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「お待たせいたしました」


 給仕がシェフを伴い和夫のすぐ横で言った。


「おお。最初は目隠しなんぞと驚いたが実に愉しい時間を過ごさせてもらったよ。どれも最高だったが中でもあのフライが素晴らしかった! まるで私の舌を知り尽くしているかのようだったな。まあなんだ。礼くらい、顔を見て言わせてくれないか」


 上機嫌でシェフに賛辞を贈る和夫の後ろに給仕が立ち、目隠しが外された。一時の間であったが視覚を放棄していたせいでこの暗い店内すら眩しく感じたのだろう、和夫はしばし俯いて目を擦って後、顔をシェフの方へ向けた。


「な、お前……!」

「あなた、あのアジフライは先週も食べたじゃありませんか」


 和夫の横に立っていたのは自身の妻、洋子であった。そうなのだ、和夫が絶賛したフライは下拵えしたものを持ち込み、ここで洋子が揚げたものであった。


「佐々木様、当店のスペシャリテクイズ、ご正解おめでとうございます! 見事奥様のお料理を一番の好みとお答え出来たご夫婦には賞金がございます」

「最近は靴のステーキを出しても気付かないんじゃないかしらってくらいでしたけど、私の味をちゃんと好きでいてくださっていたんですね」


 和夫は狐につままれたような気分であったが、その手に渡された厚みのある封筒と洋子の目に浮かぶ涙を交互に見やると年甲斐もなく照れ臭そうに笑った。


 店の外へ出ると、梅雨が近いからか昼間の暑さ程ではないが湿気で蒸し暑い。室内の空調が最適であったことに気付かされた。


「いい店だったな」

「そうですねえ」

「こんな賞金までもらってしまって。また行かないとならんなこりゃ」

「うふふ」


 歩きながら話していると、洋子が奇妙な事を呟いた。


「ねえあなた。私達、殺されてしまうところだったんですよ」

「なんだって!?」





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