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幸せのカテゴリー※

『シンデレラの日』にちなんで。

「私、あーいうのあまり好きじゃないんですよね」

 放課後の生徒会室。

 いつもなら生徒会が多忙の時でしかお邪魔しない僕も、今日は久しぶりにお呼ばれしていた。というのも、今日は新年始めの生徒会の集まりで。実は意外とお祭り好きのライアンが親睦会を兼ねた催しをしてくれたのである。まあ、どうしても暇だというのなら、とか何とか上から目線で招待状を頂戴した時はちょっと腹が立ったから僕も笑顔で必ず行きます、なんて答えてしまったけれど。いや、だってねぇ?売られた喧嘩は買わないと。

 でも、冷静さを取り戻した今はちょっと大人げなかったなぁなんて反省してるわけだよ。この世界ではライアンは僕より年上に当たるけど、前世を含めれば僕の方が大人なんだから毎回喧嘩腰になるのもどうかなって。でしょ?だから、なかなか盛り上がっているので少し離れた位置で見守っていたというわけ。そこへ、セラフィナさんがやってきて二人でちょっとした雑談をしていたら急に歓声が上がったのでびっくりして視線を向けると、エルが取り分けられたケーキから金のチャームのようなものを取り出している所だった。

 前世での日本ではあまり見られない光景だけど、この世界ではごく当たり前に行われるお祝いの仕方なのである。

 簡単に説明すると、ケーキの中に金属製の小さな玩具を入れておいて、切り分けた中にそれがあればその人は一年間幸せになるという。

 前世では海外遠征もしてたから、本当は陶製の玩具であるとか金貨の場合もあるとか知っているけど、何より前世の母親がこういう楽しいものが好きだったからよく四人でケーキをつついていたのを思い出す。でも、僕か史哉しか当てた事がないから、あれは絶対に何かしら細工をしていたんじゃないかと中学辺りから疑ってる。今も三人でしていると良いな。なんて、思い出に耽っている場合じゃないや。

「珍しいですね、セラフィナさんはてっきり楽しむ人だと思ってました」

 一番ノリが良さそうな人が意外な事を言ったので、少しぼんやりしてしまったらしい。気をつけなければ。

「楽しいですよ、楽しいですけど……ね。小さかった頃はこのケーキを食べるのがとても待ち遠しかったぐらいです」

「けれど、今はそうじゃない、って?」

 苦笑いを浮かべて、セラフィナさんが肯定する。

「だって、似ていませんか?シンデレラに」

「えぇ?似ているかなぁ」

 またシンデレラって、突拍子もない。分からず首を傾げた僕に、セラフィナさんはふふっと笑った。

「だって、幸運を掴めるのはこの中でたったの一人きりだけなんですよ」

 ああ、なるほど。

「ガラスの靴と同じってこと?」

「はい」

 シンデレラの物語はこの僕でも知っているぐらいで、それまで不幸のどん底にいた少女が『世界』に選ばれたと言っても過言ではないんだから。

 でも、そうだなぁ。それなら。

「セラフィナさんは自分で掴みにいきそう」

っていうのは失礼だったかも。想像しなくても確信めいてしまって思わず口に出しちゃったけど、女性に対して酷い事を口にしてしまったかもしれない。

「いや、えと、すみませ」

「えっ、やだぁ!イオ様に把握されてるー!」

 ……えーっと。あー。んーと、そっちねぇ。そっちかぁ。じゃなくて、そこに食いついてどうするの?って言った方が良い?いや、もう何かそっとしておこうかな。でも、とりあえず控えめに首を振って訂正しておきますよ。はい。

「ふふっ。じょーだんですよ、分かってますって。私の場合だと、どうしても奇跡を待つより探した方が効率的だって思えるんですよね。待っている時間が惜しいというか」

「行動的だよね」

 こういう所がアルと似ているから、セラフィナさんとは話しやすいのかもしれない。ただ、たまに猪突猛進過ぎて手に負えないからそこは同じじゃなくて良いと思うんだけれども。

「尊敬するよ。僕なら、シンデレラみたいに憧れの人とダンスを踊れた事を一生の思い出にして諦めてしまうもの」

 毎日、そんな特別な時間が続く訳がないんだって自分に言い聞かせて。


 ガラスの靴の主を探していると知った時のシンデレラは、一体、どんな気持ちだったのかな?


 わくわくしたのか、緊張したのか。それとも、恐れ多いと不安が心を埋め尽くしたのか。僕には想像もつかないや、と苦笑する。

「あ。でも、それなら、その先の幸せまで考えもつかなかっただろうね」

 もしかしたら、ガラスの靴を履くように命じられないかもしれなかったのだから。そう思うと、シンデレラってつくづく奇跡の物語なんだろうなぁ。

 ね、とセラフィナさんに視線を向けると、彼女は少し目を瞠った後にクスクスと笑いだした。

「えっ?えっ?どうしたの?」

 僕、何か変なこと言ったかな?

「い、いえ、イオ様って、ほんと」

 え?ほんと、なに?笑いながらそこで止められると恐いんですけど!

 不安を煽るだけ煽られてどうしようかと思っていたら、私、イオ様が大好きです、なんて笑顔で急に言い出すから、僕ではなくゲーム内の僕だと分かっていてもドキドキしてしまって、そうなんだと言うのがやっとだった。多分、間違いなく顔は真っ赤になっているはず。


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