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ギャルズメロディー3期  作者: キスよりルミナス
2章   アイドル部創設
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5話 イケないあの娘 (華奈)

5話  イケないあの娘  (華奈)




 来週にゴールデンウィークを控えて、校内は早速休みムードへと入ってきている。授業中にスヤスヤと眠りにつく人も居れば、遊びに行く約束をしている人もいる。

 担任の田崎先生は「しっかりお勉強しなきゃダメよ?」と言っているが、連休前にそのように言われても、やる気は出てこない。

 5月末に嫌なテストが控えているから、それに対しての現実逃避も兼ねて、勉強から離れたい気持ちになる。


 

 カナも連休に誰かと遊びに行きたいけれど、まだ特別に仲のいい友達が居ない。寮の部屋が同室の千紗は、休み期間中は殆どバスケ部の練習があるらしい。

 カナだってバスケがしたいのに、膝の故障により前のように運動するのは難しい。

 恨めしく思いながら自分の膝小僧を見るけれど、完治してくれる未来が見えない。


 

 せめて、何か部活にさえ入っていればなぁ……。



 ※  ※  ※ ※ ※ ※



 菜月先輩と話したあの日以来、まだ菜月先輩と一回も話せて無い。というより、会っていない。

 お互いに暗黙の了解により、胡桃先輩のお手伝い役が分けられている。休み時間は菜月先輩が、放課後はカナがすることになっている。


 今頃、菜月先輩が胡桃先輩と学食で昼食を摂っているのだろうと学食の方をチラッと見る。

 休み時間は人が混んでいて、昼食を確保するのに時間がかかるので、カナは休み時間が始まるとすぐに学食へ急ぐ。


 そのため、今日も早くに昼食を食べ終わり、休み時間の暇を持て余している。



 することが無いので校舎裏のベンチで一休みする気で、人の全く通らない校舎裏への道をテクテクと歩いていく。校舎の影となり昼間ですら薄暗い道を独りで歩くのだから、余計に寂しく感じてしまう。

 たまに校舎裏で先輩達のカップルがイチャイチャしているハズレの日があるので、ハズレを引かぬように願いながら校舎裏に着いた。


 「よし!イチャイチャカップルは無しと!って……あれれ?」

 

 アツアツのカップルが1組も来ていないことを確かめて、ホッとしたけれど、ベンチの近くに1人の女子生徒が居るではないか。

 その子はベンチに大きなラジカセを置いて、1人で楽しそうにダンスを踊っていた。

 

 此方まで音が聞こえて来ないので、ラジカセからどんな音楽が流れているかどうかは分からない。

 元気の出るポップな曲かもしれないし、可愛さ溢れるキュートな曲かも。カッコいいクールな曲や、大人っぽさ溢れるセクシーな曲なども考えられる。



 ボッチで暇な休み時間、暇を持て余すくらいならば、あの子のダンスをもう少し近くで観てみたいと思った。カナはその子に気づかれないように、ゆっくりと足音を立てずに近づく。

 バレた時のリスクを考えることで増す緊張感により、自分の胸がドクドクと激しく鼓動している。

 

 1人で華麗に舞うあの娘に近づけば近づくほど、流している曲が耳に入ってくる。

 それくらいまで近づいているのに、まだ気づかなれない辺り、この娘は警戒心が薄いんだろうな。でも、踊っているから仕方ないか……。

 自分の内で勝手に自己解決しながら、流れる曲に耳を傾ける。


 「あ、この曲……」


 この娘に会うのは初めてなのに、曲は初めてではない。むしろ、カナが聴き慣れた曲だった。

 

 ポップな曲調でリズミカル、思わず踊りたくなるような曲。アップテンポで聴くだけでパワーがみなぎってくる。

 カナの中ではある一種の御守り的な存在であるこの曲。


 「上林 香織の『colorful shot』……!」


 とあるバスケの試合の前、移動中のバスでチームメイトの後輩が曲を聴いていたので、試しに聴かせてもらった。そこでカナはこの曲に出会った。

 

