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俺、本気を出してやるかねっ!!!

 みんなのおかげで何とかヴィラスの元へ辿り着けた俺は、体を守っている魔法を解いてただヴィラスの浄化へと集中する。今の俺は無防備で斬りつけられれば忽ち汚染を受け激痛が走るだろうけど、みんなが守ってくれるからきっと大丈夫だ。


 だから、俺はただ浄化に集中すれば良いだけ!!!


 後の事なんて考えないで、今はただ全ての魔力と俺の持つ技術をヴィラスに注ぎ込むのだ。浄化の力を含んだ大量の水を作り出しヴィラスの巨体を包み込み、汚染を少しづつ確実に浄化していく。あまりに大量の汚染された魔力に俺の水が汚染されそうになるが、そうはさせないぞ~!


 いつもなら俺の全力を出した浄化の水に浸せばどんなものだって一瞬で浄化できるのに、こっちを汚染しようとするなんて生意気だ。


 浄化の力を強め全てを同時に浄化することは出来ないと感じた俺は、まずは汚染が薄い場所に力を集めていく。一番汚染が薄いのはお腹か~それでもかなりの量だね。よ~し、少しずつ着実に~・・・・なに!?


イタイ 助けて どうして なんで 帰りたい 寒い 死にたくない


 少しずつ浄化を進めていくと、突然頭が割れるような怨嗟と悲鳴の轟音が鳴り響く。その叫びは一人や二人なんてものじゃなく、何千人何万人にも重なり大地を揺るがし心を蝕む苦痛の叫び。何時も汚染を浄化している時には聞こえないこの叫びの正体は・・・・


「汚染された魔力に囚われた人達の叫びだね。しかも、人間以外も沢山この魔力に囚われてる・・・・」


 頭の中で叫んでいる声は人間達の声が大きいけど、中には動物達の鳴き声植物達の悲鳴も聞こえる。この汚染された魔力を生み出した魔法は襲って取り込んだ命を全て捕えてしまうんだ。そして、捕まった魂を徐々に消費することによって力を増し消費された魂は弱り消滅する。それは存在の消滅を意味するものだ。


「それは・・・・悲し過ぎるよね。大丈夫、みんなちゃんと浄化して星に帰してあげるからね」


 魂は循環するものだ。死んだ魂は星でその傷を癒しまた新たな命としてこの世に生まれ、また死するという流れを繰り返す。つまり、何万年何千年前に生まれた存在はこの世界を何度も何度も生まれかわりその魂に記録を残す。その積み重ねが消えてしまうなんて、残酷だ。


「みんなも助けてヴィラスも助けてあげる。だから、ちょっと待っててね!」


 絶え間なく頭に響く悲鳴や怒号、泣き声に叫び声に頭が割れそうになったけど、魂たちを救わないといけないという心の底から湧き出る使命感に突き動かされ浄化の力を強めて少しずつ浄化を進めていく。浄化できた部分は黒いヘドロのような物が剥がれ、ヴィラスが持つ本来の色へと戻っていく。それに伴い外に溢れる汚染された魔力も減っていく。


「よし、このまま!次は翼だねっ」


 竜にとって誇りであり象徴でもある大きく屈強な翼。この翼で羽ばたかせ雄大な空を己が道を行く姿はきっと綺麗で迫力があって見る人を驚かせ空への憧れを持たせただろうね。だけど、今は見る影もなく太く黒い骨に黒いヘドロが引っ掛かっているだけ。


 長年汚染された魔力に蝕まれていたから体の芯である骨まで汚染されちゃったんだね・・・・大丈夫、今綺麗にしてあげるっ


 まるで枯れた大地に水が浸透するかのように、体の隅々まで沁み込んでしまった汚染された魔力を少しずつ体から浮かせ元の状態へと戻してあげる。怪我はまだ治してあげれるほど余裕が無いけど、これが終わったら全部治してあげるからね。


「次は尻尾!」


 お話を聞くとヴィラスの尻尾は逞しく先端は全てを斬り裂く宝剣のような輝きを放っていたと聞くけど、今はその見る影も無い。戦いで傷を負ったとは聞いてたけど、痛々しいね・・・・


「前足・・・・大きな体なのに少し小さくて可愛いねっ」


 星から生まれ落ちた同じ竜種であるけれど、俺は龍でヴィラスは竜。体のつくりが全く違うけれど、小さな手は俺に似ているねっ。身体が大きいのに手は少しだけ小さくて、それが少し可愛く思えちゃう。


死にたくない 痛い 助けて 帰りたい どうしてこんな事に


 うん、そうだね。今みんなを解放してあげるから少し待っててね。浄化を進めている最中も絶え間なく声は聞こえてくる。そんな声に背中を押されながら浄化を進めていき、汚染が薄い場所は全て浄化し終え、元の肉体と鱗が色を取り戻していく。うわ~凄い!まるで燃え盛る紅蓮の炎のような色をしていてたんだね!この調子ならそこまで時間が掛からないかも!魔物達と戦っているみんなが心配だから早く終わらせないとねっ力の伝わり方を考えると濃い場所は直接触った方が良さそうだね。


さぁどんどん行こうかっあれ?うわっ痛い!!!


