俺、ネリアの町を救うよ!
この旅の第一の目的地であるネリアに到着した俺達は、まずネリアの大きさに圧倒されてしまった。遠くから見ても、存在感を感じる大岩だったが近くで見るとその迫力が段違いだ。見上げても頂上が見えないほどの高さに、まるで国を守るかのように俺達の先を阻む岩の壁。こんな大きさの岩が自然に出来るはずがない、みんながそう思うのも当然だ。
「凄いわね・・・・」
「初めて見たけど、デカすぎるだろ」
「噂では聞いていたが、ここまでの大きさとは・・・・ヴィラス様が作られた岩だと言われるのも納得だな」
「俺も、初めて来た時は吃驚したっすよ。中へ急ぎましょう」
「うむ」
俺達はネリアの入り口だと思われる、穴が開いている場所に歩いて行くとそこには騎士の格好をしている人達が壁にもたれ苦しそうにしながらも門番をしていた。俺達はその人達に駆け付けると、
「隊長に・・・・副団長!っっ」
「申し訳ありません、すぐに・・・・っ」
俺達が誰か分かったみたいで、壁から離れ姿勢を正そうとしたが体に痛みが走ったのか顔を顰めうずくまってしまった。それを見て俺達は二人の元へ駆け寄ると
「大丈夫か!?」
「申し訳ありません・・・・」
「何でもありません、すぐに立ち直りますので・・・・」
「大丈夫だ、お前達の事情は知っているよく頑張ったな」
アルベルドは何とか立ち上がろうとする二人を落ち着かせると俺を見る。おっけ~任せてね!この二人もコーネス並みに汚染されちゃってるね。意識を保つのも大変だろうに、それでも職務と騎士としての振る舞いを怠ろうとしない姿に感服だね。二人共痛みでうずくまってしまったけど、これが普通だからね。痛みに耐えながらあそこまで動けるコーネスが異常なのだ。
「お仕事お疲れ様、もう大丈夫だからね」
俺は二人の前に立つと、コーネスにやったように二人を水の球体の中に入れ体から汚染された魔力を浮き上がらせ浄化する。この人達は体にまだ治ってない怪我も有ったから、それも治しておくね。あっという間に健康体に戻った二人は信じられないと驚愕しながらも、俺に跪き
「「ありがとうございます!!!」」
「お大事にね~」
勢い良くお礼を言ってくれた二人の頭を撫でて上げると、コーネスが俺を持ち上げグルグルと周りながら
「本当にありがとう!!!」
「あはは、まだまだこれからだよ~」
「でも、ありがとうだ~~~!」
キャハハと笑いながら二人で回っているとこに門番さんはぽかんと口が空き、ウォル達は優しく見守ってくれる。こうしている間にも、町の人達は苦しんでるみたいだし、早く行かないとね!
「それじゃあ、中に入ろっか」
「・・・・あぁ、二人はすまないが、このまま門番をしておいてくれ」
「分かりました!」
「みんなを頼みます」
「任せて~」
俺達はネリアの入り口から中に入り、少し洞窟のような道を進んで行くと行き先に光が見えて来た。大岩の中なのにどうして、光が有るんだろう?
