天使の嫉妬※
天使の日のSSだったようです!
男の子なイオさん。
ごちそうさまでした、と心の中で手を合わせてカップを手に取る。いつ見てもここの食器は繊細な装飾が施されていて美しい。学食とはいえ、さすがは貴族の子弟が通う学校といえる。
今日のお茶は工芸茶かぁ、と華やかに開いた花を見ていたら、春の花に喩えられるセラフィナさんに袖を引かれた。
「あのですね、私にとってイオ様は天使なんです」
うん、とりあえずいつも突然過ぎるのでそこをどうにかしようか。
多分、また僕の行動を逐一見ていたんだろうなと思ったけど、もはや彼女に至っては通常運転だから何も言わない。でも、一つだけ言って良い?僕、お茶飲んでただけだよね?
「え、……っと、それは大袈裟過ぎないかな?」
そりゃあ、外見はそれなりに普通であるとは思うけど、中身はただの僕だからね?
「とんでもありません!あの頃からイオ様は私の最上級の癒やしなんです!どうして、そんなに素敵なんですか!」
どうして、とか言われても。
「そ、そっか」
……えーっと、せめて席に座ろうか。目立っちゃうから。
前世では相当苦労していたという話を聞いていたから少しは気持ちが分からないでもないけど、ほんのちょっとなら分かるかもだけど、天使ときたか。
「だから、今でもイオ様は私の天使なんです」
そう言いながら、胸に手を当てて満足そうに微笑みを浮かべる彼女は自分が周囲の男子生徒の目を集めている事に気付いているのかいないのか。むしろ、彼女こそこの場にいる彼らにとっての天使だろうに。
「光栄ですけど、そんなおおそれた存在ではないですよ。でも、ありがとうございます」
ここで鼻血を出さなければ別にいっか、と思い直して花が咲くカップに口を付ける。そこに、少し前に席を外したエルの笑い声が耳を掠めた。
「……」
いくら幼馴染みでもちょっと近付き過ぎじゃない?僕だって幼馴染みだし、今は女装している身の上だけど正式な婚約者なんだけどな。っていうか、二人で盛り上がっていた所に話し掛けてくるなんて、絶対僕に対する嫌がらせでしょ。
なんて。ライアンへの怨嗟の言葉が頭の中をつらつらと流れる。
そんな自分に嫌気がさして、自然とため息がこぼれ出た。
「きっと、……本物の天使なら嫉妬なんてしないだろうに」




