99 黎明のカヴァティーナ - 5
壊せ、壊せ。
壊すものは壊せ。
壊される前に壊してしまえ。
私は私。
貴方は私。
私は貴方。
壊れろ壊れろ。
壊れてしまえ。
ここは悪意が集う、赤い花咲く祈りの地。
嗚呼、嗚呼。
また、花がひとつ咲いた。
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──本日の招待客──
アズリー家
夫、妻、息子、娘
リネーム家
旦那、婦人、長男、次男、長女
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ここは何処なの⁉︎
一体何が⁉︎
耳障りな叫び声。
飛び交う悲鳴に、けたたましい怒声。
嗚呼、嗚呼、嫌だ。
壊したくせに、壊したくせに。
私の家族を壊したくせに。
壊れろ、壊れろ。
壊れてしまえ。
「はじめまして、皆さま。ご機嫌はいかがですか?」
空間に響き渡る男の声。
全員が顔を上に向ける。
「ここは裁きの地。赤き花咲く裁定の間。心ゆくまで、この地で過ごす時間をお楽しみください」
怒声、怒声、怒声、怒声。
哀しむ声、絶望する声、元の場所に返せと叫ぶ声。帰ってくる言葉は何もない。
いずれ怒りの矛先はリネームの一家へ。
「一体なんなんだ、お前の家の子供は1人だったはずだ、他の2人は一体何処の子供だ?いつ迎え入れた⁉︎」
「ふざけるな!2人とも俺たちの子供だ、見ればわかるだろう!」
「いいえ!いいえ!貴方たち夫婦の子供は1人だけよ!この2人はどうしたの⁉︎」
「ええい黙れ黙れ!だいたい、それを言ったらお前たちだってそうだろう!お前の一家だって、息子は1人だったじゃないか!」
「それはお前の家だって!」
奏でて、奏でて。
嗚呼、嗚呼、そう、それよ。
ここは欲望や怒りを増幅する。
衝動、欲望、羨望、煩悩。
すべてすべて、私を歓喜ばせる。
「お、前……俺の息子を、侮辱するのか」
「それは貴様も同じだろう!うちの息子や娘はずっとうちの子供だ!だと言うのに……!」
彼らの瞳に怒りが宿る。
衝動の増幅、欲望の助長。
怒りが、絶望が、彼らの傲慢が。
彼らの手に、武器を取らせる。
花、花、花。
花が咲く。
赤く、紅く、朱く。
嗚呼、夜空に、大輪の花。
嗚呼、嗚呼、地面には、鮮紅の花!!
「いやあああああああああ!」
空間には悲鳴が響き渡る。
ああ!もっと!!
「なんてことをっ!!!」
怒り狂った妻が、夫の仇を取らんと武器を携える。
妻が相手の旦那を殺す。
婦人が相手の息子を殺す。
妻が婦人を殺す。
長男は妻を殺す。
娘は長男を殺す。
残された、次男と長女が。
ニタリと、嗤う。
「な、何よ!!」
ひたり、ひたり。
血の海の中を、次男と長女が近づいて来る。
いっぽ、いっぽ。
足が汚れるのも厭わずに、嗤いながら近づいて来る。
娘は武器を彼らに向けた。
「こ、来ないでよ!それ以上来るなら、殺すわよ!」
────あ、れ。殺すって、何?
娘の手が震え出す。
────パパ、ママ、お兄ちゃん。なんで起き上がらないの?血がいっぱい、出てる。なんで?なんで?急に眠くなっちゃったの?
気が、つけば。
2人が目の前に────
「おめでとう」
「おめでとう」
「生き残ったのね、おめでとう」
「生き残ったね、おめでとう」
「「ねぇ、何が欲しい?」」
娘は震えながら答える。
「私を元の世界に帰して!!!!」
2人の顔から、表情が消える。
怖いくらいの笑顔から、一瞬で一切の表情が消えた。
「不合格」
「不合格」
「家族がいるのに、帰っちゃうの?」
「家族がいるのに、置いて行くの?」
「「自分一人で、生き残るの?」」
怖い、怖い。
視線が揺らぐ。世界が揺らぐ。
頭の中がぐるぐるぐるぐる、まわって、回って、廻って、周って、マワッテ。
力なく、娘が崩れ落ちた。
白目を剥いて泡を吹き、やがて全身の穴から血が噴き出した。
花が、また一つ。
周囲の壁がスゥ、と消えて、見覚えのある家の中へ。
明かりのついていない室内は暗い。けれど、今宵は祭りの夜。空には花火が打ち上がって大輪の花を咲かせ、たびたび室内を照らし出す。
室内にも、また、大輪の花。
花、花、花。
花が咲く。
赤く、紅く、朱く。
嗚呼、夜空に、大輪の花。
嗚呼、嗚呼、地面には、鮮紅の花!!
冷たい鉄の香りがする。
嗚呼、好き。大好き。
「お兄ちゃん」
「ああ。行こうか」
手を繋いで、お人形を抱えて。
私たちはまた歩き出す。
お母さん、お父さん。
今、何処にいますか?
私たちは、ずっと、ずぅっと、探してるからね。
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「マリン」
「はい、なんですか?アラドさん」
「これを」
手渡されたのは、ガラス細工でできたバレッタ。薔薇を象った色ガラスが幾つも、けれど決して派手ではない、品の良い飾り。
「貴女はいつも、バレッタで髪を止めていますから」
「いただいて、良いのですか?」
「貴女につけて欲しくて、贈っています。どうか」
「…………」
そっと、受け取って。
胸に、抱く。
「あり、がとう……ございます。とても、嬉しいです。アラドさん」
「貴女の笑顔が見られて、良かった」
微笑みを交わす男女は仲睦まじく、とある一人の男は全力で気配を消していた。
────帰りてぇ……
彼の名を、ベンクと言う。
アラドがバレッタを選んでいるあたりから今までの数十分間、全力で気配を消し続けている。
「つっっっかれた……(超小声)」
帰りたい。
帰りたいです、レイエンフィリア様。
────でもきっと、あっちもあっちでイチャついているだろうし……あれっ⁉︎俺の居場所無くない⁉︎
ようやく気付いたらしい。
少しキリが悪いですが、次回更新で丁度100回目の更新ということで、登場人物紹介を掲載します。
人によってはちょっとネタっぽいかも?です。
同時にさらに次の話数で小説も掲載しますので。
次回更新は2週間後の8月14日となります。
よろしくお願いします!




