Ep.2 「高鳴る!? 初めてのフォーリンラブ」
全国大会地区予選 開幕!!
〇第四回 ビーストコマンダー全国大会 関東地区予選会場
「いっけええええええ!オレのレッドジェット・マイティタイガーーーーー!!!!ハイパーマイティバイトォ!!」
「ぬああああああああああああああああ!!」
「ジェットストロングスライドォ!!」
「きゃああああああああああ!!」
「アングリーブットバシガバチョオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!」
「なんってこったああああああああああ!!!」
あの敗北から一ヶ月後、ビーストコマンダー全国大会予選。レッドは怒涛の勢いで勝ち上がっていった。
「すっげぇじゃんか、レッド!! なんか途中で俺にまで敵意が波及してきた気がするけど」
珍しく応援に来たガバチョが興奮している。
「ああ、アイツに…コウにリベンジするまでは止まるわけにはいかないからな。相手には悪いが最初から全開でやらせてもらったぜ」
「このままいけば決勝戦だよな。天満コウのヤツも順調に勝ち上がってるみたいだぜ」
「へっ!そうこなくっちゃ!!」
流れる汗を拭い、疲れが溜まっているであろう脚に気合を入れるレッド。
「さーてっ! 次の準決勝もぶっ飛ばしてやるぜ!!」
≪お待たせしました! 第四回! ビーストコマンダー全国大会 関東地区予選!! 準決勝第一試合はーーーー!? 公式戦生涯無敗! サク小が誇る無敵のレッドタイガー!! 大河レッド選手 VS あまりの可愛さに対戦相手がみ~んなメロメロ! 『恋の猟犬』 神谷奈々美選手だあああ!!≫
「うおおおおおおおおおお!!!!!!ナナミちゅゎ~~~ん!!!!!」
スタジアム満員の観客たちの一部が、目をハートにして歓声をあげた。
「みんなありがとーー! ナナミ、がんばりますっ! きゅん♡」
「きゅ~~~~~~~~~ん!!!!!!♡♡♡」
ナナミが観客席にウインクすると、大勢の観客(すべて男性)たちが胸を押さえて腰を抜かしてしまった。それを見ていた女性客はどこかシラケたように舌打ちをしていた…。
「なんだお前。すっげー人気だな」
レッドは驚いてナナミを見た。
「ふっふ~ん♡ レッドくんもぉ~この試合が終わる頃にはナナミのファンになってるよんっ♡ ビースト オン♡」<ハウンド>
「なんかよくわかんねぇけど…! ビーストォ! オーーーーン!!」<タイガー>
それぞれのビーストコアに電子音声とともに紋章が浮かび上がる。
≪それでは! 準決勝第一試合! レディ…ビーーーーーーーーーーーストォウ!!!!!≫
「ビースト! ゴー!!」
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〇会場 VIP専用客室
「ふむ。彼は順調に勝ち上がっているようだね。さすがは『あのコア』に選ばれた少年だ…。ところでヘルメス。君の作戦のほうも順調なんだろうね?」
「……ああ、任しちょけ。アンタにもろうたこのコアの力がありゃ、今のヤツなんぞ楽勝やき」
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〇再び試合会場
「ラブハントメルティーーーーー♡」
フィールドの上では、ナナミの操る"セブンシーズ・ラブハンター"が途切れることなく必殺技を繰り出していた。
≪おおーっと! ナナミ選手、またしても大技だー! 今度こそ決まったかーーー!?≫
観客たちも予想だにしていなかった展開に動揺を隠せない。試合開始から200秒が経過し、一方的に必殺技を受け続けているレッド。
これまで速攻作戦で試合を決めてきたはずのレッドは───
あまりにもノーダメージだった。
「なんで!? なんでナナミの魅力に屈しないの!? そんな…そんな男の人なんて、いるわけないっ!!」
これまでの対戦相手が中学生から社会人の男性ばかりだった弊害か。はたまたナナミ自身が恋をしたことがなかったからなのか。なぜレッドに攻撃が通じないのか彼女には分からない。
「レッド…!お前ってやつは…!」
