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【本編完結済】殺戮の皇女  作者: イチノセ
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62  慟哭のカンタータ - 01

「ねぇ、アラド。お姉様のお墓参りに行きたくない?」




事の発端は、レイエンフィリアのそんな一言だった。




「……はい?」


「お姉様のお墓参りよ。彼女がお亡くなりになってから、一度も行けていないのでしょう?」


「そ、れは……そうですが」




なら、と。レイエンフィリアは慈愛に満ちた表情で言う。早速行こうと言い出しそうなほどだ。




「縁を切ってしまったご両親にも、今は私の護衛をしていると、きちんと伝えましょう?それに私は国賓扱いになるから、王城へ上がって、お墓参りをすることも可能だわ」


「しかし──「それにね」」




美しい人差し指を口元に当て、茶目っ気のある表情でさらに言い募る。




「お姉様から頼まれているのよ。自分の名代としてウェリンターレ王国に行ってほしい、とね」




その言葉を聞いて、アラドは息をつめた。それに言い返すことはできなかったからだ。


国を背負う者が隣国へ行き、そのついでに部下の親族へ挨拶へ行く。部下の1人が隣国出身ならば、おかしいことではない。


国賓として来ている皇女が、隣国の寵妃の墓参り、と言うのはおかしな話だが……




「貴方のお姉様だ、ときちんと説明すれば、納得すると思わないかしら?」


「……そ、うでしょうが……しかし……」


「私は他の皇族に比べて身軽だから、地方遠征にはよく行きますのよ?ねぇ、マリン?」


「ええ、そうですね。多くて、月に2度ほど遠征に行ってらっしゃいます」


「ほら。船を使って国外へ行ったことだってあるわ。大丈夫よ?」


「……ほら、と言われましても、納得できません。自分は、あの家と縁を切ったんです。“貴女ご自身が『行くからついて来い』と命じない限り”自分は頷けません」




レイエンフィリアはぽかんとした顔で、アラドを見つめた後、立ち上がり、笑みを深めてこう言った。




「キリル、アラド、ベンク。『第14部隊 貿易管理部隊』部隊長、『ラ・テンペランツァ』こと、アイリスフィールお姉様からの命令があり次第、隣国、ウェリンターレ王国へ向かいます。隣国にて、私がなんと言い、どこへ向かおうとついて来なさい」


「「「承知いたしました」」」


「マリンはいつも通り、ここをお願いね」


「はい、承知しております」




跪き、首を垂れた3人を見つめ、レイエンフィリアは再び言う。




「ごめんなさいね、アラド。でもやっぱり、私は行ったほうががいい気がするわ。だから、お願いね」


「……はい」




少々暗くはあるが、アラドはしっかりと頷いた。そんな彼を横目に、キリルはふと思ったことを聞いてみる。




「……ところで殿下、先程、『アイリスフィール姉殿下からの命令があり次第隣国へ向かう』とおっしゃっていませんでしたか?」


「ええ、言ったわね」


「そのさらに前に、『姉殿下から頼まれている』とも、おっしゃっていませんでしたか?」


「ええ、言ったわね」


「…………矛盾しております」




困惑気味の顔で、キリルはレイエンフィリアを見据えた。嫌な予感がする。




「じきにお姉様から頼まれます。私が名代として行くと宣言するつもりですから」




────ほらこれだ。自ら厄介ごとを引っ張って来やがって。




と言いたくなる気持ちを全力で飲み込んだ。アラドを墓参りに連れて行ってあげたいと言う気持ちは本物で、純粋にただそれだけなのだろう。


連れて行ってあげたいから、自分の立場を利用する。


そこにあるのは純粋な好意で、躊躇いもないのだろう。きっと、姉殿下もゴーサインを出すことだろう。部下を死んだ姉に会わせてあげたいと言えば、いくらでも同情は買える。


しかし──




────皇族を巻き込んで墓参りに行くほど、普通は肝据わってないって……




頭を抱えたくなる衝動を必死に堪え、隣に跪くアラドに小さく呟く。




「アラド、諦めろ」


「キリルさん助けてください、俺、国の名前背負ってる人の名前を借りて墓参りなんて行ってられないですよ」


「殿下は純粋に好意で言ってるんだ。あと多分、さっき衛兵に頼んでいた書状は……」




部屋の中に、ノックの音が響く。

全員の視線が扉へ集まり、レイエンフィリアは3人の礼を解いて立ち上がらせる。


場の空気を読んでか、ベンクが扉を開けて応対した。




「……はい、では確かに。……殿下、アイリスフィール姫殿下より直筆の書状です」


「……は?まさか」


「アラド、多分そのまさかだ」



ベンクから書状を受け取ったレイエンフィリアは、内容に目を通し、アラドへ微笑みかけた。




「アイリお姉様から、謁見の許可が降りたわ。あとでみんな一緒にいきましょう?」




げんなり、と言う言葉がぴったりなほどアラドの表情が言葉で表現しにくい複雑なものになる。




────嗚呼この人、玲華としてだけじゃなく、ちゃんと皇女らしい図々しさも持っているんだな。




そう思うと同時に、キリルは疑いの目をレイエンフィリアに向けた。




────玲華、何かあったな。




今日の夜、無理矢理にでも時間を作れないだろうかと思ったが、自分が考えるよりも聞いたほうが早いと思い至り、キリルは思考を止めた。

今更気づいたのですが、全然殺戮してませんね。

タイトルに疑問を持つ方がいてもおかしくない……


大丈夫です!

起承転結の転あたりで殺戮しますので!(物騒)


要するにまだ出てこない……あちゃー


次回更新は明日、12/29、12:00です。

よろしくお願いいたします。

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