アンハッピーエンド【if話】 ※
小話ながら、閲覧、ブクマそれから評価をありがとうございます。
【注意】このお話は、二章でのifの想像話となっています!
『もし、イオがあのまま連れていかれていたら……』という仮定のお話ですので、ヒューバートがお嫌いな方は読まないで下さい。
ですが、決して暗いお話ではありません。
――暗い、暗い部屋のなか。
ベッドの上で、白く大きな塊がもぞりと蠢く。
その動きは、実に緩和でとにかく鈍い。まるで、植物の成長のように少しずつ動き出し、やがて発芽するかのごとく白く細い腕が出てきた。
「……」
何かを探っているかのように動き回る手は、それでもやはり動きが遅く。刻一刻と押し寄せる時間の波など全く関係ないとばかりに、ただひたすらお目当ての物を探る。――そこへ。
「明かりも付けずに、何を遊んでいるのですか?」
その腕の先にあったランプに灯がともる。と、同時にギシリとベッドが呻りをあげて、声を掛けた者がベッドサイドに腰を下ろしたという事実がその塊にも伝わった。
「……よく言うよ」
呟きと共に、日向の匂いのする布団を押しのけて起き上がったのは、どこか憂いを帯びた顔の少年で。
「こんな風になるまで、無理をさせているのはどこのどなたですか」
ぼさぼさになった己の白金色の髪に手ぐしを通して、人形のように美しい顔を歪めながら嫌味を零した。
「私としては、もっと濃厚なひとときを過ごしたいのですが?」
「結構です」
そこで、間近にある深い森のような色合いの瞳が愉しげに自分をなめ回すように揺れた事に首を傾げ、少年はその視線から自分がシャツを一枚羽織っただけの状態であった事に気が付いた。
「昨夜は、そのまま眠られたようですね?」
「っ、こ、これは!湯を浴びる……じ、時間がなくて」
ついでとばかりに先制攻撃も受けて、ものの見事に、少年の顔には羞恥心が浮き上がり、頬を赤く染め上げていく。しどろもどろになりながらも、急いでシャツのボタンを閉じていく彼の様子に、支配者としての風格を見せる青年が優越に浸り笑みを深くした。
それは、まるで思惑通りとでも言うかのように。
「だ、だいたい!あなたが、っ!」
当然、少年が噛みついてくる事は、彼にとって予測するまでもなかった。
「おや?いい加減、私の事はきちんと呼んで下さいと、昨夜、散々言いつけたはずですが?」
そうなるように、自分が仕向けたにも関わらず。
そして、こうする事によって、この少年が誰の物で、自分がどういった立場であるのか分からせる必要があるのだ。何度でも。そう、それはもはや洗脳に近い。
だが、彼にとってそこには一切の罪悪感はなく、むしろ早く堕ちてくる事を願って止まないでいる。
この国へ連れてきて、約一週間。いまだ、その蒼い瞳に反抗的な色を乗せる少年は、彼が強いる度重なる行いにやや疲れを見せるものの憔悴してはいなかった。無理難題を求められても、嘆くどころか素直にそれを受け入れて予想以上の結果を出すのだ。
良い買い物をした、と改めて彼は思った。
元は、妹の嘘のような話が発端だっただけに、見た目も良く利口で己が何を求められているのかきちんと把握出来る良いパートナーが見つかったな、と。
「さあ、言ってください」
「……っ」
俯いて、唇を噛んで眉根を寄せる少年の小さな顎に手を添えて上を向かせる。そうする事によって、必ず自分と目が合うように。
屈辱を孕んだ表情に愉悦を感じて、彼はもう一度さあ、と微笑み問いかけた。
「……で、殿下」
「異国人のあなたに、そのように呼んで頂ける事となるのはとても誇らしいのですが。私に愛を求める婚約者の言葉ではありませんよね?」
昨夜も行われた同じやり取りに、少年が如何に己の役割を引き延ばしたいのか物語っている。
もう、諦めたと思っていたのに。
だが、それがいい。
――それでこそ、彼が求めた『結婚相手』であるのだから。
「い、……愛しい方。こ、これで、ご満足ですか!」
この国に連れてくるため、彼には散々手こずらされたのだ。回りくどい罠をはって、ジワジワと精神的にも追い詰めて。逃げないように、逃げられないようがんじがらめに糸を張って。そのどれも自分にしては珍しく、慎重に誰にも気付かれないよう神経を使ってようやく手に入れた。
ならば。
「今夜は、きちんとおねだりが出来るように頑張ってくださいね」
少しぐらい苛めたって構わないと思うのは、もはや当然の権利だろう。
アンハッピーエンドとは、ハッピーエンドではないけれどバッドエンドでもないという意味のようです。
どうしようもない状況になっても、必死に抗うのがこの子だな、と。
後、このシチュエーションですが、仕事、BLどちらの状況でも捉えやすくなっています。ご随意に。