俺、火の魔境を進むよ!
「あついぃぃぃぃいい」
「本当に凄い熱気ね、クーアが防御してくれなきゃ焼け死んでるわ」
「スピードは獣化した方が速いんだが絶対にここでは獣化出来ないな」
「歩みを止めるな焼かれるぞ」
俺達は周囲に水の膜を張りながら燃え盛る大地を全力で走り抜けていた。砂丘から見ているだけでも暑さを感じていたのに、燃え盛る大地に足を踏み入れた途端体を焼き尽くす程の熱気が俺達を襲う。何とか水の膜で暑さを和らげてはいるけど、灼熱なのには変わりない。
「ごめんね~もっと涼しく出来れば良いんだけどこれが限界なの~」
「クーアは水路を通しながら水の膜も張っているんだから仕方ない」
「あぁあるだけで有り難いぜ」
「私達の魔力の消費も抑えられるしね」
「うむ、無しと比べるとこの中が天国に思えるぞ」
あまりにも多くの火の魔力が大地と空気中に漂っている所為で水の魔法の制御と発動がただでさえ難しいというのに、さらに大地が含む水の魔力の量が少なすぎるため魔法が安定しないのだ。俺達魔法生物は環境、つまりは大地や空気中に含まれる魔力の属性に大きく左右されるからここは俺と相性最悪でこの中に居るだけで辛いのだ。
「この中にずっと居たら水の龍じゃなくて火の龍になりそうだよ」
「そうなのか?」
「ふむ、竜種ってそういう性質を持っているのか?」
「おいおい・・・・」
「二人共真面目に返さないの、クーアの冗談よ」
「ん?別に冗談じゃ無いよ」
「え!?」
凄く驚いた顔でレイランが俺を見てくるがその足は走りを止めていない。後ろを振り返るとシャールクも、目を見開いて俺を見ている。
「と言っても普通はならないけどね~魔法生物だったら大量の魔力を使えばその属性に染め上げることが出来るんだよ~」
「そうなの!?」
「レイランでも知らなかったのか」
「魔法生物を生み出すほどの魔力を持った人は本当に僅かだし、自然界で生み出された魔法生物と遭遇することも滅多にないからそこまで研究が進んでいないのよ。でも他の国と比べたら私達の国の研究は進んでいる方なのよ?」
「そうだったのか」
「何故優れているんだ?」
「エルディラン様とヴィラス様がまだ国にいらした時には精霊が沢山生まれたのよ。そのおかげで研究対象が身近に居た故に色々な事を研究できたらしいわ」
「なるほど」
「身近にいればそりゃ研究も捗るか」
「あの時代の精霊様達は今は居なくなってしまったからな・・・・残念だ」
精霊たちが居なくなってしまった理由も俺が弱っている理由と同じような要因だね~魔法生物は、強いては精霊達は自分達の元になった物を持っている。例えば、リオだったら魔力が豊かな俺が作った水、ガイアなら俺が蘇らせた魔力が豊富な大地だね。それが無くなってしまったから、精霊たちは消えてしまったのだ。他にも汚染された魔力の所為っていうのもあるけどね。
「あぁだがお二人が復活すれば精霊様達も戻るだろう」
「お話し中悪いが左の上空にお客さんだ!」
話している間も全く歩みを緩める事無く走り続けていたが、俺達より早い魔物達は山ほど居る。そして、空中にも俺達を狙う影が現れた。
「火を纏っているのか」
「大きさ的に鷲ね」
「此処に湧く魔物だ。火の羽を飛ばしてくるぞ気を付けろ」
「こっちの攻撃は膜をすり抜けるようにしておくね~相手のも少しは防御できるけど完全には無理~」
俺達の周囲には水の膜を張っているので、攻撃が透過するように調整すると真っ先に動いたのはシャールクだ。走りながら弓を構え背中に背負った矢をつがえ放った。矢は水の膜を通り抜け真っ直ぐ火の鷲に届くと思ったが、水の膜を通り抜けた瞬間火を上げながら消滅してしまった。
「クソっ」
燃えてしまった矢を見て驚きながらも悪態をつくシャールク。それを見てレイランは風の矢を作り出そうとしたが
「火の魔力が邪魔過ぎるわ!」
「ここでは火の魔力に耐性か親和性がある魔力しか使えない!」
「それならっ」
風の矢を作るのを止めるとレイランは周囲に石礫を6つ作り出し火の鳥へと放つと同時に雷の矢を作り出したシャールクも同時に攻撃する。雷の矢は同時に放たれた石礫たちを置き去りにし先に火の鷲へと到達したが、ふわりと避けられてしまった。避けた鷲を追うように石礫達が襲い掛かるが、雷のように放たれた矢を避ける身体能力をもってすれば遅い石礫など恐れるに足りない。