「この先がネリアです・・・・皇子この先の光景は少し刺激が強いかもしれないです」
「大丈夫だ、進もう」
コーネスは先頭に立ち俺達の事を気を使ってくれたみたいだが、ウォルは真剣な面持ちで言うと光の先へと進んだ。
そして、その先に広がっていた風景は俺達が思っていたよりも酷い光景だった。ネリアは、岩の中に築き上げられた町だ。町の中心に大きな神殿のような物が立ち、そこから段々と町が作られている様はまるで中心に城が立っていた皇都の様だ。天井には隙間がありそこから太陽の光が町の中に降り注ぎ神聖な雰囲気を出しているが、町から漂う雰囲気は神聖とは真逆の雰囲気だ。
「これは・・・・」
「思ったより酷いわね」
「こんなことになってるとは」
空から光が降り注がれているのに、人々が発する空気は重く皆光を受けながらも下を向いている。道端に居る人々は横たわっているか、家にもたれかかり何も発せず生気を感じない目で虚空を見つめている。人々の賑わいの声は一切聞こえず、まるで町が死んでしまったように静かだ。
「何時からこんな事に・・・・」
「ここ数ヶ月前からだそうです。俺達が到着した時には既にこんな感じでして・・・・聞いた所餓死者はまだ出ていませんけど危険な状態なんです。外で狩りをして何とか持たせてはいるんですが・・・・」
「砂漠の大都市と呼ばれたネリアが見る影が無いな・・・・」
「危険な人から治療院に運び、何とか命を繋いではいますが数が多くて・・・・」
「ネリアは、このような土地になければ都市になっても可笑しくないほど町だ。それ故に人口も多いからな・・・・」
アルベルドの言う通り、この町は岩の中にたくさんの建築物を築き上げ発展してきたという事が町の風景から、分かるけどだからこそ人の息吹を感じられないのが不気味だ。
俺達は人はいるが生気の無い道を通りながらコーネスの話を聞く。目の前を通る俺達に目を向ける気力さえ無いようで、誰も俺達が歩いて行くことに気を掛ける事が無い。こんな人達見たことが無い・・・・みんな生きる気力を失っている様だ。
「みんな元気が無いね~・・・・」
「十分な食糧が回せて無いから、みな疲れ切って空腹と戦っているんです。騎士団の皆で餓死者が出ないように、割り振りを決めて食料を渡しているんですが、女子供や年配の方々に優先して回しているのでそれも中々難しく・・・・」
「お腹ペコペコだと、力なんて出ないもんね・・・・」
道端に寝ている人達はみんなやせ細り、息はしているが生命力を感じられない。今まであってきた人達は、少し疲れてはいたけれどみんな活力が有って笑っていたのに、此処に居る人達はその気配が全くない。それはとても悲しいし、ウォルも初めてみる光景に痛ましいと顔を歪ませている。
「これは、すぐにどうにか出来るレベルを超えているな」
「えぇ国を挙げて支援をしないと・・・・」
「だが、騎士達を連れてあの魔境を越えるのは無理だ」
「物資は持ってきたが、この状況では足りないだろう。もっと根本的な解決をしなければ」
「取りあえず、水を作り出した方が良いわよね。その後クーアに植物を育てて貰って・・・・クーア?」
俺は家に寄りかかりながら、体を寄せ合っている家族の傍まで行くとこの町に入ってから気になっていることが有ったのだ。
「こんにちは、どうしてそんな目をしているの?」
「・・・・・」
この状況なら絶望し生きるのを諦めても可笑しくは無いと思う。だけど、みんなの目に浮かび上がっているのは、絶望や諦めでは無く後悔や悲しみ、謝意といった気持ちだ。どうして、みんなはそんなに悲しそうな眼をしているの?
「誰かに謝りたいの?」
「・・・・」
俺の言葉に虚空を見つめていた目が、少し光を戻すと涙を流しながら
「ごめん・・・なさい。ごめ・・・んな・・・さい、守れ・・・なくて・・・ごめんなさい。失望・・・させて・・・ごめんなさい」
「よわくて・・・・ごめんなさい」
「まもってもらったのに・・・・いばしょをくれたのに・・・・やくそくをしたのに」
少しだけ光を取り戻した家族は、朦朧としながら謝り続けている。初めは、俺に謝っているのかと思ったけど、その目は俺ではないどこか遠くにいる人を映し出しそれに謝っているみたいだ。
このネリアを作り出し、此処に居る人達に居場所を与えた人物は恐らくだけどヴィラスの事だろうね。魔力を探ってみると、確かにヴィラスの魔力を岩から感じるし、ネリアの住人にもヴィラスより与えられた土地だということが伝わってるんだろうね。
「ごめんなさい・・・ごめんなさい・・・・」
うわ言の様に、謝り続ける人達。自分達はお腹が空いて喉も乾いて、痛いぐらいだろうに謝罪を止めない姿を見ていると、凄く胸が苦しい。この人達は、こんな状態になっているのに自分の事より守護竜達の事を考えている。それはもう、崇拝や尊敬じゃない依存だ。依存してしまう程、二人が居なくなったことは衝撃だったんだろうね・・・・
「大丈夫だよ、君達は守護竜を裏切ってなんかない、守護竜は失望なんてしてないよ」
「・・・・・」
早くこの町を何とかしないと
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