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俺、セレルに向けて出発するよ!

 クーアの圧倒的な魔力とその技量によって長年悩まされていた水と土地の問題はあっという間に解決へと向かっていた。シャールクが町を周り問題が無いかを調べ、ウォルは町の今後を町長と話し合いアルベルドは魔物達と食料問題を解決した。レイランは農作業に便利な魔法や生活に必要な魔法などを教えてネリアの町の復興は順調に進んでいる。もう町は大丈夫だと感じたウォル達は予定通り、セレルに向けて町を発つことにした。見送りは俺達の事情を知っている第三部隊の人達と町長さんだ。


「チビッ子、本当にありがとな!」

「偉大なる龍クーア様、この町を代表して改めてお礼を申し上げます。我が町から去ってしまうのは胸が裂けるほど悲しみですがクーア様の意向のままに、旅が成就することをこの町から願っております」

「もし、危険な目に遭ったら、副団長に守って貰えよ!」

「皇都に帰ったら美味しいもの沢山紹介してやるからな!」

「危険だと思ったら進まずに退くことも大事だからな」


 畏まった挨拶をする町長さんに対して第三部隊の人達は気安く笑顔で俺達の出発を見送ってくれている。もうみんなには龍だって事がバレているのに、こうやって気安く話しかけてくれるのは嬉しいよね!畏まった態度が嫌いって訳じゃ無いけど、ずっとそれだと少し疲れちゃう。


「それでは町長、あの件お願いします」

「分かりました。私達はヴィラス様とエルディラン様のおかげで存在しておりますから裏切るような真似は決してしません」

「セレルへの伝言は任されたぜ」

「コーネス、張り切るのは良いがやり過ぎないようにそして折角クーアが直した物を壊さないように注意するように」

「大丈夫ですって副団長!この町にある物って皇都に比べたら頑丈なものが多いですから!」

「そういう問題では無い!」

「あはは~隊長はよく物を壊すからな~」

「使わなくても良いから体裁として剣を持てって前は言われてたよな」

「あったなそんな時期も」

「あまりの怪力と頑丈さで毎日のように剣を折るから無くなったけどな」

「団長を除けば、国一番の怪力だからな」

「町長様、町が落ち着いた頃で大丈夫ですので岩壁の調査お願いしますね」

「えぇ、歴史的発見になる可能性がありますから人員は慎重に選びますが調査はさせて頂きます」

「竜の加護がありますように!」


 みんなそれぞれ伝えたい事を話した後俺達は手を振ってセレルへ続く砂漠の道を歩き出した。砂漠の道は、ネリアに来たまでの道のりと同じように足を取られるが今まで歩いて来たので順調に歩みを進めていく。普通なら暑さで体力を奪われてしまうが俺の魔法でみんなの周りを涼しくしているので心配はない。これなら、何事も問題なく進んで行けるかな~と思いながら数時間歩いていると前方に行き先を隠すような大きな砂丘が見えた。


「でっかい砂丘だな」

「先が見えない」

「今まで一番の大きさね」

「あの砂丘を越えた先にセレルに行くことが困難だと言われる理由がある」

「そうなの?」

「一体何があるんだ?」

「セレルは秘境の中の秘境だと言われるが、具体的な話が全然入ってこないからな~」

「どんな所なんだろうね~」


 アルベルドは大きな砂丘を指さし言う。それを聞いて他の三人は不思議そうな顔をしながらまた歩み始めた。よくみんなの話しからセレルは魔境だとか秘境だとか色々な話を聞くけれど、アルベルドの故郷みたいだし話を盛られているんじゃないかな~とか思いながらみんなと一緒に時間を掛けて砂丘を登り頂上に着き絶句してしまった。


「なんだこれ・・・・」

「嘘でしょ?」

「なるほどな・・・・セレルに行ったことがある人が居ない訳だ」


 砂丘の頂上から見た先は、今まで通って来た砂漠や俺達が出会った荒野、人を阻む魔境とも違う光景がそこに広がっていた。命を育てるという役割を否定したかのように広がる炭のように黒い大地に、眩しく離れていても熱気を感じさせる生き物を燃やす赤黒い炎。命を拒んだ大地であるのにも関わらず聳える細い木々は炎を纏い己を燃やしている。


「これが、セレルとネリアを分かつ火の魔境だ。大地は休むことなく燃え上がり、生き物を燃やし尽くし休むことすら許されない。この環境だけでも突破するは困難だが、魔獣達も襲い掛かってくる。ここから先は地獄だ、気を引き締めろ」


 この世のものとは思えない程の光景に唖然としていると、アルベルドがこの土地について教えてくれた。人間にはこの環境だけで辛いのに、この中で戦闘なんて無理だ。本当にアルベルドはこの魔境を小さい頃に抜けてきたの?


