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【本編完結済】殺戮の皇女  作者: イチノセ
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99  黎明のカヴァティーナ - 5

壊せ、壊せ。

壊すものは壊せ。

壊される前に壊してしまえ。


私は私。

貴方は私。

私は貴方。


壊れろ壊れろ。

壊れてしまえ。


ここは悪意が集う、赤い花咲く祈りの地。


嗚呼、嗚呼。

また、花がひとつ咲いた。




♔∴∵∴♔∴∵∴♔∴∵∴♔∴∵∴♔∴∵∴♔∴∵∴♔∴∵∴♔∴∵∴♔∴∵∴♔∴∵∴




──本日の招待客──


アズリー家

夫、妻、息子、娘


リネーム家

旦那、婦人、長男、次男、長女




♔∴∵∴♔∴∵∴♔∴∵∴♔∴∵∴♔∴∵∴♔∴∵∴♔∴∵∴♔∴∵∴♔∴∵∴♔∴∵∴




ここは何処なの⁉︎

一体何が⁉︎


耳障りな叫び声。

飛び交う悲鳴に、けたたましい怒声。


嗚呼、嗚呼、嫌だ。


壊したくせに、壊したくせに。

私の家族を壊したくせに。


壊れろ、壊れろ。

壊れてしまえ。




「はじめまして、皆さま。ご機嫌はいかがですか?」




空間に響き渡る男の声。

全員が顔を上に向ける。




「ここは裁きの地。赤き花咲く裁定の間。心ゆくまで、この地で過ごす時間をお楽しみください」




怒声、怒声、怒声、怒声。

哀しむ声、絶望する声、元の場所に返せと叫ぶ声。帰ってくる言葉は何もない。


いずれ怒りの矛先はリネームの一家へ。




「一体なんなんだ、お前の家の子供は1人だったはずだ、他の2人は一体何処の子供だ?いつ迎え入れた⁉︎」


「ふざけるな!2人とも俺たちの子供だ、見ればわかるだろう!」


「いいえ!いいえ!貴方たち夫婦の子供は1人だけよ!この2人はどうしたの⁉︎」


「ええい黙れ黙れ!だいたい、それを言ったらお前たちだってそうだろう!お前の一家だって、息子は1人だったじゃないか!」


「それはお前の家だって!」




奏でて、奏でて。

嗚呼、嗚呼、そう、それよ。


ここは欲望や怒りを増幅する。

衝動、欲望、羨望、煩悩。

すべてすべて、私を歓喜ばせる。




「お、前……俺の息子を、侮辱するのか」


「それは貴様も同じだろう!うちの息子や娘はずっとうちの子供だ!だと言うのに……!」




彼らの瞳に怒りが宿る。

衝動の増幅、欲望の助長。


怒りが、絶望が、彼らの傲慢が。

彼らの手に、武器を取らせる。


花、花、花。


花が咲く。

赤く、紅く、朱く。


嗚呼、夜空に、大輪の花。

嗚呼、嗚呼、地面には、鮮紅の花!!




「いやあああああああああ!」




空間には悲鳴が響き渡る。


ああ!もっと!!




「なんてことをっ!!!」




怒り狂った妻が、夫の仇を取らんと武器を携える。


妻が相手の旦那を殺す。

婦人が相手の息子を殺す。

妻が婦人を殺す。

長男は妻を殺す。

娘は長男を殺す。


残された、次男と長女が。

ニタリと、嗤う。




「な、何よ!!」




ひたり、ひたり。


血の海の中を、次男と長女が近づいて来る。


いっぽ、いっぽ。


足が汚れるのも厭わずに、嗤いながら近づいて来る。


娘は武器を彼らに向けた。




「こ、来ないでよ!それ以上来るなら、殺すわよ!」




────あ、れ。殺すって、何?




娘の手が震え出す。




────パパ、ママ、お兄ちゃん。なんで起き上がらないの?血がいっぱい、出てる。なんで?なんで?急に眠くなっちゃったの?




気が、つけば。

2人が目の前に────




「おめでとう」


「おめでとう」


「生き残ったのね、おめでとう」


「生き残ったね、おめでとう」


「「ねぇ、何が欲しい?」」




娘は震えながら答える。




「私を元の世界に帰して!!!!」




2人の顔から、表情が消える。

怖いくらいの笑顔から、一瞬で一切の表情が消えた。




「不合格」


「不合格」


「家族がいるのに、帰っちゃうの?」


「家族がいるのに、置いて行くの?」


「「自分一人で、生き残るの?」」




怖い、怖い。


視線が揺らぐ。世界が揺らぐ。

頭の中がぐるぐるぐるぐる、まわって、回って、廻って、周って、マワッテ。


力なく、娘が崩れ落ちた。


白目を剥いて泡を吹き、やがて全身の穴から血が噴き出した。


花が、また一つ。




周囲の壁がスゥ、と消えて、見覚えのある家の中へ。


明かりのついていない室内は暗い。けれど、今宵は祭りの夜。空には花火が打ち上がって大輪の花を咲かせ、たびたび室内を照らし出す。


室内にも、また、大輪の花。


花、花、花。


花が咲く。

赤く、紅く、朱く。


嗚呼、夜空に、大輪の花。

嗚呼、嗚呼、地面には、鮮紅の花!!


冷たい鉄の香りがする。

嗚呼、好き。大好き。




「お兄ちゃん」


「ああ。行こうか」



手を繋いで、お人形を抱えて。

私たちはまた歩き出す。


お母さん、お父さん。

今、何処にいますか?


私たちは、ずっと、ずぅっと、探してるからね。




♔∴∵∴♔∴∵∴♔∴∵∴♔∴∵∴♔∴∵∴♔∴∵∴♔∴∵∴♔∴∵∴♔∴∵∴♔∴∵∴




「マリン」


「はい、なんですか?アラドさん」


「これを」




手渡されたのは、ガラス細工でできたバレッタ。薔薇を象った色ガラスが幾つも、けれど決して派手ではない、品の良い飾り。




「貴女はいつも、バレッタで髪を止めていますから」


「いただいて、良いのですか?」


「貴女につけて欲しくて、贈っています。どうか」


「…………」



そっと、受け取って。

胸に、抱く。




「あり、がとう……ございます。とても、嬉しいです。アラドさん」


「貴女の笑顔が見られて、良かった」




微笑みを交わす男女は仲睦まじく、とある一人の男は全力で気配を消していた。




────帰りてぇ……




彼の名を、ベンクと言う。

アラドがバレッタを選んでいるあたりから今までの数十分間、全力で気配を消し続けている。




「つっっっかれた……(超小声)」




帰りたい。

帰りたいです、レイエンフィリア様。




────でもきっと、あっちもあっちでイチャついているだろうし……あれっ⁉︎俺の居場所無くない⁉︎




ようやく気付いたらしい。

少しキリが悪いですが、次回更新で丁度100回目の更新ということで、登場人物紹介を掲載します。


人によってはちょっとネタっぽいかも?です。

同時にさらに次の話数で小説も掲載しますので。


次回更新は2週間後の8月14日となります。

よろしくお願いします!

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