表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

20/121

第20話「城主認定効果と『強化』」

 結界を張ったあと、『竜脈(りゅうみゃく)』スキルにパラメータが表示された。




『王の領土「竜樹城(りゅうじゅじょう)


 城主:リゼット=リュージュ

 続柄:義妹(いもうと)(種族:竜の血脈)

 結界効果:魔物除け

 追加効果:防御力上昇15%

 連鎖:なし』




「……連鎖?」


 防御力上昇はわかるけど、連鎖って?

 ……家に戻ったら調べてみよう。


「まだまだこのスキルは知らないことがいっぱいだな」

「ショーマ兄さま!」


 いきなりだった。

 背後からリゼットが抱きついてきた。


「ありがとうございます! 兄さま! ありがとう……」

「リゼット……?」

「これで、リゼットはみんなの役に立てました。廃城(はいじょう)にはもう魔物は来ないですし、まわりの森を切り開くこともできます。みんな……兄さまのおかげです……そうだ!」


 リゼットはうれしそうに手を叩いて。


「見てください! いまのリゼットは魔力に満ちあふれてます! 必殺『浄炎(クレイル・フレア)』!!」


 どごん。


 リゼットの手から、一抱えもある火の玉が発射された。

 それは城壁の近くの地面を叩き、えぐる。さらに爆風が城壁の一部を崩して──


「って、自分の城を破壊したらだめだって!」

「ご、ごめんなさい……その、つい。うれしくて……」


 リゼットは頬をおさえて、うつむいた。

 いたずらがばれた子どもって感じだった。


 リゼットは竜帝の血筋で、みんなを守りたいってのが口癖だけど、まだ15歳なんだよな。アラサーの俺からすると、まぶしいばかりだ。


「すごい力だね……リズ姉」


 ハルカは目を丸くしてる。

 それから、赤色の長い髪を掻いて、いたずらっぽい笑顔で──


「これで夢が叶うかもしれないね。リズ姉!」

「わぁっ。ハルカ、ショーマ兄さまの前ですよ!?」


 リゼットは真っ赤になって手を振ってる。


「夢?」

「うん。リズ姉には夢があるんだよ」

「……笑わないでくれますか?」


 リゼットは涙目で俺を見てる。


「笑いませんよ」

「『世界の敵を見つけ出して倒す』ことと『このどうしようもない世界を変える』ことです」

「…………へー」

「わ、笑いましたね!? 兄さま」

「笑ってない。笑ってないです」


 ……というか、笑えない。少なくとも、俺にそんな権利はない。

 だってそれは、中二病時代の俺と同じ……。


「ちっちゃなころからずっと抱いてる、子どもじみた夢なのですけど……」

「リズ姉は父上のことを知らずに育って、母上も小さいころに亡くしてるんだよ」

「母さまが亡くなったときに、思ったんです。こんなひどいことがあるなんて信じられない。この世界には、悲劇を生み出してる悪い奴がいるに違いない、って」

「それでボクを引っ張って、よく悪者探しをしてたんだよねー」

「恥ずかしいですけどね」

「ちっちゃい頃のことだもん。しょうがないよ。ね、兄上さま」

「…………お、おぉ」


 痛い痛い痛い。

 聞いててすっごい痛い。


「でも、リズ姉はその夢をずっと抱えてきたんだもんね」

「他の人には言えないですけどね……『世界の敵を倒す』とか『世界を変える』なんて」

「…………う、うぅ」


 ……リゼットを「危なっかしい」って思った理由がわかった。

 昔の自分みたいだったからだ。

 あの頃の俺に比べれば、リゼットたちはずっとずっと現実的なんだろうけど。


「笑いませんか?」

「笑わないよ」


 逆に……手助けくらいはしたい、って思ってる。

 あっちの世界の俺にはできなかったからな。


「おーい。ショーマどの! リゼットさま、ハルカ!!」

「なぜかすごく楽に魔物を倒せたのですが、一体なにが起こっておるのですか!?」


 城壁の向こうから、ガルンガさんと鬼族の男性が顔を出した。

 びっくりしてる2人に向けて、僕たちは事情を説明した。

