俺、セレルに着いたよ!
俺達は固まった溶岩の大地を進み、段々ヴィレン山脈に近付いたことによって強くなっていた魔物達の襲撃が麓に近付いたことによってピタリと止まってしまった。大地の炎の勢いや溶岩達も治まり始め、危険の無い黒い大地を進んでいると奥から人影が見えた。
「誰か来るね~」
「うむ、この距離まで近づけば戦士達の活動範囲に入るからな」
「人の気配がしたから来たって訳か」
「先触れもせずに来ちゃったけど、大丈夫かしら」
「セレルまでは手紙が届きにくいからそこは大丈夫だろう。警戒している様だが、それはセレルまで来る人間が珍しい故にだから気にするな」
「こちらにはアルベルドが居るから大丈夫だろう」
堂々と俺達の真正面から歩いてくるセレルの戦士達。この距離からでも白風の一族の特徴である白い髪が日に照らされ良く見える。体格もアルベルドぐらい大きくて迫力がある。こちらを睨みつけるように進んできたが、アルベルドを見た瞬間警戒を和らげ駆け足でこっちに来た。
「アルベルドか!?」
「やっぱりアルベルドだ」
「ドロルとグラロか、久しぶりだな」
「おう、久しぶりだな!」
「なんだなんだ、帰ってくるなら手紙くらい出せよ~親父さんもお前のこと心配してたぞ」
どうやらこの二人の戦士はアルベルドの友達だったみたい。二人ともアルベルドと同じ黄色い目と白い髪で顔は似て無いけど白風の一族って本当に分かりやすくて似てるんだね。身に纏ってる銀色に輝き細かな装飾が彫ってある鎧は腰と脛当てそして胸にしか無く他は白い布が巻かれている。この暑さじゃ全身を覆った鎧は流石に無理だもんね~それにしても装飾が凄く綺麗だね~
アルベルドは砂漠を抜けるからローブと皮の防具しか着て無いけど、白風の一族の戦士達は耳や腰の鎧、首からも装飾品付けていてジャラジャラとしてるけど、すごく綺麗だし似合ってるね!アルベルドにも似合うと思うんだけど、何で何も付けて無いんだろう?
「いや~アルベルドが帰ってくるのは驚いたがいきなりどうしたんだ?お前だけじゃないみたいだし」
「初めまして、エルヴィラス魔法師団雫所属のレイランよ」
「どうも初めまして、シャールク・ベルべランだ」
「初めまして~クーアだよ!」
「初めましてアルベルドの友人殿、俺はエルヴィラス皇国第三皇子ウォル・エルヴィラスだ」
「皇子!?」
皇子と聞いた二人は凄く驚いてアルベルドを見ると、無言で頷くのでピシッと背筋を正し跪くと
「大変失礼しました。無礼をお詫び申し上げます。私は白風の一族のドロルです」
「同じく白風の一族グラロです。皇子様とは知らず大変失礼しました」
髪を後ろでまとめてるのがドロルで短髪なのがグラロだね!
「いや、気にしなくて構わない。皇子と言っても俺にはそんなに権力は無いからないつも通りにしてくれ」
「ですが・・・・」
「ウォルの言う通りにしておけ」
「・・・・分かりました。そうさせて頂きます」
「あぁそうしてくれ。取りあえず町まで案内して貰っても良いか?」
「は!」
二人は立ち上がり俺達を町まで案内してくれるみたい。二人は小さい頃のアルベルドを知ってるみたいだし、時間が有れば色々な事聞いてみたいな~
案内され少し歩いて丘を越えた先に、白いが純白では無く大地の柔らかさを含んだ色の石で作られた城壁が見えてきた。その城壁は山の麓のすぐそばにあり多くの建物を外から守るように立っている。あれが、アルベルドの故郷セレルだね!
「あれが、セレル・・・・話には聞いていたが綺麗だな」
「あの白い石は何を使ってるのかしら?」
「山で採れた石灰石を使っている」
「石灰石って簡単に壊せるほど柔らかいんじゃないか?城壁には不向きだと思うんだが」
「あぁ、石灰石単体では脆く建築には不向きだが砕き山で採れる土と溶岩を混ぜると強度が増すんだ」
「へ~そんな手法が」
「一応言っておくが、この方法はこの土地だからこそ出来る事であり技法を学んでも王都で再現するのは不可能だからな?」
「そうだよな~残念」
「石なら沢山ありますからそれを持ち帰って頂くことは出来ますよ。重いですけど」
石とか技法とか難しい事は分からないけど、あの石の色はとても好きな色なんだよね~石は買えるみたいだし、帰る時は沢山買って帰ろうかな~
魔物に襲われる事無く城壁まで付いた俺達は、ここでもアルベルドの知り合いの門番さんに中に入れて貰い町の中に入った。町の中でも暑いのは変わらないけど、温かみと柔らかさのある石で作られた建物に色とりどりに塗られた旗や木の板、綺麗な糸で編まれたよく分からない模様など派手で賑やかな町に俺はテンション爆上がりだ!
