俺、みんなにお友達を紹介するよ!
宿に戻った俺とシャールクは他の3人が戻ってくるまで、一緒に遊びながら待っていると少し疲れた様子を見せながらウォルが戻って来た。
「お帰り~」
「よう、お疲れのようだな」
「まぁ色々と」
「何が有ったんだ?」
「町長がクーアの記念碑を立てると言って聞かなくてな」
「お、良いじゃないか別に」
「確かにそれは良いんだが、あまりにも神聖化し過ぎると後々が気になる」
「あ~・・・・」
「ん?どういうこと?」
記念碑ってことはこの町が復活したことを祝うために何かを残すってことでしょ?それはとても良い事だと思うけど・・・・
「俺達の国はエルディラン様とヴィラス様への信仰心と末柄である誇りで国を纏めていると言っても過言じゃ無いんだ。ウォル達王族は国の代表ではあるが、その実態は国の経営や催事、防衛などを担当しているだけで国民全てに命令できるような権力を持っている訳じゃ無いんだ」
「ヴィラス様とエルディラン様のおかげで一つの国となっているが、地方の運営は地方に任せているし町と町が離れている所為で王族にはそこまでの影響力は無いんだよ」
「でも、ウォルってエルディランの子孫なんでしょ?」
「前にも言った通りエルディラン様の子孫はかなり居るからな、代表役が俺達の一族ってだけなんだ」
む~ウォルはエルディランの子孫だけど、そこまでの権力は持ってないってことだよね?それが、記念碑と神聖化になんの問題があるんだろう・・・・二人の話が分からず首を傾げていると扉が開きアルベルドが帰ってきた。
「む、帰ってきていないのはレイランだけか」
「おう」
「何の話をしていたんだ?」
「クーアが神聖化され過ぎるかもしれないって話だ」
「なるほど・・・・感謝されるのは良いがそれは王族にとって少し困るかもしれないな」
「え~アルベルドは分かるの?」
話をすべて聞いていた訳じゃないのにアルベルドはシャールクの一言で事情を理解したみたいだ。え~俺だけが分からないの~
「アルベルドは騎士団所属だからな、王族には詳しいんだよ」
「つまりは、今までエルディラン様とヴィラス様によって国を纏めてきたがクーアが神聖化されることによって国を纏めずらくなるんじゃないかとウォルは心配しているんだよ」
「クーアを信仰対象とした町が独立する可能性があるからだな」
「勿論クーアは素晴らしい力と心を持っているから神聖化することに文句は無いのだがな。あくまでエルディラン様とヴィラス様が遣わせてくれたお使い様として記念碑を立てることにした。すまないなクーア、人の事情で事実を曲げてしまって・・・・エルディラン様とヴィラス様が戻った時には必ず事実を伝えることを約束する」
「今でも国の結束は固いけど、混乱状態にあるのは事実だからな。これ以上悩みの種を増やすことは出来ないんだ。本当にすまない」
「ん~別に良いよ?二人の竜みたいに讃えて欲しくてやった訳じゃ無いし、人間からの評価なんて気にしないしね!」
俺がこの町を救ったのは、見ていてとても悲しい気分になったからやっただけだし、ウォル達が喜んでくれると思ってやったんだ。人からの意見なんて気にしないし、エルディランとヴィラスに取って代わるつもりなんて一つも無いのだ。だから、ウォル達が好きなようにして良いし都合が良いなら俺は気にしないよ。
「すまない」
「気にしないで~俺は崇められるとかどうでも良いしね~」
「まぁクーアはそうだろうな・・・・」
「ヴィラス様も同じような感じだと、父が言っていたな」
「竜種の皆さまは、固執したもの以外には淡白だと聞いている」
「そうなんだ~他の竜種と会ったことが無いから分からないけどね」
「きっと会えるさ」
ウォルは優しい顔で笑うけど、別に他の竜種と会いたい訳じゃ無いんだよね~勿論エルディランとウィラスとは会いたいけど、他は特に興味ないね。そんな事を話していると、レイランが戻って来た。
「お帰り~」
「あら、お揃いね」
「調べ物は終わったの~?」
「えぇもっと調べたいところだけど、ある程度は調べ終わったわね」
「ふむ、結果はどうだったんだ?」
「とても有意義な結果になったわ。こんな大きな魔法生物なんて前代未聞ですもの」
「魔法生物を見つけること自体が珍しいからな」
