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洋子の唐突な言葉に和夫が素っ頓狂な声で聞き返す。
「私、少し前に街頭アンケートに答えたんです。ちょっとあなたへの不満を愚痴るような回答でね。そうしたら賞金と命をかけてゲームをしませんか、って」
「何だそれは。それでお前、そんな恐ろしい話に乗ったのか」
「そんなの冗談に決まっていますよ、普通」
洋子はそう言うとくすくすと朗らかに笑った。
「そうは言ってもだな……おい……見てくれ、後ろ」
「もう、何よ。そんな怖い顔して……え」
洋子の話を受けて何気なくチラと店を見やった和夫であったが、すぐに引きつった顔でそちらを指さした。
ないのだ。店がない。自らの腹と心をかつてない程に満たした店が消えてしまっていた。
「まあ……どうしましょう」
先程の笑みをその顔に貼り付けたまま、洋子はただ雑木林が茂るその風景を見てへたり込んだ。
「おいおい、しっかりしろ。とにかく、家に帰ろう! ささ!」
「え、ええ」
「帰って、茶でも飲んで落ち着こう。茶は私が淹れるから。ああ、もう外食はこりごりだ」
「ええ、私も。アンケートはこりごりです」
「……アジフライ、また頼む」
「……はい」
よろめく洋子を和夫が支えながら、夫婦は徒歩でわずか数分の異世界を後にする。
単調な毎日で覆われ見えなくなっていたものが今、確かに和夫の目の中に映っていた。
参加賞のイラストいただきましたぁ!
和夫たんがこんなにきゃわわ!
最後まで読んでくださり、ありがとうございます!
おじちゃん夫婦に合わせて落ち着いた文体を心がけて書いてみましたがいかがでしたか(≧∇≦)
真面目な文体で面白く書けるようになりたーい
俺、得意だぜ! とか、この作家さん上手いよ! っていうのがあったら教えてください~