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チョコレート革命 ※

小話ながら、閲覧、ブクマそれから評価をありがとうございます。

前回に続き、主人公とセラフィナさんと。



 この世界は、乙女ゲームの世界だけあって日本でもよく見かける伝統行事が顕在する。

 その中でも、僕が一番不思議だと感じるのが――


「あのっ!こ、これ、貰ってください!!」

 そう言って見知らぬ生徒から差し出されたのは、赤と緑の包装紙に包まれた四角い箱で。

「……あ、ありがとうございます」

 包装紙に書かれてある文字を見て、それは有名な某お菓子店のものだと分かる。それに、実はこの菓子店のものを貰うのは本日五つ目にあたるので、女子力がない僕でも、これが何を意味するのか理解出来た。


 ああ、またチョコレートが一つ増えたな。


 そう思いながらも、今日はそういう日なのだからとありがたく受け入れる。

 ただ、ここで驚くべき事は、相手が男子生徒だという事だ。

「えっと……じゃあ、あの、これ、良かったら」

 代わりと言ってはなんだけど、と僕も紙袋から小さな小袋を差し出してみる。

「えっ!?俺が貰っても良いんですか!?」

「あ、皆さんに差し上げているので、良ければですけれど」

「うおーっ!!やったーーーー!!ありがとうございますー!」

 うん、喜んでくれて何より。これで、お礼は済んだよね?と、飛び上がって去って行く彼を見送って、腕にかかる重たい紙袋をチラ見する。なかば、予想してたとはいえ既に満杯になってしまった紙袋に驚きを隠せなかった。

 まさか、朝の登校の時点でこんなにも貰うなんて思わなかったなぁ。そこまで、アルミネラに好感を持ってくれている生徒数が多いという事なんだけど。

 それは単純に嬉しくもある。

 ただ、やはり前世を覚えている身としては、この世界の行事に違和感を持つ訳で。

 だって――

「おはようございます、アルミネラ様!」

 そこで聞き慣れた声にようやく安堵して振り返れば。

「これ、私からのプレゼントです!貰ってください!」

「……どうしたら、そこまで馴染めるの」

 僕と同じ前世持ちであるはずのセラフィナさんから、手のひらサイズの小箱を渡された。しかも、誰もが引き込まれそうなとびきり満面の微笑みで。

「あー、やっぱり、そうですよね」

「分かるでしょ」

「まあ、確かに。今日は、クリスマスだっていうのにバレンタインみたいにチョコレートが飛び交っていますしねぇ」

 ……そうなのだ。

 前世では、本日、十二月二十五日はクリスマスだと認識しているせいで、バレンタインみたく意中の相手にチョコレートを手渡しているのを見るとコレジャナイ感がものすごい。

 しかも、大抵のラッピングが赤と緑の配色なだけに何をどう間違えてしまったのかと思い悩むほどだった。

 初めてこの日を体験した時は、こんなの嘘だー!と、珍しく叫んでしまったような気がする。

日本では、バレンタインデーというのは女性から男性にチョコレートを送る日だったのもあって、いまだに同性から貰う行為にも慣れてない。まあ、世界では男性からでも女性からでも送るようだけど。前世では、母親と幼馴染み、それと義理チョコがいくつかあったぐらいだったしな。

「この世界って、たまに不思議な所があるよね」

 季節感のない植物がその典型パターンだといえる。もしや、これが遊び心という奴なのかな?

「イオ様の夢を壊すようで申し訳ないんですけど、確か今日がバレンタインみたいになってしまったのって、公式絵師さんがクリスマスにオーガストからチョコレートをヒロインに渡した絵を発表したのがきっかけでウケちゃって。公式がノリでそういう行事を作っちゃったんですよ」

「……え?それだけで?」

「はい。ファンがその波に乗っちゃって」

 なんていうか、乙女ゲームすごい。

「だから、私も毎年クリスマスにはイオ様の祭だ……えっと、イオ様に捧げてました」

 今、さり気なく祭壇って言いかけたよね?いや、絶対に聞き返さないけど。

「なので、今日は本物のイオ様に差し上げられる日がくるなんて!私、本当に幸せでっ!」

「ちょっ、落ち着いて!」

 こんな所で鼻血が出たらと思うとヒヤヒヤする。だって、僕たちの回りにいる生徒たちがどこかソワソワしながら様子を窺っているのが何となく分かっているから。

「っていうか、よく見ればセラフィナさんもたくさん貰ってるよね」

「そうですね」

 そうですねって……彼女もかなり凄い量なんだけど。慣れてるなぁ。

「あ、それで思い出した。というか、遅れてごめん。これ、どうぞ」

 もうこの世界に溶け込んでるんだなぁと感心しながら、近しい人用に作った物を手渡せば、みるみる内に瞳がキラキラと輝きだした。わーお。さすがは、イエリオス教の信者。

「これって……っ!もしかして、手作りですか!?」

「手作りじゃないとやだっていうから……毎年同じものなんだけどね」

 味は保証出来ないよ、と苦笑する。

 今までは身内というか、主にアルの為に作っていたので美味しいかどうかは本当に分からない。

「あ、ああああああああああありがとうございますぅ!!」

 その声の大きさに、若干引きながら驚いていたけども、この時はまだ知らなかった。

 セラフィナさんとのやり取りから、僕のチョコが手作りだと学院中に知れ渡って、朝から貴様のチョコなど要らんからな!と言いながらも、ずっとソワソワして落ち着きのないオーガスト殿下に付きまとわれるという事案が発生するという事を。


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