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【本編完結済】殺戮の皇女  作者: イチノセ
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92  慟哭のカンタータ - 28

少し意味深な表現があります。

ご注意ください。

「秀夜」


「っ……はい?」




────あっぶね、(意図的に)意識手放してた。何の話をしてたんだ?




「聞きたいことがあるんだけど」


「はい、俺が知ってることなら」




ちらりと玲華の顔色を窺えば、まだ頬は赤く染まっていた。『いきなりどうしたんだろう?』と顔にかいてある。たぶん。


意識を明後日の方にやってから、そんなに時間は経っていないと思われる。たぶん。




「何故皇帝陛下は、不可解な殺人事件の犯人がレイエンフィリアだって断定しているんだ?」




空気がピリつく。


玲華の表情も硬くなり、眉根を寄せながら暁人の顔を見つめている。


ここはもう正直に、頭を下げるしか無いと思った。




「ごめん、それは俺が悪い」


「「は?」」


「いや、昨日の夜レイエンフィリア……というか、玲華に襲われるまでの間に、俺も俺で調べてたんだよ、この事件について。……父上からの勅命で」


「あー……」


「んで、事件があったところに行ったり、第一発見者に話を聞いたりしていたんだ。そうしたら、足跡とか、血痕とかが残っていて……」


「それを追ったら、レイエンフィリアに行き着いた、と?」


「まぁ、そうなるね」


「何で私に行き着いたんですか?血痕と足跡だけじゃ……」


「えぇっと……怒らない?」




恐る恐る、と言った風に玲華の顔を覗き込むと、「?」という顔になる。




「聞いてから、決める」


「怒られる覚悟しかないんだけど」


「じゃあ俺が止めるよ」


「…………」




本当かなぁ、とは思うけれど、言わないのも罪悪感があるので、覚悟を決めて顔を上げる。




「まず謝ります、本当にごめんなさい!勅命が下ってからレイエンフィリアが怪しいんじゃないかと思って、すぐにレイエンフィリアに監視用のゴーレムを付けましたごめんなさい!!」


「「…………」」


「ちなみに、今もデス」


「「…………」」


「な、何か言って……」


「…………監視用のゴーレムで、殺人現場を見て、それで?」


「父上に、レイエンフィリアが怪しんじゃないかと思いますー、って、報告しました。その時はまだ父上が転生者って知らなくて……」


「「…………」」




────沈黙が重い。やば、俺泣きそう。




「玲華」


「……………」




2人の声が、聞いたことがないくらい低い。




「俺、今から目も耳も塞ぐから」


「……はい」


「半殺しまでは許可する。殺さないように気をつけろ」


「了解しました、暁人様」




入れてはいけないスイッチが、入ってしまったような。




「ちょっと待って、落ち着こう⁉︎謝るからさ!土下座でも何でもするから!!話せばわかるよ話せば!!」




表情が消えて、完全に仕事モードになっている玲華が、音もなくソファから立ち上がる。視線は秀夜に固定したまま、一切ブレない。




「玲華、一旦止まれ」




機械のように、玲華の身体がピタリと止まる。




「質問を追加する。秀夜、答えろ」




────さっきまでずっとキリルモードで話してたのに急に暁人の喋り方になったんですけど⁉︎この人ヤバイ怖いこれガチギレじゃない⁉︎迂闊な事言ったらガチで殺される……!!




「…………は、はい(震え声)」


「監視って、どこまでやってた?」


「!!そ、そうよ!お、ふろとかまで、入ってきてないですよね⁉︎」


「風呂は覗いてない!そこは断じて!!と言うか室内にも入ってない!監視してたのは窓の外から!!今もそう!!」




秀夜がフイ、と指先を動かせば、窓をすり抜けてゴーレムが入ってくる。


それは四角い監視カメラに羽が生えたような、異様な見た目のゴーレムだった。全体的に石っぽいモノでできている。監視カメラならばレンズに当たる部分には、紫色の宝石が埋め込まれている。これが核となるものだろう。


ゴーレムだ、と言われなければ『何だこの岩っぽいものは』と言ってしまいそうだ。




「こんなものが窓の外を飛んでたら、気付くと思うんだけど……」


「一応、姿隠しの術もかけてます……」


「ああー、なるほど……」


「玲華、納得するな。こいつ、風呂は覗いてないとしか言わなかったんだぞ」


「?うん」


「風呂“は”覗いてないって、言ったんだぞ」


「うん……………………うん⁉︎ちょっと待って⁉︎」




玲華がバン!机を掌で叩き、真っ赤な顔で、何とも言えない──羞恥と怒りとその他諸々が混ざった──複雑な表情で顔を寄せてくる。




────あ、玲華ちゃん……じゃなくてレイエンフィリア、まつ毛ながーい。




「秀夜様、何も見てないですよね⁉︎」


「あー、いやー、えーっとーー」


「なにも!見・て・な・い・で・す・よ・ね⁉︎」


「……………………ごめんなさい序盤は見てました!!」


「〜〜〜〜〜〜っぅぅぅうううう!」




玲華の顔がさらに真っ赤になり、じわりじわりと涙が溜まっていく。最終的には顔を覆って蹲ってしまった。




「あー、っと、ほんとに、序盤だけだから……ね?玲華ちゃんが“暁人に”押し倒されたあたりまでだから」


「見てんじゃねぇか、充分アウトだろ」


「玲華ちゃん悪くないから!押し倒した暁人が悪い!」


「何だその理屈。殴るぞ」


「ひっ!」


「…………ぃもん」


「ん?玲華ちゃん、なんて?」


「見てる時点で、許さないもん」




────もんって言った。もんって。かわいー……ってそこじゃないわ俺!!





「あーっと、玲華ちゃん。君の保護者様がスッゲー顔してんだけど、どうにかできない?」


「誰が保護者だ」


「?暁人は保護者じゃないですよ?」


「うん、そこじゃない!どうにかできない?の方を拾って欲しかった!」


「……あきひと」


「……なんだ」


「半殺し、する?」




玲華がコテン、と首を傾げながら、上目遣いに暁人に問う。


その様は可愛い。とても可愛い。


けれど可愛い仕草とは裏腹に、言っている内容が大変よろしくない。




────その顔で、その仕草で、その言葉はヤバい。そして俺の寿命もヤバい!!

秀夜の寿命カウントダウン……もとい、次回更新は明日、5月8日の12時です。


今回はとても楽しく書きました。

普段は割と暗くて複雑な物語(だと思っている)なのですが、今回はコミカルになりました。秀夜さんが悪いです。ベッドインのあたりまで見ていた秀夜さんが悪いです。


ベッドシーンっぽいものまで書いておいて、今更前置きしても意味ないかなぁ、とも思ったのですが、一応書かせていただきました。


意味深です。

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