「こんなの人が突破できる訳ないじゃない」

「問題はまだある」

「まだあるのか?」

「む、あっちを見ろ」


 アルベルドが指を差した方向を見ると、黒い大地がひび割れると同時に地面から間欠泉のごとく赤黒い炎が噴き出した。その炎は空中で消える事無く雨のように地面へ降りかかり大地をまた燃やしていく。


「なんだあれ・・・・」

「この大地はよく炎が噴き出すんだ。予兆としては大地が揺れひび割れることだがこの予兆を逃すと炎をもろに食らう事になる気を付けろ」

「予兆を逃したら致命傷じゃねーか」

「最悪過ぎない?」

「炎ならまだマシだ。先に進むと溶岩が噴き出す場所があるからな」

「これ以上酷くなるのか」


 もし炎が当たってしまっても生きているならすぐに全回復してあげられるけど当たったら痛いからなるべく当たらないようにしないとね~

 

 アルベルドの説明を聞いてみんなげんなりとしているけど、俺も同じくげんなりだ。俺の属性は水と浄化が一番強いんだけど、水は火との相性が最悪なのだ。この地獄の火の魔境がこんな環境である理由はただ一つ、この大地には火の魔力が溢れかえる程充満しているのだ。そのせいで俺は弱体化を免れない。魔境のように魔法が使えない弱体化では無く存在そのものの弱体化なのだ。魔法の威力は落ち気分は冴えず体力が落ち、魔力の回復だって遅くなってしまう。こんな場所からすぐにでも逃げたいけど、俺達はこの先に用がある。


「クーア、さっきから元気が無いようだが大丈夫か?」

「大丈夫じゃない~火の魔力が強すぎる~」

「クーアは水属性だものね、火は苦手なのは当然ね」

「水なら火を消せそうなものなんだがな」

「弱い火なら水が勝つけど、あまりにも強い火は水を消してしまうのよ」

「少しの火なら大丈夫なんだけど、ここまで強いと無理~」


 飛んでいるのも嫌になってきたので、俺はウォルの背中に飛びついた。


「ここを抜ける間はクーアをおぶっていくことにしよう」

「う~ん、ごめんね~」

「仕方が無い事だ」

「クーアも嫌がる程の大地か・・・・アルベルドは一体どうやってこの大地を抜けてきたんだ?」

「子供の時に抜けてきたのよね?尋常じゃないわ」


 シャールクは首を傾げレイランはアルベルドを呆れ顔で見る。アルベルドは何てことも無い様子でこの大地の抜け方を話し始めた。


「この大地の抜け方は至極簡単で走り抜けることだ」

「走る?この大地を?焼け死んじゃうわよ」

「勿論普通に走る訳では無い。魔法を使い自分の体を強化し火を遮るために使える属性で全身に膜を張って走りぬけるのだ。この大地ではいつ地面から炎が噴き出すか分からない故に決して気を抜くな。それと、長居することによってじわじわと体力を削られてしまう。だから、走りなるべく早く抜けることが重要なんだ」

「そんなことが出来る人なんてごく僅かでしょ・・・・」


 この火の魔境を抜けるには常に魔法を発動する魔力と技量。そして一日中走ることが出来る体と体力に炎の予兆を感じ取る集中力に知識が必要なんだろうね。それを子供の時は既に持っていたアルベルドが凄すぎる!


「ここからセレルまで7日も掛かるんだろ?その間ずっと走るのか?」

「一応休憩できる場所は所々にあるが、そこ以外では休むことは出来ないな」

「はぁ強行軍になりそうだな」

「それしか方法が無いのであれば走るしかないか」

「はぁ、ローブとか荷物になる物は悪いけどクーアに仕舞って貰いましょうか。大丈夫?クーア」

「うん、魔法は何とかなるから大丈夫だよ~膜も俺が張ってあげるよ」

「無理はするなよ」

「うん!」


 みんなは一日中走るために出来るだけ身軽にすると、アルベルドを先頭に火の大地へと進行した。

読んで頂きありがとうございます!

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