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【本編完結済】殺戮の皇女  作者: イチノセ
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93  慟哭のカンタータ - 29

「……うーん」




────暁人様は何でお悩みで?半殺し?半殺しにするか否か?




「はい!玲華ちゃん!!」


「はい、秀夜様」




秀夜は玲華に向かって大きく手を上げる。




「聞き忘れてたことがあるんだけど!」


「……なんですか?」


「今日ここに呼び出した目的。すっかり忘れてたよ。ねぇ、玲華ちゃんはさ、なんでいきなり人殺しなんてやり始めたの?」




玲華と暁人が、目を見開いて固まる。


何故。

何故、殺した?


そんな、もの。




「……わ、たしが、聞きたい」


「要因はない、と?」


「だ、って」




────悪魔が、そうさせたから?




「玲華、落ち着け」


「…………っ」


「玲華、いい。許可するから言え。秀夜なら口外することもない」


「でも……!」


「秀夜、九龍院にいた頃の能力は健在か?」


「え?はい。お二人だってそうでしょう?」


「『探れ』。許可する」


「暁人!」




秀夜は、玲華に能力を使う。

普段なら、箱の中身の探知だとか、記憶の覗き見だとか、嘘を見抜くだとか、モノを見抜くための能力だ。

単純に魔術を用いた技術の一環なので、魔術ができれば自ずとできる。暁人ほど魔術下手じゃなければ。


MRIに患者を通す要領で、足元から玲華を視る。


足──問題なし

胴体──魔術炉に異常あり

頭──眼球に異常あり

魂──異常・混沌


秀夜は眉を顰めた。

眼球の異常はこの際いい。義眼だからだろう。宝石を魔術で加工し、神経を繋ぎ、目と同等以上の機能を持っている。


魔術炉の異常はなんだ?




「魔術炉がおかしい。それに……魂そのものがぶっ壊れてる。なんだコレ?俺の探知、鈍った?」


「魔術炉の異常はいい。こっちに来る時に与えられた能力だ」


「いや、異常って言葉で纏められるレベルじゃないですけど⁉︎」


「【裁定者】曰く『無尽蔵の魔力炉』だそうだ」


「無尽蔵というか、底なしっていうか……」




どんなに魔力を使おうとも、恐らく枯渇することはないだろう。例えば地球一個をぶっ壊したとしても、彼女は魔力切れを起こすことはないだろう。太陽と同じ質量の恒星を錬成しても、恐らく。




────どっから湧いてくるの、その魔力。




魔術使う人間としては、その捻じ曲がった物理法則に理解が追いつかない。




「問題はそっちじゃない。魂の方だ。さらに細かく探知してみろ」


「えぇ。玲華ちゃん、ちょっと触るよ」




秀夜はそっと、玲華の首筋に手を添えた。本当なら心臓の真上が良いが、流石に女性の胸に触れるのは憚られて、太い血管がある首筋を選んだ。ここでも、問題はない。


目を閉じて、感覚を研ぎ澄ます。


魂そのものに、絡みつくように何かが居る。絡みつく?否、侵食する、という表現の方が合っているのではないだろうか?


秀夜は目を開けないままに、暁人に語りかけた。




「魂が侵食されてる、なんだコレ?深度が浅いものから深いものまである」


「それが原因だ」


「この侵食してるものが、玲華ちゃんの殺人の理由?」


「ああ。もう探知はいいぞ、座れ」


「ごめんね玲華ちゃん、大丈夫?」


「…………」




暁人の腕に支えられた玲華は、縋るように暁人に寄り添ってソファに腰掛けた。




────結構、依存してるな。精神的にも、肉体的にも。




秀夜もソファに腰掛けながら、改めて玲華をまじまじと観察する。


美風様の同級生で、勉学的な意味では特別秀でたところはなかったけど、れっきとした護衛役で、九龍院でも名前を知らない者はいないほど。本人はあまり周りに目を向けていなかったけれど、彼女を一目置いている人間は多い。

身のこなしはまさにプロのそれ。体術やスキルは多種多様で、特徴がない。


殺しにおいて、特徴が無いという点ほど長所となりうるものはない。個人の特定が異常に難しくなるからだ。


どんなに技術がある殺し屋だって、対格闘術の応戦の癖というものはある。パンチを避けたらナイフでとどめを刺しがち、とか、腹に蹴りを入れたら首の骨を折りがち、とか、人によって違う。


しかし玲華にはそれが無い。


このナイフの刺し方はあの男性だな、とか、この首の骨の折り方はあの女性だな、といった断定ができないからだ。せいぜいが性別の断定で止まる。


流石に男ほどの腕力や脚力はないので、蹴りを入れて肋骨を全て砕く、みたいな漫画のようなことはできない。


できないから、断定できない。

折れる本数はその時々で調整可能らしく、自分の得意な体位に持ち込んでとどめを、という傾向もない。


その瞬間その瞬間に最適な手段で技を繰り出す。


単純なようでとても難しいその技術を、最も簡単にこなしてしまうのが異常なのだ。


まるで複数の人間の戦い方を合成しているようだと評した人間もいるほどだ。




────彼女もまた、等しく狂っているんだよな。




九龍院に属している以上、自分自身も狂っているのだろうとは思っているけれど。


秀夜は自己を省みながら、ようやく冷めた紅茶を飲み干した。


玲華の魂に絡みつき、侵食する何か。きっとそれは、こちらに来た自分達に何かしらのヒントになる。


そうじゃなきゃ、困る。


そう思いながら、秀夜は意を決したのだった。

まずは謝罪を。

予定通りの掲載ができず申し訳ありませんでした。確認ボタンを押さないままブラウザを閉じてしまいまして。


予定時刻より大幅に遅れましたが、掲載いたします。


連続投稿は今日で終了となり、次回更新は2週間後になります。5月22日の12時です。

本日は申し訳ありませんでした。

次回もよろしくお願いいたします。

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