今、助けるからね!
「この火山に溜まるマグマの奥底にヴィラス様がいらっしゃるのか・・・・」
「場所が分かったのは良いが、どうやって辿り着けば良いんだ?マグマになんか潜れないだろ?」
「うむ・・・・我ら白風の一族でもそこまでの耐性は無いな」
「どこかに入るための入り口があるんじゃないのかしら?」
「そのような場所は今まで聞いたことが無いが・・・・魔法で隠されているのかもしれない。里の皆に探すよう伝達しよう」
確かにみんなの言う通り普通の人間じゃマグマの中に潜ったら一瞬で焼け死んじゃうだろうね。この目に見えるほど高密度かつ高濃度の魔力からして、町の人達を集めてマグマに魔法を掛けたとしても、ヴィラスに辿り着くための道を作ることは出来ないだろうね。俺が探してみた感じだとレイランやディオクスが言うようなヴィラスに辿り着くための秘密の道みたいなのは見つけられなかった。だけど、みんなには俺がいるでしょ?
「ううん、ディオクスそれはしなくて良いよ~」
「何故でしょうか?」
「どれだけ探しても見つからないからだね。ヴィラスに辿り着くには絶対にこのマグマを通って行かないと駄目なんだ」
「それでは・・・・」
「大丈夫、俺が居るでしょっ」
「クーア一体何をするつもりなんだ?」
「物凄く簡単な事だよ。水の障壁を張ってマグマの中を突き進むんだ!準備は良いかな?」
先に進んだらすぐに地上に戻ってくることは出来ないよ。いくら俺でも休憩を挟まずに何度も何度もマグマの中を突き進むことは出来ないからね。
「クーア、そんなことをしたら魔力が・・・・」
「大丈夫だよ~俺の魔力は沢山あるからね。でも一度に連れて行けるのはこの人数が限界だね」
「戦士達を呼ぶことは出来ないか・・・・畏まりました。私は常に戦えるよう装備は整えておりますので何時でも行けます」
「私達は装備を変えた方が良さそうね。クーア、大仕事をする前で悪いのだけど私達の装備を出してくれないかしら」
「はーい」
みんなは旅人のような格好から、レイランは王都で魔法師団の制服へと着替え首元からは大きなサファイアの首飾りをつけウォルはウォルのお父さんが来ていたような白く金色の刺繍が入ったゆとりのあるズボンに白に赤色の刺繍が入った服を着て、いかにも皇子様って感じだ。アルベルドは太陽の光を反射して輝く鎧を身に着け、シャールクは黒く体の動きを阻害しないゆとりのある服へと着替えた。
「うわ~ウォル皇子様みたい~」
「一応皇子だからな」
「でも、それで戦えるの?」
「あぁ王族は常に戦えるように正装は戦闘服になっているんだ。魔法も掛けてあるから防御力もそこらの鎧より高いんだぞ」
「そうなんだ~」
「この服達が俺達が持ってる防具の中で一番なんだ。普段は目立つから着ないけどな」
「じゃあ準備は良いってことだよね?」
「おう」
「えぇ」
「勿論です」
「それじゃあ、行くよ~!」
俺はみんなを包んでいる水の膜に魔力を大量に送り、マグマに負けないように強化するとみんなを水の膜ごと浮かび上がらせ火口からマグマへの中へと入って行った。思っていた以上の火の魔力に水の膜が押されそうになるけど、頑張って魔力を繰り続け消費を抑えられるよう水の膜で魔力が循環するように魔法を変えていく。
「凄いわね・・・・」
「本当にマグマの中に入ってるのか・・・・」
「クーア、大丈夫か?魔力を送ろうか?」
「だい・・・・じょうぶ!!」
マグマの中に入るなんて初めての事だから適した魔法が作れてなかっただけ!火の魔力を吸収して水の魔力に変換すればもっと楽になるはず!だけど、火の魔力が強すぎて頭が痛い・・・・でも頑張らないと!
「辛そうね・・・・」
「俺達は何も出来ないのか・・・・」
「前にやった地面に潜り込む魔法では無理なのか?」
「あれはね・・・・グッ」
もう話している余裕も無い!あの魔法は自分達が進む先に新たな水路を作り出しながらその道を通るって魔法なんだけど、このマグマの中に水の道なんて作り出せないしもし出来たとしても行き先に必ず水を作り出さなきゃいけないから魔力の消費が多き過ぎるんだよね。だから、水で周囲を守って突き進む方が安全だし魔力の消費も少ないんだよね~だけど、マシなだけで普通辛いけどね!!
「話す余裕も無さそうね」
「なにか・・・・そうだ水の石。前にお守りとして買ったけどこれなら水の魔力が宿っているし少しはマシになると良いんだが」
「俺も水の装飾品を付けているな。クーアに貸そう」
「なら私のサファイアも良さそうね」
「うむ、俺のも渡そう」
「少しでも力になるのであれば」
みんなは俺に水の力が宿っている装飾品や宝石を俺に身に着けてくれた。僅かな力だけど、みんなの思いが本当に嬉しいよ!みんなのことはしっかり守ってヴィラスの元まで連れて行ってあげるからね。そして、必ずヴィラスを助けるんだから!