そして何より!
「おぉ~!綺麗!色が沢山だ~!」
「本当に色とりどりね~見ているだけで楽しくなっちゃうわね」
「そうだな~うわ~あの編紐とか絶対王都で売ったら人気なるぞ」
「殆どセレルの町並みについては知らなかったが、まさかこんな華やか町だったのか」
「それに、アルベルドが沢山居るね~!」
「なんだそれは・・・・白髪と黄色の目が同じなだけだろ」
他所から来る人が珍しいようで俺達を見てるいる町の人達全員が、白髪と黄色い瞳だからみんなアルベルドとそっくり!何処を見ても同じ色をしているから何だかすっごく面白いな~
笑いながら俺達は町を見ていると、頭一つ抜けた大きさの人が集まっている人混みを掻き分けて俺達の元へ来た。その人は鋭い眼光に引き締められた口、銀の鎧と装飾は俺達を案内した戦士達より華やかかつ細かくて、白い髪を編み込み編紐で結んでいる。見た目と周りの反応からして、偉い人なのかな~?なんかよく見ると、誰かに似ている気が・・・・
「父さん」
「父さん!?え、アルベルドのお父さんなの~?」
「こちらの方々はどなただ?」
「初めまして、アルベルドの父上殿。私は、エルヴィラス皇国第三皇子ウォル・エルヴィラスだ」
戦士さん達にしたように挨拶をしていくと、全く動じる事無く流れるように膝を付き頭を下げると
「これは大変失礼致しました。私はセレル戦士長であり町長のディオクスです。この度はこのような場所までようこそおいで下さりました。この町は僻地であるため豪華なおもてなしは出来ませんが、出来る限りのおもてなしをしましょう」
「今回は皇子としてでもあるがアルベルドの友人としても来ている。なので、そう畏まった態度はとらなくて良い」
「はっお心のままに、それで今回はどのような用件でしょうか?」
「・・・・ここでは少し人気が多すぎるので静かな場所で話せないか?」
「畏まりました、それではこちらへどうぞ」
アルベルドのお父さんディオクスはそういって立ち上がると俺達を町の奥へと案内してくれた。誰かに似てるな~とは思ってたけど言われてみれば目が鋭かったり、口を引き締めてる表情なんて、アルベルドにそっくりだ。
案内してくれた場所は本当に町の奥で大きな建物の裏を数歩歩けばヴィレン山脈があるほど山と近い場所だった。砂漠の家でよく見るような平屋だが、細かな彫りや飾られている布でこの建物が重要な場所だって分かるね。その建物の中に入り右の部屋に行くとそこはディオクスの仕事場らしく机と椅子が置いてあった。
「どうぞ、お掛けください」
「あぁ感謝する」
「それで、お話というのはどういう事でしょうか?我々白風の一族の力が必要なのであれば必ずお力になります」
「話というのは、ヴィラス様にまつわる話なのだ」
「ヴィラス様ですか?」
ヴィラスの名前を聞いたディオクスは眼光をより鋭くしながらウォルを見る。それに臆することなくウォルは堂々と話し続けた。
「実はヴィレン山脈にヴィラス様が安置されて居るのではないかという話を聞いたのだが、それは知っているだろうか?」
「・・・・ヴィレン山脈はヴィラス様と深く関わりのある場所故にそういった話が出ることは知っています」
「我々が聞いた話では、白風の一族がヴィレン山脈で何かを探しているということだったが・・・・単刀直入に言う。ヴィラス様を見つけたのか?」
「それを聞いてどうなさるつもりでしょうか。ヴィラス様はこの国を守りその体と魂に大きな傷を負いました。我々の神であり救世主でもあるヴィラス様に何かをなそうと言うのであれば、我々は王族・・・・いや国であろうとも敵とみなします」
今まで感じたことが無い程の圧を発しながら俺達を睨みつけるディオクス。傷ついてしまったヴィラスを守ることを決意してるようで、もし俺達がヴィラスに害をなそうとすれば一瞬で斬りかかってくるだろうね~でも、こういう態度をとるってことは多分だけどヴィラスの居所を知っているかもしれないね。
「我々は守護竜であるヴィラス様に害をなそうなど一切考えていない。その逆でヴィラス様を救いたいのだ」
「人の力はあまりにも貧弱過ぎる。偉大なる竜様を救うなど・・・・」
「もし、偉大なる竜へ届く力が有るとしたらどうする?」
「そんなもの、同じ竜種の方々ぐらいしか・・・・」
「ん~?俺の事呼んだ?」
「は?」
確かに人の力じゃ竜種にどうやったって届かないけど、同じ竜種なら話は別でしょ~?ヴィラスを助けられるなら助けたいし、一度会ってお話したいから俺頑張っちゃうよ!
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