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アンチテーゼモノクローム※

多分、主従の日とかそんな記念日だったと思います。


 一つ、知っていてほしい事がある。

僕は賭け事があまり得意ではない。というのも、父がそもそもそういうのはしない人だし僕自身、あまり賭け事を嗜んだ事がないからだ。まあ、そりゃあ一度や二度はあるんだけど、いつもアルに負けちゃって。……今、誰かさすがシスコンとか言わなかった?ええ、そうですよ。僕は可愛い妹の為なら賭け事だって手を抜く――いや、そんなこと出来るわけないからね?そこまで僕は器用じゃない。何故か分からないけど、うちの女性陣が強い運の持ち主だけなんだよ。謎過ぎる。

 とまあ、もう前振りはそれぐらいにしろって?分かってる、分かってますよ。そうだよ、これはいつもの現実逃避。そんなの誰だってあるでしょう?って事でもうこの辺が潮時なのも。

「おい!聞いているのか、アルミネラ」

「なあに?全く、うるさいなぁ!そんなに大声出さなくたってちゃんと聞いてるよ!」

 はい、毎度お馴染みの女装中でしたー。知ってた?ま、まあ、気付いてたよね。賭け事の話に尚且つアルが強いって話をしたんだから。

 どうせ、また妹に頼まれたんでしょ、とか言わないで。その通りだから。言い返す言葉もありません。いや、でもさ、聞いてよ。それにしたって今回は酷いんだって!

「では、これとこれだが、どちらの方がイエリオスは気に入ると思う?」

 緋色は王家の特有色。この国に住む者なら誰でもそれは知っている。

 その緋色の髪を今日は妙に整えて、水と油であるうちの妹を見下ろす緋色の瞳は今日に限って涼やかだ。これでもう分かったよね?

 僕は今、この国の王子であるオーガスト殿下の婚約者であるアルミネラになって、何故か二人で僕への日頃の感謝のプレゼントを買いに来ている。

 ねぇ、この意味分かる?何の罰ゲームだって思うでしょ?アルってば殿下に誘われたその足で僕の所にやってきて、ねえイオゲームしない?って言ってきたんだよ?しかも、あんな可愛い笑顔で。うちの妹、ほんとかわい…いや、今はその話はよくて。

 殿下が僕の為にプレゼントを買おうとしていたと教えてもらったのは僕が負けた後だった。ほんと、なくない?ね、これって誰得なの?

「イオはどっちもあまり欲しくない、と思うよ」

「では、これは?」

「それも」

「これはどうだ?」

「うーん、惜しい!」

「ぬ、…ではこれならば喜ぶのではないか?」

 自分で自分へのプレゼントを選ぶとかどんな恥だよ。しかも、二人で来たから他のお客様のご迷惑になってるし、店員さんは何故かそわそわしちゃってるし。ああ、もうほんと早く帰りたい。

「えっと、それじゃあ、これで。これならすっごく喜ぶと思う」

「…ほ、本当に、そんなもので喜ぶのか?」

 え?何?変だった?

「喜ぶよ」

「ま、まあ、あいつはよく拐かされるからな、こういったものは一つぐらい隠しもつのも良いだろう!うむ!」

 失礼な。僕は巻きこまれやすいだけですー。

「そんなことはないと思い、思うけど!?」

「いや、あいつはきっとまた被害に遭う。これが窮地を救う手立てになるはずだ!よし、これを買おう」

「じゃなくて、イオは単に私の為に何でも直せる多機能な道具が欲しいなって言ってただけで、ちょっ、人の話聞いてるの!?」

「ええい、黙れ!うるさいぞ!」

 ええ?自分だってうるさかったのに!?なんて横暴なんだと嘆息して横を向いたら、後ろに立っていたフェルメールと目が合った。

「素直に持っとけ」

「えぇ!?」

 フェルメールまで僕を何だと……あーもう!信じられない!


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