあ、魂を引き上げるよ」
俺はヴィラスの巨体を星が映る水で優しく包み上げ守護すると、勢いよく空へと向かって飛び立った。ここはヴィラスの奥底、多くの魔力が渦巻いているけど俺は負けないし何なら俺の力になって貰うからね!荒れ狂う風達を吸収しただ真っ直ぐにヴィラスと共に空を目指す。みんなが待っている出口を目指して俺は
「いっけぇ~!!!」
ヴィラスの中から勢いよく抜け出した俺ははっと意識を取り戻し、みんなが心配そうに俺を見ていたが次の瞬間ヴィラスの亡骸から光が灯る。
「これは」
「よし、成功したね!」
光は段々と強くなっていき周囲一帯を包むこむ程の光を発した後、目を開けるとそこには亡骸の上に浮く半透明のヴィラスの姿があった。
「ヴィラス様・・・・」
「本当の・・・・」
「美しいわ」
「っ!!!」
「・・・・!」
現れたヴィラスのその雄大な姿と自然の化身である力強さに唖然としその巨体と美しい鱗と姿に魅了されていたが、アルベルドとディオクスは姿を認識した瞬間跪き首を垂れた。その姿を見てウォル達も次々と跪く。
「お帰り、ヴィラス」
「まさか本当に帰って来れるとはな。感謝するぜクーア。そして、そこにいる人間達も俺の為によく来てくれた。顔を上げてくれ」
「はっ勿体無きお言葉です!」
「我らはエルディラン様とヴィラス様の民であります!!民としての責務を果たしたまでです!」
「我らを導いてくださった恩を忘れてはいません」
「我が命は何時までも・・・。ヴィラス様の為に在ります」
「白風の一族はヴィラス様の為に在ります。永い間お待たせして申し訳ございません」
みんなヴィラスの言葉で顔を上げるけど、目から涙が零れていて話すのもやっとだ。いつも冷静で表情を崩さないアルベルドやディオクスでさえも顔を濡らし、感動に打ちのめされている。ずっと探してたんだもんね、ずっと会いたかったんだもんね。俺、みんなが会えてすっごい嬉しいよ!
「お前、エルディランの気配が濃いな。子孫か?」
「はい!私の名はウォル・エルディラン。エルディラン様の血を継ぐものです!」
「そうか、あの血は絶えていなかったか。よく見るとお前はオーディスに似ているな」
「勿体なきお言葉です!」
「それにそこの二人は俺の民だな。・・・・ミルガンナの子孫、俺の子孫か」
「はい!私達はミルガンナ様の子孫であります!!貴方様の事をずっとお待ちしておりましたっ」
「ミルガンナはどうした?」
「今がどうかは分かりませんがエルディラン様の長男ディオ様と共にエルディラン様を探しに行ったと話を聞いております!」
「そうか、あぁミルガンナの気配を感じる。まだ生きているのだな・・・・最後に会いたかったがもう別れの時間だ」
ヴィラスは言葉を聞いてどこか遠くを見ると表情を和らげ慈愛に満ちた顔をすると、残念そうに笑った。その言葉を聞いてみんなは息を飲み涙を止めた。
「別れとはどういうことでしょうか・・・・」
「そのままの意味だ。クーアのおかげで魂はこちらに戻って来れたが俺はもう消耗し過ぎてしまった。このままこの世に残れるほどの力は無いのだ」
「そんなっ」
「クーア、頼む何とか出来ないのか!?
「ヴィラス様!」
「クーアにも無理だ。魂の再生は星の領域なのだ。どんなに力を持ち浄化の力を持とうと魂を再生させる力は無いのだ」
みんな助けを求める目で俺を見る。・・・・確かにヴィラスの言う通りだ。俺は汚染を浄化できるし、人の傷程度なら再生できるけど魂を再生させる力は無い。
「もし魂を再生できたとして俺の器は朽ちてしまった」
「体の再生なら!」
「竜種の身体は星が作り出すもの、だから俺には竜種の身体を作れないんだ」
「・・・・」
竜種と言うのは星から作り出した特別な存在だ。身体は魔力の身体と肉体で構成され一つ一つが星の魔法で作られ世界を守るための強大な力をその身に宿す。そんなことが出来るのは星しか無理だ。だから、俺が出来るのは魂をこっちの世界に戻してあげる事だけ。身体を治すことも魂を癒すことも出来ないんだ。
「民達よ、そう悲しい顔をするな。俺はただ星へと還るだけだ」
「やっとお会いできたのに」
「まだ感謝を伝えきれていないのです!」
何も出来る事が無いと知ったみんなは悲痛を浮かべながらヴィラスへと叫ぶ。
「俺には」
「どうした」
「俺にはヴィラスを治すことは出来ないけど、やれることはあるんだよ!!」
「クーア何をするつもりだ?」
「みんな任せて、ここでお別れなんかにはさせないから!」
確かに俺に出来る事は無いよ。だけど、星に出来る事はあるんだ。そして俺には星に干渉する力が有る!大丈夫、最初っからお別れなんかにさせるつもりは無いんだから!俺は浮きあがり全部の魔力を開放しヴィラスと星を繋ぐ光の一筋の道を作り上げる。膨大な魔力の開放によって周囲は俺の魔力に染まり、まるで星の海のように姿を変える。
「これはっ」
「あんなに頑張ったのに、ご褒美が何も無いなんて酷過ぎるよ!だから、俺がご褒美をあげる!!みんな魔力を頂戴!全力で行くからね!」
「クーア、分かった!俺の魔力を」
「好きなだけ使え!」
「お願いね、クーア!」
「うむ!」
「この身は全て竜種様達の物です!」
俺はみんなから魔力を受け取り、星へと意識を同調させ干渉していく。今までは大地の記憶を読み取る程度しか出来ていなかったけど、今回はもっと奥底、星の力の根元へと力を伸ばしていく。世界の理に触れさせないよう星が抵抗してくるが、そんなのぶち破る!
