Ep.6 「開幕! 精鋭たちのフェスティバル」
思ったより前置きが長くなりもうした
遂にやってきたビーストコマンダー全国大会。
七大地区を勝ち抜いた代表選手のほか、各都道府県からの選抜2名ずつと開催地域枠1名の参加選手を加えた総勢116名が開会式を前に闘志を漲らせていた。
試合を前にひりつく空気の中レッドもまた、まだ見ぬ強敵との対戦に胸を膨らませている。
「ここが会場かー!! 想像してたのの1と4分の3倍はデカイな! 全国から強いやつらが集まってきてると思うと武者震いがムシャムシャしてくるぜ!」
「レッド…くん! あんまりはしゃがないでくれますか!? その…関東地区代表として恥ずかしいです!」
興奮するレッドをナナミがたしなめる。
「わりぃわりぃ! こんだけ広いと迷子になっちまいそうだぜ。ガバチョのやつも応援に来るって言ってたけどどこにいるんだ? ナナミも一緒に探してくれよ」
そう言って観客席にいるであろうガバチョの姿をキョロキョロと探すレッド。一方のナナミは顔を真っ赤に染めて
「ナ、ナ……ナナミって……♡ 呼び捨て…♡ ハッ! よ、呼び捨てにしないでください!ナナミの方がお姉さんなんですから!」
「おまんら、なーにをイチャつきゆうがぜよ」
二人を見て呆れるジューゾー。「別にイチャついてませんっ!」と怒るナナミだったが、ジューゾーの意識はすでに、少し離れた参加者の列から聞こえてきた声のほうに向けられていた。
「なぁなぁコウ! あれ見てみーな。エラい別嬪がいてるわ! なぁ! ほれアソコ!」
「やかましわエイト。ジブンの大好きな地元で負けてココにおんねんから、そんなもん見てる暇あんねやったら一個でも勝ち上がること考えや。」
「カッカッカッ! アホやなぁコウ。確かにワイは地元でお前に負けたけど、全国大会ではまだ負けてへん! つまり、全国無敗の天王寺エイト様っちゅーわけや!」
「ボクがアホやったらジブンはドアホや。どないな理屈やねん、しょーもな」
近畿代表の列に並ぶコウを見て、ジューゾーは内心動揺していた。
(天満コウ…!? 病院からおらんなったとは聞いちょったが、まさか近畿予選から上がってきたがか! まずいにゃあ、まだ時任と引き合わせる訳には…いや、関東予選の時とはオーラが違うぜよ……。大河レッドに負けて何かが変わったっちことか?)
動揺が僅かながらも安堵に変わるジューゾー。
(今の天満コウならもしかするかもしれんぜよ…。とはゆーても、こっちの目的を先に済ませんといかんきにゃ。ワシも気合入れちいかにゃいかんぜよ)
「ん?あそこにいるのってコウじゃないか? やっぱりアイツも全国に…! おーーい! コウ!! オレオレ! オレだーー!」
考え込むジューゾーの視線の先にコウを見つけ、嬉しそうに手を振るレッド。その声に気づいたコウはレッドの方をチラリと見たが、すぐに「ふん…」と不機嫌そうに顔を背けた。
「あー! なんだよコウのヤツ、感じ悪いでやんの!」
≪えー、お待たせいたしました! ただいまより第四回ビーストコマンダー全国大会 開会式を行います!≫
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〇VIP室
「始まったね。この大会の後にはヘルメスはほぼ確実に適合率95%を超え核醒を果たすだろう。アレは十二神の中でも一際特別なコアだからね。これまでの苦労が報われると思うと嬉しいよ」
「そうね。あの事故の後、ずいぶん頭を悩ませたものだけど彼から協力を提案してくれたのはコッチとしても助かったわ。ま、何か裏で企んでるようだけど…」
「問題ないさ、アフロディーテ。彼が何をしようと計画に滞りなど発生しない。この大会には我々がまだ手に入れていない十二神のコアの持ち主も参加している。それらの回収のほうが大変だよ」
「あら、それなら簡単な方法があるじゃない」
「ほう……?」
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〇会場 通路
「あーーー!! 疲れた! なんで偉い人ってのは話が長いのかねぇ!」
「ほんとだよな。今日なんて夏休み前の校長の朝礼より長かったぜ」
開会式が終わり、合流したガバチョと一緒に愚痴をこぼすレッド。
「レッドくん! 組み合わせ表見ましたか? 天満コウくんとは反対の山だから戦うためにはお互い決勝まで上がらないとダメみたいですよ」
「へぇ。それでこそだぜ! コウへのリベンジは決勝以外ありえねぇ!!」
「あ、それと…その、もしかしたらですけど……。もしナナミが勝ち上がったら準決勝でレッドくんと当たることになるかもです」
試合に向け盛り上がるレッドとナナミ。そこにジューゾーも加わる。
「ワシも順当に勝ちゃあ準決勝で天満コウぜよ。おそらく今のヤツは地区大会の時のように簡単にはいかんやろにゃ。それに見てみぃ」
ジューゾーが指さす。
「あそこで腕組みしとるんが九州地区優勝の山下ダイチ。大学生大会では常にトップクラスの成績で卒業後は確実にプロコマンダーになると言われちょる。そしてベンチで弁当食べゆうがが東海の大食い鯱、人見リキ。とんでもないパワーの持ち主で対戦相手はみなKOされたち噂ぞ」
「へへっ! 相手にとって不足はねぇ! 全国の舞台だ。強いやつと戦えるのは望むところだぜ!!」
ふと、ナナミが思い出したように疑問を口にする。
「そういえばジューゾーさん。気になってたんですけど、地区大会の準々決勝まではウルフのコア使ってましたよね? カドゥケウスなんて聞いたことも見たこともないコア、どこで手に入れたんですか?」
「……ッ!?」
ジューゾーは少し口ごもり
「たまたま中古屋で見つけただけぜよ。珍しいコアやき使ぉてみとなってにゃ! …そんなことよりナナミは一回戦からやろ。ワシとレッドはシードやきええけんど、準備しちょかんて大丈夫ながかや」
「あっ、そうですね! 控室でウォーミングアップしてきます。」
「がんばれよ! 準決勝でまた戦おうな!」
「……っ♡ はいっ! レッドくんもがんばって!」
レッドの声援に頬を赤らめたナナミはそそくさと控室へと向かった。
「ジューゾーのやつ明らかに話を逸らしたよな。うーん、気になる…」
お菓子を頬張りながら頭に疑問符を浮かべるガバチョだったが
「あっ! アタリが出た! レッド、俺ちょっと売店で交換してくるよ!!」
普段は見せないような機敏さで売店のほうへと走っていった。
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≪さあ、遂に始まる全国大会第一試合! 各地から集まった強豪たちが鎬を削る熱き闘いを見逃すな!! まばたき厳禁! 一番輝くのは誰のビーストソウルだ!? ビーストコマンダー全国大会第一回戦! レディーーー! ビーーーーーーーーーーーストォウ!!≫
To Be Continued→
前回と同じ引き…!