求婚の日※
タイトルが浮かびませんでした
自戒。何事も気軽に了承するものじゃない。というのは毎回思ってはいるけれど、愛しい妹の為ならなんだって出来るに決まっている。いや、だって妹だよ?可愛いでしょ?あの頭は撫でたくなるよね。って、今は関係ないか。
まあ、そういう訳で僕はご覧の通りでございます。
そう、いつも通りの女装だよ。また?とか言わないで。僕が一番そう思っているから。
「イエリオス、聞いているのか?」
「は、はい。もちろんです」
でもね、今回はちょっと事情が違うんだよね。
「紳士のお前にこのような格好をさせるのは忍びないが、協力深く感謝する」
「いえ、勿体ないお言葉でございます。むしろ、オーガスト様が私の妹との仲を深く思案してくださいました事が何よりも嬉しき事ですので、お力添えになるのでしたらいくらでもこの身を差し出しましょう」
「そ、そうか」
はい、分かった人!なんて遊んでいる時間はなくて。えっと、つまり近々王家主催の夜会が行われるから、これを機にアルミネラと少しでも和解出来るかな作戦なんだよね。え?分からなかった?簡単に言うと、オーガスト様とうちのアルは出会った頃から犬猿の仲なんだよね。で、今までずっと言い合いが耐えなかったけど、そろそろ歩み寄るべきなのでは?と思慮されたらしいんだよ。
そこで僕は女装を命じられたという訳。
何故か。分かるでしょ。僕たちはそっくりだから、女装したら見た目はアルと何ら変わらないからだよ。
少しでも耐性を付けときたいんだってさ。
「しかし、本当に似ているな」
「そうですか?」
はは、と笑って受け流す。これ、鉄則。
「いつぞやも全く気が付かなかったからな」
はい。朗らかに笑われていらっしゃいますが、殿下は入学式から全く気付いてませんよね。残念なことに現在進行形で。
ほら、だって後ろで事務処理してるマリウスくんが固まってますよ。あっその羽根ペンは折らないでね。それ、僕のペンなので。お気に入りなんだよ。というか、そのなんとも言えない表情、充分僕には伝わっているから。うん。
「…その節は申し訳ございませんでした」
謝るべき所は何度でも謝りますよ。貴族ですから。
「かまわん」
まあ、オーガスト様は鈍いにもほどがありますけどね。
「それよりも、お前はとても器用なのだな。まさか、これほどダンスの女性パートが上手いとは思わなかったぞ」
「ははっ、そんな事はありません」
これも笑って受け流す。……流してやる!くっ!これはサラの教育の賜物ですよ。ぼくは一応、どちらも踊れますからね。……一応。
「いや、謙遜しなくても良い」
させてよ!むしろ、否定させてください!というか、なんだか意外と楽しんでません?
「そ、そうですか?」
「ああ」
と、ここでターン!だったよね?
「っと」
「おっ、大丈夫か?」
……失敗。回りすぎた。転けそうになる所を抱きとめられるこういうシチュエーション、普通ならドキッとする所なんだろうな。
「はい、すみません」
「かまわん。お前となら、ずっと踊っていられそうだったからな」
いや、それはさすがにちょっと。
「光栄です」
「お前ならば、毎日でも飽きないだろう」
――それって。
「殿下、イエリオス様を口説くのはお止めください。…はっ、まさか、やはりそういう関係」
「違いますから!」
どうして、マリウスくんは直ぐにそういう誤解を招くかな。いや、違うな。そもそも、オーガスト様が、毎日ぼくの作る味噌汁が飲みたいみたいな事を言いだすから…あれ?やっぱり求婚…いやいや、ありえないから。




