表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【本編完結済】殺戮の皇女  作者: イチノセ
89/160

89  慟哭のカンタータ - 25

「この忙しい時に時間を作れとは、無茶をおっしゃいますね」


「仕方がないだろう?可愛い妹のためだ」


「予定を無理やりこじ開けた俺を誰も褒めてくれない」


「よくやったね、褒めてあげるよ」


「棒読みです、殿下」


「思ってないからね」


「なんて主だ……」




そんなやりとりを少しして、時間を潰す。

目の前の書類にざっと目を通し、サインをして、次の書類へ。ノックの音はまだだろうかと思いながら、考えない考えない、と自分に言い聞かせて。


──耳が音を捉える。




「来た。レイエンフィリアたちの足音だ」


「では、お茶を用意いたします」


「ああ」




アーノルドがたてるカチャ、と言う小さな音を聞きながら、次第に大きく鮮明に聞こえてくる足音に注意する。




────さて、お姫様はどうなった?




響くノック。

応答の声と返事。

扉が開けば、そこには──




「…………父、上?」




意図しない来訪者、が。




♔∴∵∴♔∴∵∴♔∴∵∴♔∴∵∴♔∴∵∴♔∴∵∴♔∴∵∴♔∴∵∴♔∴∵∴♔∴∵∴♔




『今日の10時ごろ、僕の予定を空けておくよ。それまでには済ませて、謁見の間においで。暁人』




そう言われたのだと言うキリルに従い、エイルワードの謁見の間に向かっていたレイエンフィリアは、目の前に扉がある、というところまで来て足止めされてしまった。




「レイエンフィリア第3皇女殿下、今しばらくお待ちください」


「?……お兄様と約束をしているのだけれど」


「存じております。ですが、急な来訪がありまして」


「急な来訪?どなたか聞いても?」




気まずそうに視線を逸らし、衛兵は言葉を濁らせる。




「申し訳、ありません」


「いいえ、私こそごめんなさいね、無理に聞き出そうとしてしまって。……なら、控えの間で待たせてもらおうかしら。案内をお願いできる?」


「承知いたしました。こちらです」




謁見の間のすぐ近くに用意されている控えの間に入り、キリル、アラド、ベンクと共にソファに座る。


あくまで一時的に待つための部屋なので、広さそのものはあまりない。四畳半といったところだろうか。




「レイエンフィリア、申し訳ありません」


「何を謝るの。来訪者のことなんてわからないもの、気にしなくてもよくってよ」


「……ありがとうございます」




レイエンフィリアの右隣に腰掛けたキリルは、ペコリと頭を下げた。


真正面に座ったベンクは、興味深そうに周りを見回しながらアラドに声をかける。




「……それにしても、来訪者って誰なんでしょうね」


「来訪者、としか言われなかったから、見当もつかないな」


「殿下、心当たりありませんか?この時間はいつもこの人が来てるなー、みたいな」


「心当たり……うーん」




誰だろうか。

そう考えたと同時に、扉がノックされる。




「レイエンフィリア第3皇女殿下、王太子殿下からご伝言で、準備が整ったから来るように、とのことです。謁見の間にどうぞ」


「ええ、ありがとう」


「失礼いたします」




足音が遠のくと、廊下に出て、改めて扉の前に立つ。


衛兵に目配せをして、扉をノックさせる。




「レイエンフィリア第3皇女殿下です」


「通しなさい」


「はっ。殿下、どうぞ」




衛兵が開けた扉をくぐり、エイルワードに向けて首を垂れる。




「お兄様がお呼びだと伺いましたので、参上致しました」


「ああ。待たせて悪かったね。さ、お座り」


「失礼いたしますわ」


「護衛の2人はお下がり。アーネスト、君もだ。人払いを頼むよ」


「承知いたしました」




扉が閉まり、人の気配が消えた途端、エイルワードが溜息をついた。




「困ったことになったよ」


「困ったこと?」


「まずはお座り。お茶が冷めてしまう」




小さく一礼して、レイエンフィリアはキリルと共に席に着く。テーブルの上には、すでに2人分の紅茶が用意されていた。エイルワードの分の紅茶は、少し減っているように見える。




────お兄様が、数口しか紅茶に口をつけられないような来客者……?




「父上が来た」


「……お父様が?」


「ああ。君の殺戮行為が目に余る。話を聞ききたいから私も同席しろ、とね」


「…………」




目を見開いて、口を噤む。居た堪れなくなり、視線を外した。




「レイエンフィリア」


「……お互い、全てを話さないかい?口調も立場も全て捨てて、素の自分達で話そう。なぁ、キリル。君だって、薄々勘付いているんだろう?」


「……あくまで、なんとなく、です。確証はありませんが、そうなんだろうな、と」


「……?キリル、どういうこと?」


「…………」




キリルはレイエンフィリアに視線を向けず、エイルワードに視線を向け続けている。


助けが欲しくて、レイエンフィリアはエイルワードを縋るように見つめた。




「お兄様……」


「レイエンフィリア、腹を割って話そう」


「…………」


「人払いは済ませた。ここには僕たち3人しかいない。誰に聞かれる話でもないんだよ」


「……待ってください、お兄様」


「君を庇おう、レイエンフィリア。それを約束する。だから話してくれ」


「……そんな、まさか」


「レイエンフィリア、キリル。“君は何者なんだ”」

次回更新は明日、5月5日の12時です。

よろしくお願いいたします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