マグマの奥の奥へと突き進む俺達。周囲はマグマに囲まれて俺達が今何処に居るかは見た目からじゃ分からないけど、順調に進んで今は半分ぐらいかな?このペースなら魔力も何とか持ちそうだね。俺の役目はみんなをヴィラスの元に連れて行くだけじゃなくてヴィラスを治すこともしないといけないんだから魔力は残しておかないと!
「マグマの色が黒くなってきたな・・・・」
「この感じ・・・・もしかして汚染された魔力?」
「うん・・・・ヴィラスの所から汚染された魔力が漏れ出してマグマと少し混ざっちゃったみたい」
「なんと」
「だけどマグマに宿ってる魔力が常に焼き尽くし続けているから、地上には影響が出てないみたいだね。あの噴火を起こすのも多分だけど、この汚染された魔力を焼くためだろうね」
「そういう仕組みだったのか」
「待てよ?汚染された魔力を焼き尽くすためにあの噴火が起きているのなら、周囲に汚染された魔力があるってことは・・・・」
「あ」
ヤバい!段々火の魔力が強くなってる!流石の俺でもあの噴火をまともに食らうのは不味いって!ちょっとヴィラス!?俺達が来てるのを感じて無いの!?
「いそげぇえええええええ」
「うお~クーア頑張れ!!」
「出来る!クーアなら出来るぞっ」
「魔力を上げるから頑張って!」
噴火の予兆を感じた俺は慌てて移動するスピードを速めて、奥へと潜っていく。今からマグマの外に出るのは無理だし、あと少しでヴィラスの元に到着するんだから前に進んだ方が良い!!はやくはやく!!
「マグマが・・・・」
「うお~あと少し~!!!」
マグマが急速に動き出したことにディオクスが唖然とするような声を出したが、そんなの気にしてられないし中に居る人達が吹き飛ばされる心配もしてられない!中にいるみんなが姿勢を崩し倒れてしまう程スピードを出すと噴火する瞬間、何とかヴィラスのいる洞窟にへと駆け込むように飛び入り難を逃れることは出来た。
「危なかった~」
「間に合ったのね」
「ウォル、悪いが上からどいてくれ」
「あ、すまない」
倒れ込むように到着したからみんな体が重なってごちゃごちゃになっちゃってる。ごめんね?でも、そうしないと間に合わなかったんだよ!
「着いたのか?」
「うん!明かりをつけるね」
みんなは立ち上がると周囲を見渡すが暗闇に包まれ、一つも先も見えないので俺は光の魔法で周囲を照らしてあげるとそこは地獄のような光景が広がっていた。
「これは・・・・」
「酷い」
「何なんだこれは」
「あいつらは魔物か?」
真っ暗闇の洞窟の中には、人がドロドロに溶けたような姿をした魔物が無数に湧いていた。その中には武器や鎧を纏っている姿のような奴もいて、まるで人間が魔獣になったみたいだ。そしてその無数の魔物の先には黒い魔力を放っている大きく翼のある生き物が横たわっている。あれは・・・・
「ヴィラス様!!!!」
「なんてお姿に・・・・」
「あれでは、もう・・・・」
「今直ぐにお助けに参ります!!!」
「駄目だよ」
ディオクスは体の大半が骨と化し、肉は爛れ話に聞いていた光輝く美しい鱗が光を失っている姿を見て一目散に駆け寄ろうとしたがそれを俺は魔法を使って止めた。
「クーア様、お願いです行かせてください!」
「落ち着いて、みんなもそんな悲しそうな顔をしないで」
ウォル、レイラン、シャールク、アルベルドもヴィラスの悲惨な姿をみて悲痛な表情を浮かべ怒りと悲しみで飲まれそうだ。確かに見た目は泣いちゃいそうなほど酷いけど・・・・
「大丈夫、ヴィラスはちゃんと生きてるから。しっかりとヴィラスの魂を感じるからまだ死んで無いし汚染に負けて無いよ。助けに行きたい気持ちは分かるけど、この洞窟は汚染された魔力で満たされていて水の膜から出たら人間じゃ即死しちゃうよ」
ヴィラスの遺骸からは目に見えるほどの汚染された魔力が噴き出しているんだ。人間があの魔力を受けたら生きていられるはずがない。
「それじゃあ何も出来ないのか!?」
「そんな!」
「そうだとしても、何もしない訳にはいかないだろ!」
「この身は竜様と国に捧げたものだ。死ぬ運命だとしてもっ」
「だから、落ち着いてってば。ヴィラスを救うためにみんなにはして欲しいことがあるんだ。聞いてくれる?」
「勿論だ!」
「何だってするわよ!」
「良かった。それじゃあ、みんなで協力してヴィラスを助けようね!」
やっと会えたね。今は会話が出来るような状態じゃ無いけどすぐに助けてあげるから!
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