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【本編完結済】殺戮の皇女  作者: イチノセ
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109  黎明のカヴァティーナ - 9

殺傷シーンがあります。

苦手な方はご注意ください。

陽が、暮れていく。




「おかあさん」




その言葉で振り向いたのは、母だった。

微笑みを浮かべてはいるけれど、私への愛情はあまり感じない。


情報や記憶があるから、自分の娘だとは認識しているけれど、そこには情報以上のものは無い。




「玲華」


「お、かあさん」


「玲華」


「おとう、さん」




父は、体を横に向けて顔だけで振り返る。


2人、は。


私が一歩踏み出した瞬間に、赤い液体になって地面に消えた。




「…………えっ」




周囲を見回しても、そこは景色が広がるだけ。




「────」




耳が何かの音を拾う。

けれどそれはノイズのように聞き取れなくて。




「────────!!」




足元が赤い。

自分の手のひらが赤い。


──視界が、赤い。




「────か!」




音。音が。




「──ろ!れ──、─────!!」




急に、息がしづらくなって。

脳内に言葉が流れ込んでくる。




────玲華!玲華起きろ!目を覚ませ!!




「…………ぁ」




視界が、彼を捉える。

キリルの容姿をした暁人が、玲華の視界のほとんどを占めている。


でもやっぱり、視界は赤い。




「ぁ、あァ」




意識が戻ってくると、目の前は真っ赤だった。




────???




状況が飲み込めない。

玲華の頭の中は、その言葉でいっぱいだった。




────さっき。そう、さっきまで。さっきまで私は、食事をしていたはず。セレティネアと、アディバイルの2人と一緒に。




けれど目の前には、赤しかない。

子供の姿は、どこにも無い。


あるのは、2つの人形だけ。

真っ赤になった男女の人形。

宝石のついたネックレスとイヤリングが、異様に輝いている。




「……ぁ、あぁ、あ」




あたたかい。

身体中に服がへばりつき、懐かしい匂いが鼻腔を刺す。


血、血、血、血、血、血、血、血、血、血、血、血、血、血、血、血、血、血、血、血。




「……玲華、お前……」




キリルが、泣き出しそうな顔で玲華を見つめている。




────わたし、は……




殺したのか?

まだ年端もいかない、未来ある子供を。

美味しそうにスープを頬張って、パンにかぶりついて、笑顔を浮かべた子供を。


殺し、たのか?




「……なにを、しているんですか……?レイエンフィリア様……」




声が、耳に届く。

この食事処の店主だった。




「──ァ」




視界が、また。




「……ッ⁉︎玲華、止まれ!!」




ぼんやりと掻き消えて。


レイエンフィリアは、暁人の目がギリギリ捉えるくらいの速度で店主に飛びかかり、左手で握っていたナイフで、彼の首を刺し貫いた。




「ぁ?」




肉を貫いたまま、その腕を左に振るう。

そうすれば自ずと、ナイフは肉を引き裂いて血が噴き出る。




────あぁ、同じだ。




初めて自分専用の日本刀──辻切菖蒲──で人を殺した時、暁人は相手の首を一刀両断した。

反吐を吐きたくなるほど嫌な男だった。


斬撃だけでも物質を断つ事ができる辻切たちは、5メートルほど離れた位置からでも相手の首を跳ねる事ができた。


その時、暁人はふと思ったのだ。




────あぁ、噴水みたいだな。




と。

目の前の光景は、それとよく似ている。

首が地面に落ちていないから、綺麗に噴き出てはいないけれど。




────こんなことを考えている時点で、俺は普通じゃないな。




唇の端でだけ笑って、視線を周囲に巡らせる。


レイエンフィリアは元々、あまり無い仕事の隙を見つけては城下町を巡り、民の話を聞き、民と共に食事をし、彼らのために跪くことも厭わない人だったそうだ。


当然、城下町ともなればレイエンフィリアと親しい住民が多い。そんな彼らの、目の前で。




「…………っあ、ははっ!」




全身を赤く染めて、血の海に立ち尽くして、悦楽に顔を歪めて。




────嗚呼、もう、戻れない。




気配を巡らせれば、宝石の中で【悪魔】たちが暴れているのが容易にわかる。




「アンリオーネ」


【……うん?】




ずるりと、レイエンフィリアの背から影が伸びて、キリルの傍らで浮遊する。肉体も無く、この場に宝石もないアンリオーネは、一見するとただの影だ。




「あの宝石の中」


【ああ、我らの同胞だね。喰おうか?】


「いや、正体を聞き出してくれ」


【へぇ】




しゅるん、とアンリオーネは人形に入る。

別に宝石でなくとも、実体化しなくていいのであればなんでもいいらしい。人形でも、宝石でも、人体でも、なんなら食べ物でも。




「…………ぁ、ああ、あっははははっ」




高らかに笑いながら、レイエンフィリアは目の前の惨状が理解できない住民を殺していく。


今まで、殺人衝動を理性で抑えていた。

けれどそれを、【裁定者】の言葉により箍を外されて。


もう、レイエンフィリアの殺人衝動を止められるものは無い。


血の池が広がっていく様を、暁人はどこか他人事のように眺めていた。暁人は、場を静観しつつ、自分の思考の片隅、1割にも満たない部分で考えている言葉を表に引っ張り出した。




「嗚呼、……ははっ」




────殺したい。




「俺も心底、壊れてるな」




────あの快楽を、また。




「これは仕事じゃないのに」




────肉も骨も切り裂く、あの感触。




「…………嗚呼」




────鼻腔を擽る、鉄の香り。




目標(ターゲット)が、沢山、いる」




簡素な服の、下。

そこに隠したナイフに、手を伸ばす。




────なるほど、『思考が呑まれる』ね。




暁人はまさに、その感覚を味わっていた。思考が単調になり、視野が狭まり、目標(ターゲット)しか見えなくなる。


仕事の時とは大違いだ。

あの時は、寧ろ視野がどこまでも広がっているように感じたのに。


今は。




「……っふ」




近くにいたふくよかな女性の頭に、深々とナイフが突き刺さる。


周囲がそうと気付く前に、それをすれ違い様にしゃがみつつ抜き、抜いた遠心力のまま半分回って、隣の男を斬りつけた。首を掻き切り、後ろの男性へ。ナイフを逆手に持って、喉の中央へ突き刺す。抜いた勢いでナイフを持ち直し、隣の女性の首を横一文字に切った。


周囲に、赤が舞う。




「嗚呼、アァ、ああ」


【キリル】


「ァ──」


【何者か、わかったよ】


「そ、か……」


【ねぇ、キリル】


「……?」


【そいつら、喰っていい?】


「…………」




アンリオーネの目には、キリルの唇が三日月のように見えた。

これ以上の殺傷シーンはあまり書かないつもりです。書くと私のメンタル的にまずいので。

無いとは言いませんが、無闇には書きません。


前回の更新で白髪の少女とか、レイエンフィリアが転生した描写をしましたが、これについても後ほど書きますのでお待ちください。(待ってる人いるのかな?)


次回更新は2週間後の11月20日の12時です。

よろしくお願いします!

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