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【本編完結済】殺戮の皇女  作者: イチノセ
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64  慟哭のカンタータ - 03

レイエンフィリアが隣国、ウェリンターレ王国に行く理由は、王太子妃の懐妊祝いである。


高齢の国王ではなく、じきに国王になるであろう王太子にはすでに後宮が与えられており、正室の妃である王太子妃以外に4人の妃がいる。


と、ここまでは周辺諸国の者ならば周知の事実だ。『そういうもの』として知っている。




「で、今回は王太子妃のレチータが懐妊したから、姉殿下の名代としてウェリンターレに向かっている、と……」


「ええ。レイエンフィリアの知識を貰っただけだけれど。どうもあっちの世界でいうところの中国のような国だそうよ。後宮があったりとか、正室の他に四妃がいたりとか」


「宦官の制度もあるのか?」


「そこまでは……でも、後宮があるのなら揉め事も多そうよね?【悪魔】がそこに巣食う可能性もあると思うわ。女の諍いは面倒よ」


「出来れば関わりたくないな」


「関わらないに越したことはないわね」


「国を越える前に、持っている知識をもらえないか。流石に、ウェリンターレの知識は少ない」


「構わないわ」




今日も今日とて、何故かレイエンフィリアとキリルは馬車に揺られながら険しい顔で話を続けていた。


馬車は隣国へと続く街道を進んでおり、その前後を【女帝】と【節制】の衛兵や騎士たちが馬を操り先導、後方の確認を行なっている。


移動を始めてから既に2日が経っており、宿をとりつつ、王太子妃の懐妊を祝う祝宴会場──ウェリンターレ王国の王城──に向かっている。




「昔の中国という表現が1番近いわ」




本来なら後宮は国王のものだが、齢50を越えた国王は、自ら後宮を王子たちに明け渡した。


最も王太子に近いとされていた現王太子・アスガンテは、兄弟たちの中で最も早く、正室が『王子』を懐妊したと発表した。今回の遠征はこの発表が為されたが故のものである。


兄弟の中で、最も早く王子が生まれた者が王太子となり、次期国王に最も近くなる。


アスガンテ以外の兄弟たちは元々王位に興味はなかったらしく、後宮にはあまり通っていなかったというのもあるが、アスガンテはめでたく王太子となった。


そんなアスガンテの王子を身籠ったのが、宰相の娘のレチータ妃。元々女性好きなアスガンテが、誰よりも先に正室として迎え入れた女性だ。


そして──




「正室の下にいる四妃。その中の1人が、アラドの姉、メイリアさんだった」




貴妃・メイリア。

淑妃・デメテル。

徳妃・ティティアン。

賢妃・ヴェネシア。




地方貴族の娘だったメイリアは、遠征に来ていたアスガンテに見初められて貴妃にまでなった。


現在、貴妃の地位は空席となっているが、それも時間の問題だろう。




「順番が、逆なんだな。後宮モノの小説だと、皇帝になった後に妃を決めるものだが」


「ウェリンターレでは逆なの。王太子を決めるために、王になる前から妃を決める」




しかしそこで、疑問が一つ、湧き上がる。




「何故、貴妃のメイリア妃は亡くなったのかしら?」


「死因までは、アラドも聞かされていないらしいな」




メイリア妃が亡くなったのは1872年。

今から7年も前だ。


そこでふと、玲華は気がつく。




「ねぇ、キリルがラ・ステッラに拾われたのって何年前?」


「ん?ああ。っと……7年前、だな。1872年の、9月」


「……そう」


「それが、どうかしたか?」




玲華は否定の意味を込めて首を振る。




「いいえ、違うの。ただ……ふと、思ったの。どうしてラ・ステッラは、ウェリンターレに来ていたのかしらって」




暁人がハッとした顔で玲華を見る。

そうだ、彼女は地位があるというだけで皇女をしているんじゃない。賢さなくして、地位は得られないし確立できない。


ただ同い年だからというだけで、玲華は美風を任せられたわけじゃない。そもそもの頭の回転の速さ──利巧さ、とでもいうべきか。それを兼ね備えているからこそ、壮也は玲華を、美風のそばに置いたんだ。


なるほどなと、1人納得する。

だからあんなにも儚いんだと。




「……調べてみるか?」


「いいえ、今はメイリアさんのお墓参りの方が先だわ。それに【憤怒の悪魔】も気になるし……」




今回の旅の荷物には、【強欲】と【色欲】の悪魔が宿る指輪も含まれている。

【憤怒の悪魔】の状況を出来うる限り集めたかった。




「漫画みたいに共鳴して、お互いの位置とか探れないのかしら」


「……俺の目も、そこまで有能じゃないからなぁ」




正解を見抜く目。

そこに至るまでの過程、道程、理由、その全てを飛び越えて、ただ、結果や結末だけを見抜く目。使えるようで使えないそれは、暁人自身使いこなせてはいない代物だ。


使いたいと思ったら使えるモノではなく、唐突にふと、結果だけが脳裏に閃くのである。




「それって、どういうふうにわかるの?本当に、こう……ポンって閃くような感じ?」


「……覚えてるか、俺がファウルス邸の地下でちょっと妙な行動をとったこと」


「妙な行動?」




♔∴∵∴♔∴∵∴♔∴∵∴♔∴∵∴♔∴∵∴♔∴∵∴♔∴∵∴♔∴∵∴♔∴∵∴♔∴∵∴♔




「……なんだか、嫌だ……。これを、見ていたく、ない……」




♔∴∵∴♔∴∵∴♔∴∵∴♔∴∵∴♔∴∵∴♔∴∵∴♔∴∵∴♔∴∵∴♔∴∵∴♔∴∵∴♔




────そう言ったお前に、俺はこう返したんだ。




♔∴∵∴♔∴∵∴♔∴∵∴♔∴∵∴♔∴∵∴♔∴∵∴♔∴∵∴♔∴∵∴♔∴∵∴♔∴∵∴♔




「……そう、ですね。はい、その感覚は“合っています”よ、殿下」




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伏線回収回です。

正解だけが見える世界というのはどんな世界なんでしょう?欲しくない能力ランキングランクイン目指します(大嘘)


次回更新は12/31、12:00です。お楽しみに。

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