 リゼットが、この廃城の城主になったことと、結界が永続的に使えるようになったこと。魔物除けの範囲が超拡大したことなんかも。

 ガルンガさんは、よくわかってないのか、ずっと首をかしげてたけど。

 俺が話し終わると、ぽん、と手を叩いて──


「今夜は酒盛(さかも)りじゃ────っ!!」


 って、空に向かって拳を突き上げ、村の方に向かって走り出した。

 よろこんでくれてなによりだ。。

 俺、酒は飲めないから、付き合えないんだけどさ。


「そういえば、俺は帰りに『竜帝廟(りゅうていびょう)』に寄っていくつもりだけど、リゼット、付き合ってくれる?」

「もちろんです。でも、なにをなさるんですか?」

「リゼットが『竜帝廟』に入れるか試してみる」


 俺が『竜種覚醒』すれば、扉を開くことができる。

 そうすればリゼットも中に入れるはずだ。竜帝さんの夢が、リゼットにも反応するか試してみたい。彼女にも俺と同じスキルが使えるようになれば、もっと楽に村を防衛できるようになるはずだ。


「リゼットは竜帝のスキルで城主になったわけだから、もしかしたら竜帝もリゼットを認めてくれるかもしれない」

「わかりました」


 リゼットは少し迷ってから、うなずいた。


「やってみます。竜帝の力を持つショーマ兄さまのおさそいですから。それは竜帝さまが呼んでいるのと同じですからね」

「ハルカはどうする?」

「ん? もちろんボクも行くよ」


 ハルカは(あご)に手を当てて、うんうん、とうなずいてる。

「『世界を変える』というリズ姉の願いの第一歩だもんね。ボクも、自分の夢を叶えてくれるように、竜帝さまにお願いしてみるよ」

「ハルカの夢って?」

「鬼族のふるさとを探すことだよ」


 なぜか遠い目をして、ハルカは言った。

 片手で大きな胸を押さえて、うなずきながら。


「鬼族のみんなの故郷は、本当はここじゃないんだ。もっと平和な、きれいな湖がある土地だって言われている。そこで、はじまりの鬼姫さまが、最初の鬼族を生み育てたんだよ」

「そんな神話があるんだ……」

「というか、歴史だね。ボクのひいひいおじいちゃんは、そこに住んでいた人から話を聞いてたそうだから」


 そっか、竜帝さんの死後、亜人たちはこの辺境領域に追いやられたんだっけ。

 当然、元々住んでた町や村があったってことだよな。そこに戻りたいって思うのは当たり前だよな。


「いつか故郷を見つけ出すのが鬼族の夢で、それをかなえた者には、鬼姫さまがお願いを聞いてくれるって伝説があるんだ。ボクはいつかみんなを故郷に連れていって、自分のお願いを聞いてもらうのが夢なんだよ」

「なるほど。それで、お願いって?」

「……ないしょ」


 ハルカはなぜか胸を押さえて、うつむいた。


「鬼族の未来に関わること、とだけ言っておくよ。いつか兄上さまには教えてあげる」


 そう言ってハルカは黙ってしまった。

 深い理由がありそうだ。無理に聞き出すこともないか。


 俺のすることは変わらない。村の防衛と、リゼットとハルカのサポートだ。

 世話になるお礼として、できるだけのことはしよう。

 可能なら……リゼットとハルカの夢を叶えるくらいのいきおいで。


「それじゃ帰ってのんびりしようか」

「はい、ショーマ兄さま」「帰りましょう。兄上さま」


 そうして俺たちは、村に向かって歩き出したのだった。



城主効果

・城主を認定した「城」の周囲では、仲間の能力が上がる。

・結界の内側では城主の魔力が上昇する。

・「連鎖」をすると……?


もしもこのお話を気に入っていただけたなら、ブックマークをいただけたら嬉しいです。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
カドカワBOOKSより第1巻が発売中です!

「天下無双の嫁軍団とはじめる、ゆるゆる領主ライフ 〜異世界で竜帝の力拾いました〜」
(下の画像をクリックすると公式ページへ飛びます)

i395930
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