漫才「将棋の世界大会決勝」
ボケ:女性、神埼
ツッコミ:男性、二宮
ボケ「こんにちはー! 突然ですがやりたいことができました!」
ツッコミ「なんだよ」
ボケ「将棋の世界大会決勝で因縁のライバルが対決するやつ、ふたりでやろっ!」
ツッコミ「将棋の世界大会?」
ボケ「知らない? 世界中の将棋ファイターが鍛えた腕を競い合うトーナメント戦だよ?」
ツッコミ「聞いたことないなあ」
ボケ「ねえいいでしょ? やろやろ? やって!」
ツッコミ「駄々っ子かよ。というか俺、将棋のルールとか詳しくないぞ」
ボケ「大丈夫だって。駒の動きくらいは知ってるでしょ?」
ツッコミ「まあそれなら」
ボケ「わたし、動き方も知らないから」
ツッコミ「おい。それでなんでやろうとした」
ボケ「さあ、数多の激闘が繰り広げられた大会もついに決勝戦です!」
ツッコミ「話し聞けよ」
ボケ「決勝はこのふたりの対決だ! ゴールデンマッスル神埼と、アイアンナックル二宮!」
ツッコミ「なんだその売れないプロレスラーみたいな名前は!?」
ボケ「あ、わたしがゴールデンマッスルだけど、あなたもこっちが良かった?」
ツッコミ「そういう問題じゃねえ!」
ボケ「一応設定を話すとね、ふたりは同じ師匠に弟子入りした兄妹みたいなもので、日々切磋琢磨してたの」
ツッコミ「因縁のライバルだとは言ってたな」
ボケ「でも、ある日ふたりは考え方の違いから仲違いしたの」
ツッコミ「どんな戦法を取るかの違いとか?」
ボケ「子供の頃、変身ヒロインもののアニメと特撮ヒーローどっちが毎週楽しみだったか」
ツッコミ「将棋関係ねえ!」
ボケ「ちなみにあなたはどうだった?」
ツッコミ「俺? ヒーローもの大好きだったな。女の子のアニメはちょっと恥ずかしくて、見れなかった」
ボケ「ふっ……やはりわたしたち、相容れない関係だったのね」
ツッコミ「仕方ないだろ! てかそういうもんだろ! そういう想定で作ってんだよ!」
ボケ「駄目だよー。女の子向けアニメを見る男の子だっていてもいいじゃん。逆もまた然り、だよ?」
ツッコミ「お前だって変身ヒロインアニメの方が良いって言ってたんだろうが!」
ボケ「ふたりの溝は埋まらず、君は師匠のもとを飛び出してひとり旅に出たのです」
ツッコミ「だから話を聞けよ。なんでそんなことで出て行くんだよ」
ボケ「あなたは孤独に将棋の研鑽を重ね、ついに禁忌の技に踏み込んだのです」
ツッコミ「将棋の禁忌の技?」
ボケ「打ち負かした相手を恐怖のあまり死に追いやってしまうという"闇王手"を習得したあなたは、将棋の表舞台に帰ってきました」
ツッコミ「闇王手!? どんな王手なんだよ」
ボケ「トーナメントに出場し、対戦相手を次々に殺していくあなた」
ツッコミ「どうしてこうなったんだろうな。正義のヒーローに憧れてたのになあ……」
ボケ「準決勝で当たったかつての師匠も、闇王手で無惨に葬り去る」
ツッコミ「師匠ー! てか殺人罪で逮捕しろよ。俺を」
ボケ「そして決勝。ようやく決着の時が来たようね、アンパンキック一宮」
ツッコミ「名前変わってる! 百歩譲って名字の方は間違えるなよ」
ボケ「天国で見ててください。マウンテンバイク小野寺師匠」
ツッコミ「師匠そんな名前だったの!?」
ボケ「では対局を始めます。先行後攻はじゃんけんで決めます」
ツッコミ「じゃんけんで!?」
ボケ「行くよ! 最初はパー! よしわたしの勝ち! 最初はパーなのにグー出したあなたの負けですバーカバーカ!」
ツッコミ「お前はアニメのヒロインから何を学んだんだ」
ボケ「よーし! 行くよ! うおおおおお! スーパーアルティメットミラクルダイナマイト王将アタック!」
ツッコミ「頭悪そうな技だなあ」
ボケ「王将を前に一マス、あれ二マスだっけ。進めて? 邪魔なこの、歩く……? ってやつを斜めにどかせて……」
ツッコミ「直前までのテンションはどこに行った」
ボケ「この飛ぶって書いてるやつを敵の王将の前まで持っていって、王手です!」
ツッコミ「そのレベルでルール知らなかったのかよ!」
ボケ「アニメばっかり見てて将棋の勉強してこなかったので」
ツッコミ「それでよく決勝まで行けたな! もういいよ」
二人「どうも、ありがとうございましたー」