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【本編完結済】殺戮の皇女  作者: イチノセ
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102  黎明のカヴァティーナ - 7

犯人と思しき、兄妹を探しましょう。


そう決まって、はや2日。




「おいしーーーい!!おねえさん、このごはんすっごくおいしいね!」


「そうでしょう、私も気に入っちゃって。ここに来るといつも食べてしまうのよ」




一家連続殺人事件の犯人と思われる兄妹。

彼らをマークしているようレイエンフィリアから言われ、指示通りにマークして。彼らを見つけて、そして──




「アディはどう?美味しい?」


「…………」


「?……アディ?」


「え?あっ、はい⁉︎」


「ふふ、美味しいかしら?って聞いたのよ」


「あ、お、美味しいです!ホントに!こんなに美味しいもの、初めて食べました……」


「そうなの?食べすぎない程度に、いっぱい食べて」




────なんでこうなっているんだ。




ふわりふわりと。

愛する子を見つめるように、愛おしげに。


昨日といい今日といい、レイエンフィリアは街で偶然会った風を装って、彼らを食事に誘っている。




────完全に懐かれてるな。




兄妹は美味しそうにボルシチ──のように見えるもの。食ってないからわからん──を頬張っている。




────食べ方だけ見れば平民だな。マナーを習ったことはなさそうだ。身なりは整っているように見えるが、所々に粗がある。




妹の髪、左側後方の毛先が変色した血液によって固まり、不自然な束になっている。


服もそうだ。彼女の服は黒地の3段フリルワンピースで、格段のフリルに白いレースがあしらわれている。その黒地部分の、右手側。2段目のフリルの辺りに不自然な色の変化がある。地が黒だからわかりにくいが、他にも所々に違和感がある。


兄の履いている靴の不自然に擦れて劣化した部分とか、人形のつけているヘッドドレスの茶色いシミとか。


アディバイル・ローゼン。

セレティネア・ローゼン。


彼らは完全に、クロだ。




「このパンもおいしい!ふわふわ!」


「パンも別で買えるから、お土産に買えばいいわ。気に入ったものを買ってあげる」


「いいの⁉︎ありがとう!」




────真っ黒だとわかるのに、会話の内容はとても平和だ。




「レイア」


「?……なぁに?」


「子供達ばかりみているとお茶が冷めるぞ」


「ああ、そうね。ありがとう」




警戒しているのは俺だけなんだろうか?

そう思いつつ、切り出す勇気もなく。


目の前の幼い2人を見つめる。


丸いテーブルに用意された椅子は6つ。

兄妹とレイエンフィリア、そしてキリル。兄の横には男の子の人形が座り、妹の横には女の子の人形が座る。人形一個に席を与えるという、異様な光景だ。




「おいしかったぁ!」




にこにこと、可愛らしい笑顔でセレティネアが言う。口元はスープで赤くなり、まるで人を喰らった後のようだ。




「ほら、セレア。女の子なんだから、綺麗にしていなくちゃダメよ」




身を乗り出して、レイエンフィリアがハンカチでセレティネアの口元を拭う。


されるがままのセレティネアは、へへへ、と恥ずかしそうに笑いながら水を口に含んだ。




「子供達がよく食べる姿を見ていると安心するわ。この前抱き締めた時、細いなって思ったもの」


「…………」


「2人とも、ちゃんと食べている?細いし、軽いわ。子はきちんと食べてきちんと眠らないと」


「…………」




────嗚呼。




2人の表情が沈む。暗くなる。




「食事をするのは躊躇わないのね。水を飲むのは躊躇うのに」




水の飲み方。そこに感じる違和感。

水を口に“含んで”、何かを確かめるように口の中に溜めて、少ししてから飲み込む。


セレティネアと同じく、アディバイルも妙な水の飲み方をしている。


まさに、今も。




「お姉さん、何を警戒しているの?人が肉を喰むことに、人が水を飲むことに。作法や理由が必要なの?」




空気がピリつく。

今まで子供特有の舌足らずな喋り方だったのに、レイエンフィリアの指摘で、セレティネアの口調がガラリと変わる。


子供の容姿に似合わぬほど、饒舌に。

けれども微笑みは艶やかに。




「実は作法はあるのだけれど、まぁいいわ。ないことにしておきましょう。警戒ならするわよ。貴方達兄弟から香る……いえ、匂う。人間の血肉の匂い。血を浴びたように、身体の内側から匂い立つ様に。嗅ぎ慣れた人間なら振り向いてしまう特有の、匂い」


「…………ふうん?」


「何人、殺したの?」


「数えるのは辞めちゃった」


「それは認めるということね?」


「あっはは!なにを〜?」




ひとしきり笑うと、兄妹はそれぞれ人形を抱き締める。とても大事そうに、頬擦りまでして。


女の子の人形が着けた宝石の耳飾りと、男の子の人形の体に巻き付けられた首飾りのような宝石。それらが陽の光を反射して、キラキラと光る。




「貴方達、ご両親はどうしたの。貴方達2人を放って、何をしているの?どこに居るの?」


「「…………???……ふ、ふふ、あっはははははっ!!」」


「⁉︎」




にこにこにこにこ。

笑顔は綺麗に張り付いたまま。




「「父さんと母さんなら」」


「ほら、ここに」


「いるじゃない」




大事に大事に抱き締めた“お人形”。

煌びやかな宝石で飾った“お人形”。


それは、それは──


大事な大事な、家族なの。

次回更新は、4週間後の9/25の12時とさせていただきます。

諸事情で退職しまして、退職に伴っていろいろな手続きや引っ越しなどでバタバタしてしまい、後書きや更新予約の処理が難しくなると思います。


今日の更新でストックも切れてしまったので、いただく休みの間に書き溜めておきます。


よろしくお願いします!!

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