観客席で観戦していたガバチョが呆れつつも驚嘆する。
「神谷ナナミ…。確かにお前の攻撃はすさまじい。オレでなければその魅力になす術なくやられていただろう…。だが…!」
レッドは仁王立ちで告げた。
「だがオレはまだ思春期を迎えていない! 頭の中はビーストコマンダーのことでいっぱいだ! だからお前の色仕掛けは一切効かないのさ!!」
レッドジェット・マイティタイガーのコアの回転が激しくなる。
「いっけええええええ! オレのレッドジェット・マイティタイガー!! スパイラルレッドタイガーサーベル!!!!」
「い、いや♡ そんなああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!」
場外へと吹き飛ばされるセブンシーズ・ラブハンターとナナミ。
≪き…決まったーーーーーー!! なんとレッド選手! 終わってみればまさかまさかの無傷での勝利!! 第一次性徴を迎えていないことが功を奏したあぁ!!≫
「恋なんてしてる暇はないぜ。アイツを倒して、世界一のコマンダーに近づかなきゃいけないんだからな!」
フィールドを飛び降り、レッドがナナミに歩み寄る。うなだれるナナミに手を差し伸べて言った。
「サンキュ! いい試合だったぜ。もしオレが初恋をするなら、お前みたいなヤツがいいな!」
そういって無邪気に笑うレッドの手を取ったナナミは───
「ぁ………♡ 」
今までに経験したことのない、胸の鼓動を感じていた。
「………♡ ハッ!? ああっ!ち、違うっ! 違いますからっ!! さっ♡ 触らないでくださいっ!!♡」
耳まで真っ赤になったナナミはレッドの手を振り払い走り去ってしまった。
「はぁ? 何が違うんだよ…? なぁガバチョ! アイツすっげー顔赤くしてたけど、何に怒ったんだ?」
観客席前列のガバチョに問いかける。
「レッド…。お前ってホント人の気持ちに鈍感だよな」
「はああああああ!? ガバチョにだけは言われたくないんですけどおおおお!?」
一か月前に教室で、コウに負けた心の傷に塩を塗り込まれたことを根に持っているレッドであった。
「はぁ、まあいいや。決勝戦は明日だ! ガバチョ、オレは帰って特訓するぜ!」
「え? 天満コウの試合、見ていかないのか?」
「ああ、準々決勝までの試合は見たからな! アイツも前より格段に強くなってる…! 今のままじゃ自信をもって勝てるって言いきれない。少しでも時間をムダにしたくないんだ!」
コウへのリベンジを胸に、会場を後にするレッド。
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フィールドでは準決勝第二試合が始まろうとしていた。
≪全国大会関東地区予選 準決勝 第二試合は! この男には未来が見えているのか!? 10歳にして日本長者番付に名を連ねた少年投資家! そのバトルスタイルはまさに先の先! 世にも珍しい幻獣『ペガサス』のビーストコアを持つ男! 天満ヒカ…おっと失礼! 天満コウ!!≫
今大会優勝候補と言われているコウの登場に観客席が一斉に湧いた。野良試合とはいえレッドに勝利したという噂はもはや皆の知るところのようだ。
≪VS!! 今年の小学生はどうなってんだ!? あの手この手のからめ手三昧で強豪を撃破! 愛機"グッドラック・ストレンジジャーニー"を駆り、土佐の狼が関東に殴り込みだ! こちらも珍しい絶滅種『ウルフ』のビーストコア! 犬飼十三! ≫
飄々とした雰囲気の少年、犬飼ジューゾーが軽やかな足取りで入場する。
≪さあ! 第一試合に引き続き、お前たちの熱きビーストソウルを魅せつけてやれ!! レディイイイイ!! ビィイイイイイイイイイストォウ!!≫
「はぁ、なーにを盛り上がってんねん…。上がる思たら買う、下がる思たら売る。コマンドバトルも一緒やんか、しょーもな。ビースト、オン」<ペガサス>
「おっとろっしゃ、怖いにゃあ。こりゃあ、マジでいかにゃいかんぜよ……ビーストオン!」
────── <カドゥケウス>
≪………え?≫
To Be Continued...→
………え?