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~美央という女~
「いらっしゃいませ。こちら今期の新作で、冷感素材なので暑い夏にもピッタリですよ。」
この商品説明するの何回目だろう?
アパレル販売員に憧れて上京してきたのは4年前。最初こそ楽しいの連続で、やりがいを感じていたのに今じゃ作業的。ネット通販の普及から店舗で衣類を買う方が減っている弊害か、はたまた、私たち販売員に声掛けされるのが嫌なのか店内を一周し出ていかれるお客様がほとんどだ。
「あ!こんにちは、Kさん。この間ご購入いただいたワンピースですよね?柔らかなKさんの雰囲気にとってもお似合いです。」
だから、こうして店舗まで足を運んで下さるお客様が私の生きがいそのもので、販売員人生を彩ってくれている。
「あ、こちらは昨年のリメイクで…似たものお持ちですし、今期らしいデザインも挑戦しませんか?」
正直、こんなに素晴らしいお客様に否定的な言葉をかけたくないんだけれど。でもKさんをさらに輝かせたい。これも全て、お客様のため。
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「こんにちは、Mさん。今週やっと気にされていた新作入りましたよ!」
私は今日も嘘をつく。