「実はそんな事無いのよ、私達がいつも戦っている魔物だって一種の魔法生物なんだから」
「あれらは、魔法生物と言うにはおこがましいだろう・・・・」
「魔法生物と言うと、精霊とか竜種とかといったものが一番に思いつくからな~」
「うむ、魔物達は魔法生物と言うには憚れるな」
魔法生物と言うのは、魔力の体を持った意志ある生き物という括りというのを本で見たけど確かに魔物も体は汚染された魔力で出来てるから魔法生物と言えるね。
「魔法生物はどの属性の魔力で生まれたかによって左右されますからね~」
「魔法生物と言えば、クーアみんなに説明したのか?」
「まだだよ~みんなが揃ってからにしようと思ってね」
「ん?説明ってなんだ?」
「何かあったのか?」
レイランが来てから説明しようと思ってたからみんなにはまだ新しいお手伝いさんの事を言っていないのだ。事情を知らないアルベルド以外はみんな不思議そうな顔をしている。早速俺はみんなにお手伝いさん達の事を話すことにした。
「実はね~今日やることがあるって言ってただでしょ?」
「そうね、何やら悩んでいる様子だったけど解決したの?」
「うん!」
「それは良かった。それで一体何に悩んでいたんだ?」
「それはね~今のままじゃこの国に水を届けることは難しいと思ってたんだ」
「それは・・・・」
「今俺達とウォルのお兄ちゃんが水をこの国に広げてるけど、この国はかなり広いでしょ?」
「確かに国土だけで言うならば上位を争う程大きな国だが」
そう、このエルヴィラス皇国は人口と人が住める範囲は他の国と比べてかなり狭いけど、単純な国の大きさとしてはかなりの大きさを誇っているのだ。大きな土地の上に点々と町が在るというのがこの国の特徴なのだ。そして町同士の距離はまちまちで一日以内に辿り着ける場所もあればセレルみたいに一番近い町から7日も掛かる場所もある。俺達だけじゃ全部の町へ水を通すのはかなり時間が掛かってしまうのだ。
「だから、俺達だけじゃ手が足りないと思ったんだ。それにもしかしたら、この町みたいに危険な状況に陥ってる場所が他にもあるんじゃないかって」
「まぁ確かにクーアの言う通りだが・・・・」
「だけど、どうするんだ?前に使った通信手段で騎士団を呼ぶのか?」
「騎士団はもう動かせる人員は居ないはずだ」
「魔法師団を動かしましょうか?騎士団程機動力は無いけれど魔物達と戦うことぐらいは出来るわ」
「最近隣国の動きも怪しいし砂漠側に手を回せるほど人員が居るのか?」
「少し厳しい所ね」
俺が思っていたことは、みんなも考えていたようで難しい顔をしながらも今出来ることを提案してくれた。人員を割くことはかなり難しいみたいだね・・・・でも大丈夫!
「人だと時間が掛かっちゃうでしょ?だから、新しくお友達を作ったんだ!」
「お友達・・・・?」
「作ったというと魔法生物かしら?」
「その通り!」
「それが、あの水の生き物か」
「今みんなはお仕事してて呼べないから、姿だけ見せるね」
俺は前に使った場所と場所を繋ぐ水鏡を作り出し、砂漠を走り周り水を広げてくれているお手伝いさん達を映し出した。みんなは水鏡を覗き込み驚きながら
「これが新しいクーアの友達」
「なんて数なの・・・・この数を今日一日で作ったの?」
「中々可愛いらしい見た目してるな」
「なるほど、彼らの仕事はこれだったのか」
「この子達は砂漠の至る所に行けるし、水を引いたり魔法を使うことも出来るから魔物達と遭遇しても大丈夫!足の速さもピカイチだから、あっと言う間に水を広めてくれると思うよ!」
「凄いな・・・・」
「あぁ、これがクーアの力なのか」
「悩みの種が一気に解消されちまったな」
「くぅ~この子達を研究してみたいわ!」
俺が胸を張ってこのお手伝いさん達の事を紹介する。四人はずっと頭を悩ませていた問題がたった一日で解決してしまったこと愕然とし、そしてこの広大な土地をあっという間に豊かな国へと変えてしまうクーアの力を再認識したのだった。
「これで、心配せずにセレルに向かえるね!」
読んで頂きありがとうございます!
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