表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【本編完結済】殺戮の皇女  作者: イチノセ
55/160

55  共鳴のレチタティーヴォ - 16

1863年

少年が死んだ日。

或いは、少年が“少年”ではなくなった日。

暁人が意識を浮上させた時、妙な体の軽さを感じた。




────なんだ?体が軽い。




体は鍛えていたし、身長も平均より少しだけ高かった暁人は、同い年の一般男子より少し体重はあった。


筋肉質な体は、質量のわりに機敏な動きと見た目をもたらしていた。刀を振るうわりに、肉体は細身な方だったし、ヒトじゃない【暁】にも引けを取らない動きをしていた。


なのに、軽い。

まるで体が子供になったかのようだ。


確かめたいけれど、開いているはずの目には暗闇しか映らない。次第に暗さに慣れるだろうと思っていたのに、そんな気配は全くない。




「……っ」




知らない場所では何もできないと考え、見えない世界を手探りに動いてみる。


背中には壁の感触。足元には床の感触。




────このまま横に移動して、壁に肩がつくまで、動く。




ゆっくりと横に移動した。

背中は壁につけたまま、慎重に、肩に神経を集中させ移動する。その回数、2回。


ゴツゴツとした壁の感触がある。

左手で触れると、規則的な石の感触がした。




────レンガ製の部屋か?暗いのも頷ける。光が届かないんだ。




異常な体の軽さに驚きつつ立ち上がり、壁伝いに前に移動する。1歩、2歩と進んで、4歩目。靴の先が壁にぶつかった。


部屋の一辺は、自分の足で4歩分。じゃあ、横は?


ゆっくりと方向転換して、また進む。一歩の歩幅を変えないように気をつけつつ、歩くと──また、4歩。


もう一辺は?──4歩。

最後の一辺は?──4歩。




────広さは……2畳の部屋くらい、か?それに、1箇所だけ、牢屋のような鉄格子がある。




鉄製と思われる、丸い棒が何本かあった。

硬くて、冷たくて、触れるとざらりとしている。おそらくは、錆。




────ここはどこだ。今は何時なんだ。




周囲は真っ暗。何も見えない。光が一切入らないから、目も全く慣れない。


体に触れてみる。

上半身に纏っているのは、薄い布を適当に服にしました、というような粗末なもの。下半身も同じだった。

靴も履いてはいるけれど、靴底は薄くボロボロで、先ほどから何度も脱げそうになった。


意識を集中させ、外の気配を窺う。

目が見えないのはむしろ都合がいい。意識を集中させられる。


鉄格子の向こう、同じ石でできているのであろう廊下。石でできたものは音を反響させやすい。




────足音?それも数人ってレベルじゃない。




ガシャガシャという、例えるなら鎧姿で走っているような忙しない音が、遠くから反響して聞こえる。


けれど、遠い。




────あーくそ、目が見えない。なんなんだ。




目が見えない理由がわからない。

目は開けているはずだ。なのに光が一切目に映らない。


目元に手をやってみる。

手に触れたのは布の感触。




────布?ならなんで気付かなかったんだ?




目元に何か巻かれているのなら、すぐに気づくはずなのに。目元にはあまり違和感を感じない。


布の感触をたどり、後頭部を弄ると乱雑な結び目があった。無理やりにほどき、目元を覆い隠していたものを外す。


床に放り投げたそれは──




「…………っ」




皮。


革じゃなく、皮。

きっと、誰も彼もの身近にある。

きっと、毎日目に映っている、皮。


人間の、皮。


独特の風合い、色、感触。

幾度となく、正義の名の下に人を殺めてきた暁人には、直感的にわかった。わかってしまった。


光を取り戻した視界に、1番に映すべきじゃなかったと後悔した。


かぶりを振って、鉄格子を睨む。牢屋の扉のように、四角い鉄製の枠に鉄の棒が並んでいる。




────鍵か?それとも閂?




鉄格子の向こうは鉄の扉。

けれどその隙間から光が漏れていて、それだけの光量があれば、暗闇を見ることは容易だった。


目を見張るのは、壁。


四方を囲む壁は所々が赤黒く染まっている。髪がこびりついていたり、場所によっては肉が乾いて固まっている場所もあった。


凄惨、だった。まるで拷問部屋だ。


周囲を見回して、気付く。




────視線が、低い?




自分の体を見下ろす。

細い腕、細い足。適当にあつらえられた上下の服。サイズの合っていない薄い靴。




────お前、いくつだ?




自分がわからない。


外の喧騒が近づいてくる。




────この子供は誰だ。




ガシャガシャと近くで音がした。




────俺は、何者なんだ。




ガシャンと音がして、次いで重く鈍い音が響く。




────この世界は、なんだ。




「お前!大丈夫か⁉︎無事か⁉︎生きてるな⁉︎……おい!生きてる子供がいるぞ!!」




誰かに声をかけられたけれど、暁人の耳には届いていなかった。


少年に声をかけた男の視界に飛び込んできたのは。




「…………っな」




幼く、細く、弱い。

そんな、非力な子供の姿だった。

描写し忘れたのでここで補足を。

書き加えようと思ったのですが、どこに書くべきか迷ったままになっていました。


少年の目元を覆っていたのは、人間の皮、タオル的な紐代わりの布の順です。

皮だけで縛っていたのではなく、耳の手前あたりから反対の耳の手前までを人の皮で覆い隠し、その上から布で縛っていました。


付けた当初こそ違和感を感じるでしょうが、じきに体温と入り混じってわからなくなるかな、と。


こうやって書いてみるとグロいな……大変失礼致しました。でもまぁ、R-15つけていますのでご了承の上ですよね?


次回更新は11/7、12:00です。

よろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