「まさか、クーア!」
「俺には何も出来ないけど星の力を使えばヴィラスを元通りに出来るでしょっ」
「それは、世界の理に干渉することだぞ!」
「世界の理を捻じ曲げたりなんかしないよ。だけど、少し融通して貰うだけ!」
俺は龍であり竜種である。星から生まれ世界の理を守り世界を守る者。だから、世界の理を捻じ曲げたりは出来ないけど、理の中で工夫すれば良いだけ。魂は本来星へと還り傷を癒しまた生まれなおす。その順番を早めて貰うんだ。勿論ヴィラスの傷を癒すことを最優先にするけれど、他の魂に影響が出ないようにする。そして、肉体は星の力で作って貰うしか無いから俺が魔力を供給してあげればいい。そうすれば直ぐにヴィラスはこの世に帰って来られる!
「そんなの星が許す訳が無い!」
「ううん、許してくれるよ。というか絶対に許してもらうから!!!」
星に干渉するにはまだ魔力が足らない!何かを特別扱いして輪廻の順番を変えるなんて公平な星が許さないだろうけど、ヴィラスは星の危機である汚染された魔力と戦って苦しんで、永い間魂を使って世界を守ってきたんだ。そんなヴィラスは少しぐらい報われても良い筈でしょ!
ねぇ!同調してるんだから聞こえているんでしょ!!!
返答は帰って来ないが俺の魔力への抵抗が無くなり、俺の魔法へ魔力が供給され始めた。
これは・・・・良いってことだよね?なら遠慮なく!
「ヴィラス、良いってよ」
「そんな・・・・星が許すなんて」
「これですぐに体が出来て魂は癒えるだろうから、少しだけいってらっしゃい」
「こんな事をするなんてお前は凄いな。だが、本当にありがとう」
ふふ~ん、偉い子にはご褒美です!俺はヴィラスの魂を星へと還すため俺の魔法で新しい命を育む繭のように包み込みすぐに傷が癒えるように魂の休息所に送ってあげる。魔力が尽き疲労困憊な様子のみんなを振り返りながら
「これで、ヴィラスはすぐに帰って来れるよ。年数だと20年ぐらいかな?」
「20年か」
「俺達が待たせてしまった時間と比べれば短いな」
「えぇ、未来が分かっているなんて素敵ね」
「寂しいが20年後に会えるとなれば、心が躍ってしまうな」
「確かに、ちょっと寂しいよね」
20年なんてあっという間だろうけど折角会えたのに暫く会えないなんて寂しいよね。そうだ!俺はまだ同調がしている星の力と俺の魔力を使ってヴィラスの姿を模倣した小さな竜の形を作り上げる。魔法スナネコちゃんとかお手伝いさんを作ったらからこの作業は慣れたものだよ!星から怒られるかと思ったけど、別に大丈夫そうだね。
「ん?何を作ってるんだ?」
「竜?」
「まるでヴィラス様みたいね」
あとは、星で休んでいるヴィラスの意思を繋げてあげれば~ほら完成!
「ん?俺は星の中で眠った筈じゃ」
「寂しいから意識だけ繋げてみた!」
「「「「「「は?」」」」」」
ただ寝てるだけじゃつまらないでしょ?せっかく起きたんだし外の世界を見せてあげよう!その体なら魂は星の中に居ながら外を見れるよっ
「またお前はとんでもない事してるな・・・・」
頑張った子には当然ご褒美をあげないとねっ!はい、俺からの贈り物だよ受け取ってねっ
読んで頂きありがとうございます!
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