Ep.3 「強敵! 双蛇のツインスネークバインド」
素振りは基本。
「ビースト オン!」
─── <カドゥケウス>
≪一体何が起こっているんだー!? これはほんとにコマンドバトルなのかーーーー!?≫
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〇夕刻 公園
「1953…! 1954…! 1955…!」
明日の決勝戦に向け、公園で素振りをしているレッド。
「196じゅっ…! ぐぅっ・・・! 1967ァ!! 1968! ……」
レッドは試合後の疲労した身体にむち打ちながら、ただひたすらに基本ともいえる動きを反復する。
と、そこにガバチョが息を切らし、焦った表情で走ってきた。
「おーーーい! レッド!! 大変だ大変なんだよーーー!! 天満コウが…天満コウが…ハァハァ…!」
「ふぅっ…。どうしたガバチョ、そんなに焦って。コウがどうかしたのか?」
「そうなんだ…ハァハァ…! 天満コウが負けたんだ!!」
「コウが…負けた…?」
「しかもその負け方ってのが普通じゃない! なんて言ったらいいのか分からないけど…とにかく変なんだよ!! 相手は聞いたこともないコア使ってたし…とりあえずコレを見てくれ!」
そういってガバチョは親から借りてきたのであろう年代物のビデオカメラを取り出した。
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○ビデオに記録された映像
«一体どうなっているんだぁ!? 天満コウ選手! 全く動かない…いや、動けないのかーーー!?»
画面の中では、コウのフィル・ザ・ヘヴンレガシーがなす術なく攻撃を受けているシーンばかりが映っていた。
「おかしい…! あの先の先を得意とするコウが、一度も反応できてない…。おいガバチョ、相手のジューゾーってやつはもしかしてとんでもない超スピードの持ち主だってのか!?」
「え、いや…そんなことはないと思うけど……。そりゃ大会上位に来るだけあって他の選手たちよりはパワーもスピードもあるように思うけど、正直レッドの方が数段早いぜ」
「だよな。この映像を見る限り、オレもそう思うぜ。なのに何故コウは反応しない…いや、反応できないんだ…?」
食い入るように映像を見つめるレッドだったが、その違和感の正体を見つけることはできず──
「ダメだ! わっかんねー!! 何はともあれ、決勝の相手がコウから犬飼ジューゾーに変わったってだけの話だ! コイツを倒せばコウのやつの余裕面もなくなるかもな!」
明らかに悔しさを隠しきれていない口調で立ち上がり、素振りに戻ろうとするレッド。
「レッド…。それと、天満コウなんだけど……この試合の後、
救急車で病院に運ばれたって…!」
「なにぃーーーー!?」
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○某所 某時刻
「いやはや、流石だったよヘルメス。どうやら無事、カドゥケウスのコアを使いこなしてくれているようだね。………しかし、彼を病院送りにまでしたのは…少しやり過ぎじゃないかな?」
「やかましい。アイツは…天満コウは手ぇ抜いて勝てる相手じゃないき。最後の最後までカドゥケウスの力に対抗しようとしよった。本気で行かにゃ、やられちょったがはワシの方ぜよ」
「ふむ、まあやり方は君に任せると言ったのは私だ。咎めはしないさ。決勝戦の方も頼んだよ? 円卓の十二神、Gods of Roundsの集結はこの作戦にかかっているからね」
「……ああ、わかっちょる。アンタはいつも通りVIP席でふんぞり返っちょってくださいや。ゼウス様、いや──
────時任社長」
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○全国大会地区予選大会 決勝戦当日
«昨日の大波乱から一夜明け! ついにやってきた決勝戦!
天満コウへのリベンジをかかげ勝ち上がってきた大河レッド選手 VS 謎のコアを使用し天満コウを圧倒した犬飼ジューゾー選手!! 泣いても笑ってもこれが最終決戦! 熱きビーストソウルでぇーーー! レディ…ビィーーーーストォ!!»
「行くぜ! オレのレッドジェット・マイティタイガー!! ビーストォ! オーーーン!!」<タイガー>
「天満コウの後は大河レッドかよ。まっこと堪えるぜよ。…やるしかないがやけどにゃあ! ビースト オン!」<カドゥケウス>
「ビースト ゴー!!」
«始まったーー!! 開幕はお互いどうでるか…。おーっと!? レッド選手、一気に距離を詰めていくぅーー!!»
「速攻で決めてやる。行けぇ! レッドジェット・マイティタイガー!! アンブッシュタイガーレイド!」
「そう来ると思いよったちや…! カドゥケウス!!」
ジューゾーのギアに絡みついていた2匹の蛇が首をもたげ、まるで蛇の威嚇のようにレッドジェット・マイティタイガーへと大きく口を開いた。
その直後───
───ガクンッ
«おーっとレッド選手のレッドジェット・マイティタイガー! 突然動きが止まってしまったーー!! 昨日の天満コウ選手にも同じことが起きていたが、コレがジューゾー選手の技なのかーー!?»
「その通り…。これぞカドゥケウスのコアの持つ特殊能力。ツインスネークバインドぜよ」
「どうしたレッドジェット・マイティタイガー! 動け!動けぇ………あ、動いた」
「見ての通り効果は一瞬やき。やけんどその一瞬がありゃあ…」
再び大きく口を明ける2匹の蛇。先程と同じくレッドジェット・マイティタイガーの動きがガクリと止まる。
「あとはこっちのもんぜよ!!」
«猛攻ーーー!! レッド選手のレッドジェット・マイティタイガー!! まるで動くことができずにただ攻撃を受けている! 蛇に睨まれたカエル、いや!蛇に睨まれたタイガー状態だぁ!!»
「不測の事態から立ち直ろうとした時、人も獣も単純な対応しかできんくなるぜよ。そこにさらに不測を重ねちゃるがよ!
来る思うたら来ん、来ん思うたら来る!それがワシ自身の編み出した必殺技『ホロウ・スティング』! 呼吸と意識の隙間を突いた攻撃は誰も動くことさえできんちや!!」
ホロウ・スティングによる猛攻から逃れ距離を取ったかと思えば再びカドゥケウスによる硬直をくらい、その隙を再びホロウ・スティングで攻め込まれる。
完璧とも言えるコンビネーションに試合は一方的な展開となっていた。
(ほんまはこんな卑怯なコアらぁ使いとぉなかったがやけどにゃ。ワシの…ワシらの目的の為やき。悪ぅ思わんちくれや…トドメぞ!)
ドゴォッ!!
ひと際大きな音が会場に響きわたった。
To Be Continued→
土佐弁間違うちょったらスマンにゃ