 汚染が薄い場所は終わったので次は濃く沁みついてしまっている部分を浄化をしようと、魔力と意識を向け触った瞬間に汚染された魔力達がまるで意思を持つかのように無数の触手を伸ばしてきた。決して浄化が上手く進んでいたから油断していた訳じゃない。だけど、浄化をすることに専念していた俺にはどうする事も出来ず、触れられた場所は今まで感じたことが無い激痛を俺にもたらしながら汚染の魔力の中に引き摺り込まれてしまった。驚きながらも引き摺り込まれる一瞬、みんなの声が聞こえた気がした。


 このままじゃ浄化することも出来ないから俺の周りに浄化の水のバリアを作ってと。周りを見渡してみても全て黒く汚れた魔力に包まれ何も見えない。


「ん~体の中に取り込まれた訳じゃなさそうだね・・・・」


 ヴィラスの体の中に引き摺り込まれちゃったのかと思ったけど、体の中なら少しは物体があるはず。だけどこの中は汚染された魔力しか感じない。ということは・・・・


「魔力として汚染された魔力に取り込まれちゃった感じだね~俺の方が強いから姿形は残ってるけど、このままずっとこの中に居たらやがて吸収されちゃうだろうね」


 それは良くないし、俺にはこの魔力を浄化するって言う役目があるんだ!さっとさとこんな魔力は浄化しないとねっ。それに、取り込んだのは失敗だと思うよ?魔力の中に入ったってことは、それだけこの汚染された魔力の中心に近くなったってことだ。肉体という守る壁を失ったのであれば、魔法が効きやすい筈。じゃあ、ちゃちゃっと浄化しちゃおう!


「・・・し・・・い」

「ん?何か聞こえた」


 浄化の魔法をもう一度使おうとしたその時、常に頭に響いてい絶叫とは違う強い意志を感じる声が聞こえた気がした。その声を辿ろうとした時今度はハッキリと


「欲しい」

「・・・・何が欲しいの?」

「竜が欲しい、力が欲しい、その力を我に、全ては我の物に!!」


 声が聞こえた瞬間ただの黒く汚い魔力だった周囲の魔力が顔のようなものをいくつも作り出し、俺の水のバリアを壊そうと圧を掛けてくる。そして、俺を欲でまみれた目で見ながら繰り返し叫ぶ。


「その力を我に、世界を支配する力を我に!」

「・・・・なるほどね」


 俺は下卑た笑みを浮かべながら俺が欲しいと叫び続ける顔達を冷えた目で睨みつける。その顔を見てると忘れていた村の人達の事を思い出すよ。力に囚われ自分の利益だけを求め相手を貶める悪意の顔。痛みを感じたのもあれ以来だし、本当にムカムカするな。


「竜種の力なんて人間には扱えないよ。ま、こんなこと言っても無駄だろうけど」

「欲しい、欲しい、欲しい」


 最初はこの汚染された魔力に囚われている魂の声かと思ったけど、これは魔法を発動した人の意思が残っているだけだね。魔法はイメージと意志の力、強い意思があればあるほどその力は強大になりその人が思った通りの現象が起きる。ウォル達から聞いたけど、確かこの汚染された魔力を作り出した魔法を使った人は竜種の力を求めたらしいね。だから、触った瞬間竜種である俺に反応したんだ。


「魂ならどんなに嫌でムカついて人々を苦しめ殺しウォル達を長年苦しめた原因だとしても浄化して星に帰してあげるつもりだったけど、意志だけだったら別に消しちゃっても良いね」


 魂は星の力となり星が生き続けるには必要な物だから仕方なく浄化してあげるつもりだったけど、意志だけなら消しちゃっていいよね。勿論他の全ての魂は浄化してあげるよ。よく分からないけど、それが俺の役目だって感じるからね。


「それじゃあ、俺の全力を味わってね!!!!」


 こんな多くの人を苦しめ傷つけ魂を汚し大地を汚し、今を生きる者達の害となる魔法なんて全部ぜーんぶ俺が消してやるんだから!ウォル達、この国の人達の長年の怒りを食らっちゃえ!!!俺は全ての魔力を開放し全てを洗い流し元の場所へと帰らせる大波を作り出し汚染された魔力を次々に飲み込んで行く。


「水は生命が誕生する場所だけど、逆に生命を還す場所でもあるんだ。さぁ、みんなこんな場所から解放してあげるよ!」


 次々と汚染された魔力は水へと消えていき、頭に響く声も順調に減っていく。少しの抵抗を見せているが荒ぶる水と浄化の力にやがて飲まれていく。最後まで力強く抵抗をしているのは、あの顔達だ。


「お前なんかにあげる力は無いよ!そんな邪悪な意思なんて消えて無くなっちゃえっ」

「あああああああ 消える やだ 力が欲しい 俺の力!!!」

「だから!お前の力なんかじゃないよ!」


 俺は特別に水の光線をぶつけると苦痛の表情を浮かべる顔達。勝手な事を言うから威力を強めてやると徐々に崩壊していき塵となって消え残ったのは、見渡す限り一面に広がる静かな水面に浮かぶヴィラスの亡骸。ここはヴィラスの中に住み着いた魔力の中の世界、つまりはヴィラスの内側、魂や心が宿る世界だ。汚染に邪魔をされて見えず聞こえなかったけど汚染を全て浄化した今ならきっと・・・・・


「よう、チビッ子」


 突然背後から声がして振り返ってみるとそこには、屈強な体に燃えたぎる太陽のような髪に稲妻のように緑に輝くメッシュ、そして白風の一族が着ている動きやく豪華で華やかな民族衣装に身を包んだ眼光は鋭く雄々しい顔で口角を上げ、キリッとした笑顔を浮かべている健康的な日焼けをした男が立っていた。


「初めまして、俺はクーア!やっと会えたね」

読んで頂きありがとうございます!

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