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主人公のようで、モブキャラだった

2章 主人公のようで、モブキャラだった


編入式が始まり俺には伝統的な行事をこなすという試練が待っていた。

紹介され、舞台の上に立ち軽く話しをするという、一連の流れを終えた俺は、女装男子として、女子校的な、コースに居る。こうなったのも全てあいつのせいだ。

「さすがですわ!アテナ様。落ちこぼれ女神を編入させるだなんて、ほんのそこらの女神じゃあ出来る芸当ではありませんわ!」

「なんのこれしきのこと当然のことよ?私の手にかかれば、こんな事晩飯前よ!」

朝飯前な。晩飯前って結構苦労してんじゃねえか。感謝の念がより一層深くなったわ!

「ねえあなた、アテナ様にいうことないのかしら?」

「感謝もしてるし、もういいだろー」

「あ。ゴホンゴホン。感謝してるし、もういいのではなくて?」

危ない。危うく男とバレるところだった。バレればアテナに迷惑もかかるし、女子校に不法侵入的なんで捕まるじゃないか。イケメンに転生どころか、犯罪者に転生してしまう道である。

「まあ、なにその言い草!たかが一介の人間如きが、女神に向かって、そんな口を利いていいと思ってるのかしら?」

どうやらこの学園内の流行語は一介の人間らしい。人間に生まれたことを後悔する日が来るとは思わんだな。

「その一介の人間に、貴女は、敗北を味わう事になるんだからねっ!」

「ちょっといいかしら?」

威風堂々とたわいもない口論の間に立ち入る、女神が一人。

「申し訳ありません!目障りだったのなら、今すぐ消えますわ!」

「いいえ。貴女は間違っていないわ。それに私が止めたのは、そんな事じゃないのよ?」

「ではなにを……?」

「あんたよ!優ちゃん!」

「え?俺?、いや、わたくしですか?」

「そう!それよ!あんた、そんな喋り方じゃなかったでしょ?嫌いなのよね?人によって態度を変える人って」

誰のせいやと思っとる!お前に、女神コースに入れられてなかったら、こんな喋り方もしとらんわ!

「い、いや。それは……うん。ちょっとこい」

「なによ」

「いや、女神コースだから、この喋り方なのよ?」

「皆まで言わんでも分かってるわよ?」

なんで、じゃあ公共の場でそんな事言ったの?バレたら俺捕まっちゃうよ?一生の恥だよ?辞めて?

分かっているのに、わざわざ言うてくるのは、俺への当てつけだろうか?それとも嫌味か?どっちにしろ、不快でしかないことは確かだ。

転生するための我慢だが、もしそれがなければ、この女間違いなく、下着姿を盗撮して、その写真で脅して一発発信してたわ!

「はーい。一時間目の授業始めるわよー」

担任のアンドロメダ先生が教室に入った途端に、暖かく包まれるような感覚に襲われる。まるで母の腕の中のように感じる。

「はいそこ!優ちゃん!快楽に陥ったような顔しないのー!」

近くにいるだけで、心が温まるのは女神たる所以だろうか。

「すいません。ちょっと別の世界にイッてしまったようです!」

「それは、大変です!キュアー!」

女神固有の力、回復魔法のキュアー。回復魔法とは、なんて便利な!と最初は思ったが、分かっていただきたい。このラノベに、戦闘の概念はない!せいぜい怪我を治す程度だ!絆創膏の万能版とでも思ってもらうと分かりやすいだろう。

「ウオォォォォ!」

疲れが一気に飛び、疲労感から脱退した俺は、躍動感と高揚感に包まれる。

ー放課後ー

「ねえねえ!あこ行かない?カラオケ!」

「いいね!いこいこ!」

こいつらは、呑気してるが、俺は今一刻を争う自体に直面していた。

遡ること10分前だ。

俺は、ある女の跡をつけていた。

その女は人の気も知らないで、呑気に鼻唄まじりに軽い足取りで、スキップをしながら、ご機嫌さを醸し出して、校舎を出る。

キョロキョロ怪しい挙動を繰り返しながら、体育館裏へと向かっていく。

そんな女に気づかれないようにと、俺は少しずつ確実に跡をつける。女がピタッと止まると同時に俺も、ピタっと物陰に潜む。

「お待たせ」

「これって君?」

「そうだよ」

ここからだと良く見えないが、何かを見せて、本人か確認しているようだ。顔は整っている美形男子だ。指名手配犯かなんかかな。だとしたら、女の子一人で危なすぎるだろ!いや、一応女神見習いか。

「それで、何の用かしら?」

「察しが悪いなー」

「用がないなら帰るけど」

「そうツンツンしてないでよ。こう見えても、僕は君に対して、好意を寄せてるんだよ?」

なるほど。告白ってやつか。だがしかし!だがしかしだ!女心をまるで分かっていない!お前の顔がどれだけ整っていようが、どれだけ、くりっとした目をしていようが、どれだけシュッとした鼻をしていようが、体育館裏など言語道断だ!あの子が、これで良好な返事をするわけがー

「あなたが私に?それは奇遇ですね!

「え?奇遇って?」

「私もあなたに興味があったのよ。男優コース首席の生徒さん」

「いやいや。まだまだ上には上がいるよ」

どうやら男優コースの序列上位生徒らしい。ナルシスト感が出ているのはだからだろう。

「けど私は、あなたをとるわ」

「んじゃあ、俺と!」

「ええ、お付き合いしましょう」

なぁぁぁぁにぃぃぃぃ!?いいのか!?これで!?俺のターゲット!アテナ奪われたよ!?それ見てただけで、何もできなかったよ!?できたことといえばびっくりしすぎて顎外れただけだけど大丈夫?

「あぁ。愛してるよ。アテナ」

「私もよ。悠」

同名かよォォォ。

そして俺は、しょんぼりと肩を落としながら、校門へと向かう。

耳に聞こえて来たのは、カラオケ行こうと言う呑気な女子生徒の会話だったが、そんなものは上の空。勝手にしてくれって話だ。

主人公優から悠へ交代させていただきますよ。モブキャラ優。悠と変わって、モブに徹しさせていただきます。


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