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【本編完結済】殺戮の皇女  作者: イチノセ
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65  慟哭のカンタータ - 04

ハッとした顔で、玲華が暁人を見る。




「それに、その前だって」




♔∴∵∴♔∴∵∴♔∴∵∴♔∴∵∴♔∴∵∴♔∴∵∴♔∴∵∴♔∴∵∴♔∴∵∴♔∴∵∴♔




「…も……こし、……く……?」




♔∴∵∴♔∴∵∴♔∴∵∴♔∴∵∴♔∴∵∴♔∴∵∴♔∴∵∴♔∴∵∴♔∴∵∴♔∴∵∴♔




玲華の耳に届いた、小さな言葉。

その痕すぐに誤魔化されてしまったが──




「俺はあの時、こう言ったんだ。『もう少し、奥か?』と」




小さな疑問が、なくしたピースが、繋がっていく。




「お前がいた場所から少し奥の場所。そこには何があった?」


「【悪魔】が宿る、指輪……」


「そう。あの時、俺の頭の中には【悪魔】の宿る器がどこにあるのか、それがわかっていた。器の在処が、あの瞬間の正解だった。そして──」




『はい、その感覚は“合っています”よ、殿下』




そう言った彼には。




「そして俺には、その場所にあるものが一体なんなのかも、視えていた」




計算式を見て、計算の過程を経ることなくただ答えだけを与えられる。


何故視えたのか。

それがなんなのか。

何を意味しているのか。

役に立つのか否か。


その全てがわからないにも関わらず、それが正解であるから与えられる。




「それに、俺があの日、あの屋敷にいたのだって能力のせいだ。『ファウルス邸に行け』と目が言ってきたから、よくわからないまま歩いた。歩く度に『この先に行け』と目が言うから進んで行った。その先には、レイエンフィリア、お前がいた」


「…………」


「扉の前にいた獣の正体に気付けたのも、【色欲の悪魔】の正体がクルースにとって大切な人物だと気付けたのも、全部能力です」




嗚呼、そうか。と、玲華はどこか納得した面持ちで暁人を見た。いっそ不自然なほど、彼は人を導く力がある。そこに違和感は感じなかったけれど、なるほど、能力も相まったモノだったのか。




「地道に探しましょうか、そんなやり方で見つかるのかは、わからないけれど」


「やらないよりはずっとマシですよ。見つけなきゃいけないんですから」




人のために見つけるのではない。人に救う悪魔を殺してあげるために。




♔∴∵∴♔∴∵∴♔∴∵∴♔∴∵∴♔∴∵∴♔∴∵∴♔∴∵∴♔∴∵∴♔∴∵∴♔∴∵∴♔




ウェリンターレ王国に到着してすぐ、レイエンフィリア一行は王城の規模に瞠目した。


まず、広い。


レイヴヴィヴェーニアの皇城は何階建てにもなっている。上に伸びている分、敷地をたみが使えるようにしているのである。

対してウェリンターレ王国は、歴史ある大国故に、大きな一階建ての建物がどこまでも広がっている。建物と建物は露出した廊下で繋がれ──学校の渡り廊下を思い出した──目に鮮やかな建物は絢爛と聳え立っている。


そして、赤い。


白を基調とするレイヴヴィヴェーニアとは対照的に、目の前の王城の外壁はどこを見ても赤、赤、赤。入口と思しき門の両脇には金や青、緑といった鮮やかな装飾が施されている。




「こ、れは……」


「予想以上ですね……」




馬車から降り、見上げるほどの荘厳な門を前に、レイエンフィリアとキリルはポカンと口を開けそうになるのを必死で抑えていた。


目の前には、レイエンフィリアを出迎えるために王太子ほか、大臣や使用人が整然と並んでいる。




「ようこそいらっしゃいました、レイエンフィリア殿下」


「ええ。お出迎えありがとうございます、アスガンテ王太子。この度はレチータ王太子妃のご懐妊、おめでとうございます」


「どうもありがとう。さ、城内へ。父上がお待ちです」




出迎えたアスガンテ王太子は、女性好きという噂も頷ける甘いマスクの持ち主で、しかし、スラッとした背や腕からは剣の腕が立つのであろうことが見て取れた。




────ただ女好きってだけじゃなく、地位も賢さも剣の技量もあるのか。厄介だな。




こういう人間が1番苦手だ、と、苦虫を噛み潰した顔を隠しながら、レイエンフィリアの後ろでキリルは顔を伏せていた。


レイエンフィリアの護衛一行は、荷馬車や護衛を残して城内へ足を踏み入れる。大臣他数名が同行するが、先導する王太子はレイエンフィリアにばかり話しかけている。


正直、不愉快だった。


何が不愉快って、レイエンフィリアが顔を扇で隠すほど、王太子の距離の縮め方がおかしいことだ。

扇で顔を隠すのは、気まずい、顔を見られたくない、という時に彼女がとる行動だとキリルは記憶している。その行動をとるときは全てそういう意味であるとは限らないが、少なくとも、この状況ではそうだった。




「……まずいな」


「どうしました、キリルさん」


「殿下のやる気がどんどん下がってる」


「なぜっ⁉︎」


「パーソナルスペースにずかずか入られるのを嫌うんだ、殿下は」


「あー、たしかに、近いですね。距離」




視線の先には、皇女として申し分ない表情で接するレイエンフィリアと、彼女の右横を歩く甘い笑顔を浮かべたアスガンテ王太子。

一歩ほどの隙間を開けてついて歩くキリルたちは、お互いにしか聞こえないほど小さな声で会話をしているが、2人の会話はよく聞こえる。


弟がいるだの、自分の仕事がなんだの、レチータ妃の惚気に兄弟たちの自慢。


今じゃなくていいだろう、とも思いつつ、早く謁見の間についてくれとも思う。

はぁ、と重苦しいため息をついて、心を無にして前方の2人を見つめた。


この後、自分の身に降りかかる厄災のことになど気付かぬまま。

伏線回収回続きです。

次回から展開が動きます。


次回更新は1/1、12:00です。

よろしくお願いします。

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