「もう、大きな体をしている癖に速いわね!」
「なら、数を増やすまで」
シャールクは雷の矢を複数作り出そうとすると、アルベルドから強烈な魔法の力が感じた。
「ちょっ!アルベルド!?」
「なるほど、合わせる」
レイランは強力な魔法を発動しようとしているアルベルドに驚き、シャールクはアルベルドの意図が分かった様で複数の雷の矢を作るのを止めると、一本の雷を纏わせた矢を作り出した。そして、アルベルドは勢い良く風を纏わせた剣を火の鷲に向かって一閃すると全てを吹き飛ばす程の猛烈な突風と風の刃が放たれた。そして、それに合わせるようにシャールクは矢を放つと矢は風と混ざるように消え嵐のように雷が奔る風となり火の鷲へと襲い掛かる。
「流石だな」
「大技過ぎるでしょ・・・・」
火の鷲は風を押し返そうと羽を羽ばたかせ火炎を巻き起こしたが、それも敵わず雷が奔る風へと姿を消した。点で狙う矢や石礫と違い広範囲による突風は避けようがない。
「この土地では小規模の魔法は使いづらい。思い切って大規模な魔法を使った方が体力の温存になる。先を急ぐぞ」
「魔力の温存は・・・・クーアがやってくれてるから大丈夫ね」
「魔法はまだ上手く使えない、魔力が足りなくなりそうな時は俺の魔力を使ってくれ」
「木の矢はこの中じゃ使い物にならねーな」
アルベルドは大技を使った後だというに何一つ疲れた様子を見せない。細かな魔法を使うのが苦手みたいだし、そんな事に集中するなら大技をさっさと出して解決する方が効率が良いのかもね。シャールクは、魔力を節約するために木の矢に魔法を纏わせることをよくやるけど、この環境だとそれが出来なくて嫌そうな顔をしている。
「土属性の魔法じゃ空を飛ぶ相手じゃ相性が悪いわ。だから、空中は二人に任せて地上を担当するわね」
「向かってくる奴は倒さなければならないが、排除する必要が無い魔物であれば全て無視で行こう」
「了解」
走りながら役割を決めた俺達は役割に適した順列に整える。俺も魔法で援護してあげれれば良いんだけど、ちょっとその余裕はない。余裕が無ければ、リオとかを呼んで手伝って貰えば良いんだろうけど、魔法生物でおれより魔力の体である精霊はこの場所との相性が俺以上に最悪なんだよね~だから、俺一人で頑張るしか無いのだ。
「右前方地面が割れそうだ、気を付けろ」
「分かった」
「本当に忙しない大地だな」
アルベルドが注意した方から俺達を軽く越える火柱が上がり、シャールクは呆れ顔だ。走り始めてからまだ一時間くらいしか経っていないというのに、火柱が上がるというあり得ない状況を見慣れてしまう程沢山経験したおかげで火柱への対処は慣れてしまった。この大地は決して休むことを知らず常に動き燃え盛り躍動している。大地が盛んなのは良い事なんだけどね~・・・・炎の大地じゃ無ければの話だけどね。
「アルベルド、ここは昔からこんな感じなのか?」
「あぁ、規模や炎の強さなどは年々増してはいるが俺が幼い頃からそうだな」
「セレルは今でも活動する火山であるヴィレン山脈にある事は知っているけど、火山地帯だけが原因では無いわよね」
「ヴィラス様の魔力が満ちているんじゃないか?」
「クーア、どうなんだ?」
「うえ~?ヴィラスの魔力は少し感じるけど、どちらかというと大地の属性が何かの要因で変わった感じだからヴィラスの魔力がこの大地に満ちている訳じゃ無いよ~」
恐らくだけどこれは竜種が居たことで、環境が改変されてしまった事が原因だと思うよ~竜種はただ居るだけで、周囲に影響を及ぼすからね~
「その要因というのがヴィラス様か」
「だと思うよ~」
ここまで広範囲に影響が出ているってことは、ヴィラスは話で聞いていた通り強大な竜だったみたいだね~自分が好きな環境を作り出すのは分かるけど、ここまで暑くしなくて良いと思うな!!!
読んで頂きありがとうございます!
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