 今でも覚えている、あの感動を。


 『うおーーー!なんていう名前なの、この曲!神曲じゃん、カナも聴きたい!』


 それまで音楽に興味もなく、自分から触れてこなかった私だからこそ、この曲はある意味でカナの中での革命的な曲となった。

 カナの興奮しきった様子を見た後輩は、割と引き気味だったけれど、すぐに笑顔で曲名を教えてくれた。


 それから試合後、すぐにスマホの中にその曲をダウンロードして何回も聴いた。通常なら飽きる程まで何度も何度も聴いた。

 それから試合前にも必ずその曲を聴くようになった。するとカナから信じられない程、元気が湧いてきて更にチームを引っ張っていくようになった。

 もちろん、決勝までその曲は聴き続けた。



 だけど、今はその曲は聴いていない。


 カナは離れようとしたバスケのことを思い出したくなかったから。あの輝いていた頃のカナを羨むことのないように。



 「懐かしいな……」


 近くの大きな木の裏に隠れて、輝いていた頃のカナを思い出してしまう。なるべく思い出したくないのに、今はそんなことどうでもいいくらいに思えていた。

 楽しそうに舞う後ろ姿を、静かに隠れて観ながら輝いていたカナを振り返る。



 幼稚園の頃、プロバスケ選手の父親からバスケを教わった。最初はボールが飛んでくるのが怖くてワンワン泣いて、ボールが来るたびに避けていたっけ。

 でも、だんだんと慣れ始めて、小学校に入学すると同時に小学校のバスケチームに入った。

 それから、先輩や後輩と関係を築き成長していった。女子同士なのに、先輩のことが好きで告白したこともあったっけ……。そこでフラれてしまって、ショックからなかなか立ち直れなかったような。


 そして気がつけば、チームのキャプテンを任されて、チームを引っ張っていった。カナはそれ以上に頑張り、チームを日本一まで持っていった。


 そして………。



 それから後のことを思い出そうとしたが、そこで曲は終わってしまった。まるで、回想のその場面でカナのバスケ人生が終わったのを暗示するかのように。

 


 「……コソコソと私のことを観ている、イケない子猫ちゃんには、イケないお仕置きが必要かしら?……ね、夢咲 華奈ちゃん。」


 

 静まり渡った校舎裏に、その声が不気味に響き渡る。色っぽいオトナな声で、カナのことを名指した。サッと私の方を振り返り、カナのことを視界にハッキリと捉えた。


 子供っぽさの無邪気な笑顔を見せる反面、オトナなお姉さんの妖艶な顔立ちをしている。目がパッチリ開いている、モテそうなタイプの女の子。顔立ちだけでいえば、カナの好みにドストライクなタイプだ。

 髪には緑のカチューシャをしており、緩やかなカーブを掛けた髪を背中まで伸ばしている。

 

 

 逃げようにも怪我に相まって、カナの身に何をされるか分からないことに身体がカタカタと震え始め、足がすくみその場から動けない。


 その方は徐々にカナと距離を近づけてきて、蛇に睨まれたカエルのように動けないカナの目の前までくる。

 やけに近い距離まで近づいたその方は、ゆっくりとカナの顎に手を当て、目を瞑り顔を近づけてくる。


 「あわわ……ふむっ……んっ……」


 抵抗できないままにカナはキスをされてしまう。キス自体は珍しいことでは無いらしいけれど、人生で2回目のキスを女子とするとは思っていなかった。

 舌を入れられて声が出てしまい、頭の中がボーっとしてしまう。


 「はい、お仕置きはおしまい」


 1分くらいのイケないお仕置きが終わり、気がつくとカナはその方にギュッと抱きついていた。ハッと気付いて離れるけれど、相手の女子生徒はニンマリとした顔でカナのことを見ている。


 「ちょ、それより!だ、誰なんすか、可愛いカナにいきなりキスをしてきて!」


 「あなたの2つ隣のクラス、上林 琴音よ。さて、もう1つのお仕置きとして、私のために働いて頂戴!」


 澄み切った笑顔で言い切ったその顔に対して、一瞬だけ既視感を覚えた。そんなことは置いてこの人、初見の人間に対して図々しい態度である。

 どこのお金持ちのお嬢様なのか知らないけれど、きっと甘やかされて、恵まれた環境で育ってきたんだろうな。証拠に、こんな上からな態度と育ちの良さを表した体つき、髪のなんと繊細で美しいこと、肌の艶やかな美人……。

 

 面倒で返す気力も起きずに、「いや、もう好きにしていいっすよ。」と言葉を吐き捨てる。カナの言葉を聞いた琴音さんは、ウサギのようにピョンピョン飛び跳ねて喜んでいる。


 「やった!やった!これで一歩アイドル部創設に近づけたわ!」


 「あぁ、それはそれは……、ん?」


 琴音さんは今、『アイドル部』という言葉を発したような……。アイドル部って確か……。

 思考を巡らせるカナとキョトンとしてこちらを見る琴音さんの間を、サーっと春の涼しい風が吹き抜けていく。そんな風を多く取り込んだことで頭がスッキリして、カナの脳内に1つの名案が思い浮かんだ。


 「カナ、手伝うよ!琴音さんのアイドル部の創部を手伝うよ!」


 琴音さんはホッとしたのか、静かに微笑んでいた。カナの名案が成功するならば、カナはアイドル部に必要になるだろう。カナ以外に、この役割に適任の代わりが居ないと気付いた時、カナはいずれ出来るであろうアイドル部への入部を決意した。



久しぶりの投稿となりました、遅れてしまい申し訳ございません


この小説をこれからもよろしくお願いします


感想やコメント評価などよろしくお願いします

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