俺、みんなに頑張ってもらうよ!
ウォル達の話では魔境を境にして、俺達が居る方面にはネリアとアルベルドの故郷であるセレルという町しかないらしい。なので、水を届ける必要がある場所は魔境から先なのだ。だから、魔境まで来たんだけど・・・・
「この中を抜けるのはちょっと大変だなぁ・・・・」
魔境の中はもう経験したように色々な属性の魔力が荒れ狂い、汚染された魔力も乱れ舞うこの土地を何も影響を受けず抜けるのは流石の俺でも難しいしお手伝いさん達はもっと難しいだろう。
「力はかなり渡したけど、この中は魔法生物にとっては相性最悪だしな~」
魔境の中に雨が降ってくれさえすれば、俺達がやったように水の魔力を借りて一瞬で魔境を抜けることが出来るんだけど・・・・生憎雨は降りそうにない。他に方法と言えばお手伝いさん達は水と大地の親和性が高いから地面の中に潜って魔境を抜けるという方法もあるけど、この大地は汚染されているから地面に潜るのはあまり良くないと思う。
「む~ちょっと困ったな~」
水を届けるにはこの魔境を抜けなくてはならないが、魔境を抜ける為の方法が見つからず少し頭を悩ませてしまう。どんな生物でもこの魔境を越えるのはなかなか難しい。ネリアに居る時にリオやガイアを呼び出したけど、あれはこの魔境を通って来た訳じゃなくて俺の支配下にある親和性のある属性がある大地に自由に転移できるという特性によるものだ。いくら俺でも、もう少し成長しないと転移魔法は無理!だから、お手伝いさん達に転移魔法を使う事も覚えてもらうことも出来ない。
「もう面倒くさいし、この魔境全て流しちゃおうかな・・・・」
「ワオン!?」
「大丈夫、ちょっと思っただけだから絶対にしないよ」
もう考えることが面倒くさくなって力技で解決しちゃおうかなと思った俺がぼそりと零れた言葉に反応して、お手伝いさん達が表情は無いけど驚いたように鳴き俺を見る。
「自然破壊は良くないからね!でも、本当にどうしようかな~」
飛ぶのも駄目、地面に潜るのも駄目なら魔境を一直線で抜けられるように俺の浄化の魔力マシマシで魔法を撃って部分的に浄化して道を作ろうかな~魔力が増えた今なら、魔境全ては無理だけどお手伝いさん達が通るための道ぐらい作れるはずだ。すぐに浄化した道が汚染されるだろうから、本当に一時的な道だけどね。
「よし、そうするか!自然に影響が無いように破壊力は全く無しで浄化能力だけに特化させた光線にして~大きさはみんなが三列ぐらいで通れるぐらいにしようかな」
俺は人の姿のままだと、魔法を全力で使えないので龍の姿に戻り今出来る全力の浄化魔法を編み上げていく。俺の周囲に浮いている球体達は俺の魔法を補佐する要員として、魔力を強化と魔法の増幅そして魔境をしっかりと抜けられるように魔法の延長を担当して貰う。
莫大な魔力を持つクーアの魔力が魔法を編み上げていくことによって、大気は揺れあふれ出る魔力は光の粒子となり輝き触れればどんなものでも一瞬で浄化されてしまうほど。クーアの体に浮かぶ星々は輝きを増し宇宙が回転するように躍動する。あまりの魔力の圧に周囲に生物たちはひれ伏し、唯一クーアの魔力で作られた魔法生物はその魔力を体に受け力を増していく。クーアにとってはこぼれ出たほんの僅かな魔力だとしても、魔法生物を強化し環境を変えてしまうほどの威力を持っている。
「それじゃ行くよ~!」
ゆるい口調と打って変わり放たれた浄化の魔法は光の洪水のように魔境を飲み込んで行き、魔境を取り巻いていた荒ぶる魔力と汚染された魔力を浄化し正常な魔力へと変わっていく。
「よし!いってらっしゃ~い!」
ニャオー! バウ! ヒヒーン! アオーン! ガウッ!
破壊力を持っていれば魔境を更地としていただろう光線は、綺麗に魔境を分断しどんな生き物でも通ることが出来る道を魔境へと作り出した。その道をクーアの合図とともに水で作られた魔法生物は一斉に走り出した。皆、体が大きいが魔法生物であるため体の大きさはスピードは関係しない。風を切るかのように全力で走り出し、段々道が汚染され始めてはいるがあの速さなら道が消える前に十分魔境を抜け出すことが出来るだろう。
「お仕事頑張ってね~」
段々小さくなっていくお手伝いさん達の後姿を見送り見えなくなってしまった後も完全に道が消えるまで待って俺は町へと飛び立った。お手伝いさん達の位置は、常に把握しているから無事に魔境を抜けたのは確認済み。みんな魔境を抜けたらそれぞれバラバラに砂漠へと散り頼んだ通り水路を引き始めてくれている。思っていたよりお手伝いさん達は強力な力を持っている様でこのスピードなら、この国全体に水が行き渡るまでそんなに時間は掛からないと思うな~
順調に砂漠へ水路が引き始めたことを確認した俺は、強力な存在となってしまったお手伝いさん達に驚きながらもこれで問題解決だとルンルン気分で町に戻った。そして取りあえず研究をしているだろうレイランと町長とお話ししているウォルを邪魔するのは良くないと思い、町の様子を見て周っているというシャールクの元へ行くことにした。シャールクの魔力を憶えているので、簡単に見つけることが出来たが飛んでいくと目立ってしまう。だから、シャールクの傍まで姿を消して飛んでいき、近くの人目の無い場所に着地しそこから歩いて行くことにした。
「シャールク~」
「クーア!?どうしたんだ?今日はやることがあるって言ってなかったか?」
「その用事が終わったから来たんだよ~何してるの~?」
「そうか、今は町の様子を色々見てる所なんだ。一緒に来るか?」
「うん、行く~」
突然現れた俺に驚きはしたが、特に詮索すること無く一緒に行くかと聞かれ俺はやることも無いし喜んで一緒に行くことにした。町の様子は、昨日と同じように盛り上がっていて、住民達の顔に笑顔が溢れている。この町を救えたことを再確認しながらシャールクは何してるのかを聞いてみる。
「シャールクは町の様子を見て何を調べてるの~?」
「問題ごとが無いかと思ってな」
「問題があるの~?」
「クーアのおかげで住民達の体調と水不足、食料不足は解決出来たがかなりの時間この町は営みが停止した状態であった事には違いないだろ?だから、何処かしらに問題があっても可笑しくないだろ」
「なるほど~」
「今の所大きな問題も無く、立ち直ってきてはいるが念のためにな」
「ほへ~」
確かに俺は生活できるように大地と人々を治したけど、全てが元通りって訳じゃないもんね。前に言ってたみたいに道具が足りないと言ってたし他に問題があるかもしれない。それをシャールクは探してるんだね。
「それじゃあ一緒に観光ついでに問題を探しに行くぞ」
「お~!」
シャールクと一緒に昨日は見ていない場所や住民達に声を掛けながら一通り回ってみたけど、美味しいリンゴや綺麗な装飾品を作るお店を見つけられたぐらいで問題になりそうなものは特に見つけられなかった。住民達は今の状況に満足しているみたいだし、前向きに考えているみたいだがから悩みも無いみたい。体調面も健康な状態まで戻して癒したし俺達が出るような場面は無さそうだね~。一通り見て終わった俺達は、賑わう町を楽しみながら宿屋へ戻った。
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