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【本編完結済】殺戮の皇女  作者: イチノセ
108/160

108  激動のノットゥルノ - 1

皇城で最も大きな謁見の間。




「審問会を始める」




後ろ手に両手を拘束されたレイエンフィリアとキリルは、低い声でそう宣言した皇帝の前に跪いていた。


両サイドに座る大臣や国中の貴族、正面に座す皇帝と皇后、そして王族たち。


彼らの視線には、レイエンフィリアたちを警戒視するものが多い。畏れ、疑念、などなど。




「表をあげよ、レイエンフィリア」


「…………」


「……レイエンフィリア、お前は、皇族でありながら自分が何をしたのか、わかっているのか?」




それは皇帝としての言葉と言うよりも、九龍院の者としての言葉だった。転生者が今以上に目立つな、とでも言うような。




「何故こんな事をした?」


「…………陛下。陛下こそ如何(いかが)なさったのです?人殺しなど、罪でもなんでもないではありませんか。ほら、ご覧くださいな。この場に何人いらっしゃいます?()()()()()()()()方は」




死んだ目で嗤いながら、レイエンフィリアは周囲を見回した。“死”と言う概念がわからない貴族らは、自分が何故召集されたのかもわかってはいないだろう。




────嗚呼、ほら。




偶々目線を向けた先の貴族たちの中にも、気まずそうに視線を逸らしている者が何人かいる。


ザージェ伯。

皇城に納めている税金以上に、領民から税金を徴収し、懐に蓄えている。その隣のリベット子爵も加担。


グウェル公。

公の奥方は領民から集めたお金で贅沢三昧。公自身も、友人たちと領地で遊び呆けているのだとか。


リージェフ男爵夫人。

グラペッツィン子爵。

フェンディオ男爵夫人。

ジェンシャング侯爵。

オーレンズ侯爵。

ヴィオーダン伯爵。

ジェンディクス公爵。


視線を向ければ数え切れないほど。




「しかし、お前は……」


「陛下の命で、私の手はすでに血に塗れております。それは陛下も承知しているでしょう?今更何が問題なのですか?たかが、()()()()()()()()()()()()()()?」




九龍院の者が紡ぐ言葉とは思えない発言だ。

否。思いたくない、の方が正しいか。




「陛下、私はね」




美しさ、というのは、武器である。




「人を、沢山」




彼女の美しさは、凶器だ。

その美しい笑顔が、言葉に刃を添える。




「殺さなくっちゃ、いけないの」




キリルが衛兵の大男を蹴り倒す。

死角で拘束を外していたのか、縄は切れ、ブレスレットよろしく腕にぶら下がっている。膝に蹴りを入れられて後方に倒れた衛兵の頭を、追い打ちをかけるように地面へと叩きつける。あれは脳震盪を避けられないだろう。

レイエンフィリアの横にいた衛兵の顎を蹴り上げ、回し蹴りで頭を的確に。倒れ込んだところで、首の骨を折った。


ゆっくりとレイエンフィリアの拘束を解いていく。


周囲にいた衛兵が2人の元へ駆け出したが、レイエンフィリアが動く方が先だった。




「……やられた」




レイエンフィリアの右手が、右目に近づいていく。その目は、普通の目ではない。その事をよく知っている。


細く美しい指が、ズプリと沈んで。


それはそうだ。だって、あの目は──


掴み取ったそれを、引き千切る。


自分が、こうならないように仕込んだ物じゃないか。


右手に握られた青い宝石。

流れ出る大量の血液。


そして、流れ込むレイエンフィリアの思考。




────しまったな、先手を打たれた。




レイエンフィリアに対して抱いていた疑問の意識が、根本から消えていく。無条件に『彼女は何も悪い事をしていない』と頭の中が考え出す。


レイエンフィリアに逆らってはならない。

レイエンフィリアの行動は善行である。

レイエンフィリアの行動に口出ししてはならない。




────嗚呼、嗚呼、思考が統一されていく。




「してやられたな」


「陛下、もう無理ですよ。レイエンフィリアに反感を抱くことすらできなくなっています、既に」




レイエンフィリアに誰かが転生したであろうことは、初日にすぐわかった。【裁定者】に与えられた、視界に捉えた物質を『鑑定』する奇妙な目。


ベッドで横になる彼女を見て、中に別人がいることはすぐにわかった。いっそ羨ましいほどの魔力炉と、その目に宿る能力に恐れ慄いて封じようとしたのは自分自身だ。



『思考の共有』



レイエンフィリアの両目が持つ能力だ。

右目で他者からの思考を受け取り、左目で自分の思考を送る。両目が揃って初めて能力として成立するため、片目を潰した。


自分史上最も美しく完成したブルーダイヤモンドに『略奪』の魔法を付与して、魔力のパイプを通し、視神経と繋げ、義眼と同様──或いはそれ以上の性能を発揮するように。


思考を受け取る目を潰した代償に、視線を集めることも出来るであろう『略奪』を選んだのは皇帝だ。


それらが全て、裏目に出た。


略奪の能力も、無尽蔵の魔力炉と掛け合わせたせいで、付与した能力以上の威力を発揮してしまった。


視神経と魔力のパイプを繋いだ義眼を、レイエンフィリアが自ら抉り取ったせいで、義眼にまわしていた魔力が左目に集まり、片目だけでは使いものにならないはず能力さえ使用可能にしてしまった。




────もう、抵抗する思考さえ湧かない。




貴族たちは、キリルの拘束が外れた時点で我先にと逃げ出した。今ここに残っているのは皇城の関係者たちだけ。



















すなわち、皇族や各部隊隊長の思考が、レイエンフィリアに支配された瞬間だった。

次回更新は、12月4日の12時です。


ですがその前に、新作を超短期間集中連載します。新作と言っても、本物のレイエンフィリアが現世に転生しました、というお話です。新作というか外伝ですね。こちらを読まずに外伝だけ読んでもさっぱりわからない感じだと思います。


リアルタイム感を追求した作品になりますので、楽しんでいただけると幸いです。


それではどうか、よろしくお願いいたします!

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