01 開演のオーヴェルテュール
レイヴヴィヴェーニア皇国。
山と海に挟まれ、山からは多種多様な宝石、海からは新鮮な魚介が水揚げされる。国民は魔法を用いて工夫しながら生活し、皇帝一家と宗教を胸に生活する割と豊かな国。
その国に、とある1人の皇女がいる。
艶やかに輝く長い銀の髪に、空のように透き通る青い瞳。白く滑らかな肌は、鮮やかな唇を引き立てる。
彼女の名を、『レイエンフィリア・グレイ ・レイヴヴィヴァーニア』と言う。
彼女は今日も、謁見の間に設けられた絢爛豪華な椅子に腰掛け、眼下に跪く男に冷たい視線を送っていた。
そして、彼女の口から高らかな命令が下る。
「その男を処刑しなさい!」
見目麗しく、一声発せば誰もが魅了される美しい声を持つ彼女。しかしそれは宝の持ち腐れの如く、その麗しい容貌を不快そうに歪ませ、美しい声におよそ相応しく無い言葉を紡いでいる。
ある時は、彼女の髪飾りを無くしたメイドが処刑された。
またある時は、舞踏会で彼女に肩がぶつかった貴族の男が処刑された。
1週間前には、彼女の目の前を横切った子供とその親が処刑され、一家はこの国から追放された。
少しでも彼女の機嫌を損ねてしまえば、その命はすぐさま絶たれる。
彼女の噂は国中に広がり、瞬く間に友好国の間にも知れ渡った。
いつからか、彼女には異名がつけられた。
機嫌一つで人を殺す、『殺戮の皇女』と。